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シルバーパス:160億円、認証保育所:32億円、不妊治療:25億円…嗚呼、「再配分」の困難さよ。

「政治」とは何か??

教科書的には『再配分』であるとされています。
社会の資源を集めて、適切にそれを配りなおす。

具体的に言えば、集めた税金をどのように
社会補償や福祉に還元していくかということが、
政治や政治家の大きな役割になるのです。

ところがこれは、当然のことながら
字面で見るほど簡単なことではありません。

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画像引用元

最近政策研究をしている複数の案件で、
それが象徴的だと思ったことがあります。
掲題の数値になりますが、

シルバーパス:約160億円
認証保育所:約32億円(市部のみ)
不妊治療:約25億円

これは平成25年度に東京都が各事業に支出した金額です。
どれも確かに、「あった方がいいもの」です。


区部の認証保育所へは、「都区財政調整制度」によって
支払われた交付金から各区が補助金から支出するため、
東京都では支出総額を把握ができないとのこと。

「シルバーパス」は高度経済成長期の終盤となる昭和48年から
無料乗車券→敬老乗車券→老人パス→シルバーパスと名称を変えながら、
現在まで続く高齢者への社会保障政策です。

ちなみに広域自治体(都道府県)レベルで実施しているのは
日本で唯一東京都だけで、他にシルバーパスがあるところは
実施の主体は基礎自治体になります(大阪市、京都市、川崎市など)。

東京都がいかに革新首長だった時代に大盤振る舞いを
してきたかの証左でありますが、財政再建団体転落の危機に瀕していた
平成12年頃から、一部費用負担を徴収するようになりました。

とはいえ、費用負担はわずか一律1000円、
一定の課税ラインを超えた利用者は20,510円の負担になるとはいえ、
この対象者はわずか一割と少しに過ぎません。

もちろんシルバーパスそのものが
「バラまき」の「悪しき政策」なわけでは必ずしもありません。
高齢者の社会的活動を支えるものとして、一定の効果があるでしょう。

しかし同様に、沢山の若い人が「もっと多く」「もっと安く」子どもを産みたい、
認証保育所を利用したいと考えており、また少子化がこれほど問題になる中で、
果たして適切な「再配分」と断言できるでしょうか。

当然、単純な金額だけでは比較できません。
それぞれの施策の受益者、つまり利用者数を比較するとこうなります。

シルバーパス:約81万人
認証保育所:約5500人(市部のみ)
不妊治療:約8600人

一人あたりにならした数字で比較する、という観点も大事ですが、
この数字が物語るもう一つの事実は

「受益者が多い分野は、政治的な力が強くなる」

という明確な事実です。
シルバーパスのように、「薄く広く」という政策は受益者も多く、
反対する人が少ない分野です。政治家も積極的に取り組みます。

しかしながら、子育て支援や不妊治療のように

「限られた人数に、まとまった予算が必要」

となる政策には、様々な衝突や議論が起こることが予想されます。
対象人数も少ないですから、こうした分野には政治家は消極的になるのです。

繰り返しになりますけど、この記事は現時点では
シルバーパスに対して一方的に疑義を唱える目的ではありません。
ですが、この問題について調べたいと言った時、とある方から

「それ(シルバーパス)に触れるのはやめておきなさい。
 次(再選)が確実になくなるよ

というアドバイスをいただきました
脅しではなく、善意でおっしゃっているのがわかるだけに、
社会保障分野の再配分の難しさ・恐ろしさを肌で感じた次第です。

なお都議会では、シルバーパスについては基本的に
全会派、全議員賛成で論点になったことはありません…

社会保障の利害調整とは、ことほど左様に難しいものなのです。
皆さまは、どのようにお感じになりますか?時にはこんな数字を見比べて、
考えて馳せてみていただけると幸いです。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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