次の世代に希望をつくる

「先生が足りない」から始まったフランスのデモ。西村ゆかさんと語ったパリの実像

• 日々のこと

昨晩、YouTubeで「おときたのブログには書けない話」の第3回を配信しました。

ゲストはフランス・パリから一時帰国中の西村ゆかさん。Webディレクターであり、ベストセラー『旦那様はひろゆき』の著者でもあります。

ブログには書けない話という番組名ですが、パリのデモについての話はぜひ多くの方に知っていただきたい内容だったので、こちらにまとめておきます。

■

ここ最近、日本でもパリの映像が流れていました。

黒いマスク姿の人たちが店を壊し、物を奪い、車が燃えている。そうした映像に「移民の2世・3世が」「治安が崩壊している」といった解説がつき、かなりショッキングな形で伝わってきています。

実際、ゆかさんのもとにも日本の友人から「大丈夫?」という連絡がたくさん来たそうです。

では、実際のパリはどうなのか。

ゆかさんの答えは「街全体がどこもかしこも危険、ということはまったくない」でした。

デモが行われる場所はおおむね決まっていて、その日はそこが物々しくなる。でも、それ以外のエリアはいたって普通だそうです。

例えとして挙がったのが、ハロウィンの渋谷です。スクランブル交差点やセンター街は大騒ぎでも、新宿や池袋にいる人にとっては関係ない。「東京やばいよね」と言われても、東京の大半は普段どおりです。

パリの今も、それに近い感覚だということでした。

■

そもそも、このデモは何から始まったのか。

発端は9月、パリ郊外クレテイユにあるサン=テグジュペリ高校でした。教員が足りず、授業ができない。新学期は9月に始まるのに、フランス語の授業が初めて行われたのは9月末だったそうです。

一方で、大学進学に関わる試験は全国一律で行われます。授業がなかった学校だけ手加減してもらえるわけではありません。

これは不公平だ、と生徒たちが声を上げたのが始まりです。

ほかにも、トイレが壊れたまま使えない、学食を安くした結果ものすごく混雑して、昼休みに1時間待たないと食べられない、といった問題もあったそうです。

教員不足、老朽化した校舎、食事の行列。どれも生活に根ざした、極めて真っ当な訴えです。

これに反対する人はほとんどいないでしょう。実際、この学校については教員の補充など、比較的早く改善策が出されたといいます。

■

ところが、ここから話が広がっていきます。

「うちの学校も同じだ」と他の学校が声を上げ始め、パリ中心部の比較的恵まれた学校やエリート校の生徒たちも「自分たちは恵まれているけれど、この問題を知らせなければ」と連帯を示しました。

ここまでは、むしろ前向きな広がり方だったと思います。

ただ、そこに年金改革への反対など別のデモが次々に合流し、さらに「とにかく壊す、燃やす、奪う」という人たちも入り込んできました。

デモと暴動は、本来分けて考えるべきものです。

しかし、ネガティブな映像のほうが注目されやすい。結果として「デモ=暴動」に見えてしまい、最初にあった切実な訴えはほとんど伝わらなくなってしまいました。

ちなみに、デモが起きる通り沿いのお店は、そのたびにベニヤ板を打ちつけて自衛しているそうです。まるで台風対策のように。

ガラスを割られなかったルイ・ヴィトンの話など、思わず笑ってしまうエピソードもありましたが、毎回これをやっているお店の方々のたくましさには頭が下がります。

■

さらに話をややこしくしているのが、来春のフランス大統領選挙です。

候補者たちがこの騒動を自分の立場に引きつけて解釈し、「左派がデモを煽っているからだ」「今の政権の政策が悪いからこうなる」と、それぞれ政治的に利用している面があるそうです。

言っていること自体が全部間違っているわけではない。けれど、大元の問題を解決しようという話にはなっていない。

ゆかさんの言葉を借りれば「カオス」です。

そして、その大統領選で存在感を増しているのがマリーヌ・ルペン氏です。

ルペン氏は公金をめぐる事件で有罪となり、一時は大統領選への出馬が危ぶまれていました。しかし今年7月の控訴審判決で、有罪ではあるものの出馬は可能という形になっています。

これまでのフランスでは、極右候補が決選投票に進んでも、他の勢力がまとまって中道候補を勝たせるのがセオリーでした。

ただ、今回はその中道があまりに弱い。決選投票まで行けばルペン氏が有利、という見方も少なくないそうです。

■

中道が弱い、というのはフランスに限った話ではありません。

物価高のなか、どの国の政権も苦しんでいます。そういう時代には、極端な主張のほうが受けやすい。

ゆかさんが指摘していたのは「左派が弱すぎる問題」でした。右派ばかりになるのは良くないけれど、では左派に任せられるかと問われると、そう言い切れない。その結果、極端なほうに流れていってしまう。

日本の場合は少し事情が違うと私は考えています。

安倍政権は8年近くの間に、教育の無償化や女性活躍など、本来リベラル側が掲げてきた政策を次々と取り込んでいきました。理想は語るけれど実行できない側と、実行していく側。その構図のなかで、日本のリベラルは体力を削られていったように見えます。

もともと保守系の政治家だったはずの私が、いまやリベラル寄りに分類されかねない。それくらい、日本でも空気が右に寄ってきていると感じます。

■

今回お話をうかがって印象に残ったのは、始まりがとても具体的だったことです。

先生がいない。トイレが壊れている。お昼ご飯に1時間並ぶ。

こうした身近な声が、いつの間にか暴動の映像と政治的な思惑に埋もれてしまう。教員不足は日本でも決して他人事ではないだけに、なおさら考えさせられました。

配信の後半はニコニコチャンネルプラスの有料パートで、さらに踏み込んだお話もしています。ご関心のある方はぜひそちらもご覧ください。

ゆかさん、ありがとうございました。

個人献金のお願い
ボランティアスタッフご登録のお願い
音喜多駿

おときた駿
前参議院議員(東京都選挙区) 43歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」

友だち追加
twitter @otokita
Facebook おときた駿
Instagram @otokitashun

ページトップへ