次の世代に希望をつくる

内密出産の制度化に向けて、いま整理しておきたい5つの論点

日々のこと

この投稿の翌日、吉村代表が党としてプロジェクトチームを立ち上げると表明しました。

赤ちゃんポストと内密出産の課題解決や支援策を、国に提案していくためのPTです。

私も論点整理に関わることになりましたので、いま頭の中にあるものを、走り書きのようなメモとして残しておきます。

まず、多くの方が混同されている点から。

赤ちゃんポストと内密出産は、別のものです。

  • 赤ちゃんポスト:生まれた「後」に、赤ちゃんを預ける窓口
  • 内密出産:生まれる「前」から病院につながり、身元を伏せたまま病院で産む仕組み

違いはここから全部派生します。

  • ポストは病院の外で産んでいることが多く、母体が危険にさらされます
  • 内密出産は医療者の立ち会いのもとで産めます
  • ポストは母親の身元が分からないことが多く、子の出自情報が残りません
  • 内密出産は病院に情報が残ります

政策として望ましいのは、どちらかで言えば明らかに内密出産です。

ポストは、そこにすらたどり着けなかった人のための最後の受け皿。そういう位置づけになります。

もうひとつ、よくある誤解を。内密出産は「完全に匿名で産める制度」ではありません。病院の一部の職員には身元を明かします。

明かさないのではなく、明かす相手を最小限に絞る仕組みです。

次に、議論の現在地です。

  • 内密出産を受け入れているのは、熊本市の慈恵病院と東京都墨田区の賛育会病院の2つだけ
  • 国の対応は2022年のガイドラインのみで、根拠となる法律はありません
  • 自民党はPTを立ち上げ、6月に論点整理を公表しています
  • 国民民主党は5月に法案を参議院に提出済みです

つまり、維新のPTは後発です。

だからこそ、論点を並べ直すだけではなく、すでに出ている論点を法案や予算などにどう落とし込むかも重要です。

論点の一つ目は、お金です。

  • 匿名のままでは公費の支援が使えません
  • そのため、出産費用も新生児の治療費も、病院が肩代わりしています
  • 相談や調整にかかる膨大な人件費は、診療報酬では評価されません

要するに、いまの制度は特定の病院の善意だけで成り立っています。持続可能ではありません。

ちょうど出産の保険適用が議論されている局面です。その制度設計の中に、この問題を組み込めるかどうか。ここは実務的な着地点になり得ます。

二つ目は、法的な位置づけです。

現場が求めているのは実はお金ではだけでなく、ここも非常に重要だと思っています。

  • 国内初の事例では、母の名前を空欄にした出生届が刑法に触れるおそれが指摘されました
  • 結局、出生届を出さず、市が職権で戸籍を作るという形で処理されています
  • 「捕まるかもしれない」という不安が消えない限り、受け入れる病院は増えません

自民党の論点整理も「法的保護、免責について検討すること」と書いています。国民民主党の法案にも、明確な免責規定は入っていません。現時点では条文化できていない状況です。

ここは「免責」という言葉を使わずに、同じ効果を得る書き方があるかもしれません。適法性を確認する規定にする、あるいは出生届に代わる手続きを戸籍法に作る。そういう技術的な工夫の余地があります。

三つ目は、出自を知る権利です。

反対論の最大の争点であり、私も最も重く受け止めている論点です。

  • いまは民間の一病院が、子の出自情報を数十年にわたって抱え続けています
  • その病院が閉院したら、情報はどうなるのか
  • 現行のガイドラインでは、子への開示に母親の同意が必要とされています

自民党の論点整理は「情報を誰が保管するか」に踏み込み、公的な管理機関の設置を挙げています。

国民民主党の法案は「いつ誰にどう開示するか」に踏み込んでいます。

ちなみに国民民主党の法案には、子ども本人への真実告知と、その後の相談支援を法定する規定も入っています。ここはあまり報じられていませんが、良い規定だと思います。

四つ目は、受け皿と権限です。

大阪でいま実際に詰まっているのが、ここです。

  • 泉佐野市には児童相談所がありません
  • そのため、預けられた赤ちゃんを養育する責任と権限は、大阪府に帰属します
  • やりたい市に権限がなく、権限を持つ府には慎重論がある

7月27日の会議でも、乳児院の受け入れ余力が課題として示されました。泉佐野市は自ら費用を負担して乳児院を新設する考えを示しましたが、想定を超えた場合の対応では合意に至っていません。

そして、施設よりも人の確保が難しい。

これは大阪だけの話ではありません。やる気のある基礎自治体に権限と財源が届かない。私たちが統治機構改革でずっと指摘してきた構造そのものです。

五つ目。ここが一番大きいと思っています。

赤ちゃんポストについては、まだ充分に議論が深まっていません。

  • 自民党の論点整理は、5つの主要論点がすべて内密出産に関するものです
  • 国民民主党の法案も、対象は内密出産に限定されています

内密出産の法制度は「母親が誰かは分かっている」という前提で組まれています。ポストではその前提が消えます。

  • 保管すべき出自情報が、そもそも存在しません
  • 刑法上の論点も違います(内密出産は出生届、ポストは保護責任者遺棄)
  • 扉や保温、24時間対応といった設備・体制の基準が必要になります
  • 行政が設置主体になる場合の責任のあり方には、前例がありません

内密出産の法律を作っても、ポストは別に手当てが要るということです。

最後に、忘れてはいけないこと。

内密出産は、決して望ましい出産の形ではないという点で、自民党の論点整理もそこは明記しています。母子の命を守ることを第一に、それでも必要だから議論する。そういう立て方です。

であれば、手前の施策とセットで語らなければ意味がありません。

  • 予期せぬ妊娠を防ぐための教育
  • 匿名で相談できる窓口の全国整備
  • 緊急避妊へのアクセス
  • そして、これまで問われてこなかった父親の責任

最後の砦の話をしながら、砦の手前を放っておくわけにはいかないのです。

明日以降、PTで本格的に議論が始まります。

賛否の割れるテーマです。慎重論にも、うなずける部分がたくさんあります。それでも、救われるべき命が現実にそこにあるのなら、やるべきだと思います。

議論の経過は、また報告します。

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音喜多駿

おときた駿
前参議院議員(東京都選挙区) 42歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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