次の世代に希望をつくる

編集者のいる書籍でなぜ。「お詫びと訂正」で済ませず、いったん販売停止を

• 日々のこと

「日本中学生新聞」を創刊した川中だいじさんの投稿です。

今年9月に刊行された内田樹氏と望月衣塑子氏の対談本で、望月氏が川中さんについて語った部分に複数の誤りがあり、版元の朝日新聞出版が10月27日にサイト上で「お詫びと訂正」を出しました。

内容を見ると、単純な事実誤認というレベルを超えています。

川中さんが「周りの子から『老害』と言われたり」という記述は事実がなく、削除。川中さんが話した内容が、望月氏の息子の話として書かれていた部分は主語を訂正。

小学校で新聞を剥がされた話、外務省に取材を断られて創刊した話も、いずれも事実ではなく削除されています。

本人が話してもいないことが、本人の学校生活のエピソードとして活字になり、全国の書店に並んだ。しかも相手は現役の高校生です。

私はこの投稿に、こうコメントしました。

Web記事ではなく、編集者がいる書籍でもこのような事態が発生するのは驚き。御本人のためにもお詫びだけでなく、一旦出版を停止するべきではないでしょうか。

改めて、この考えを少し膨らませて書いておきます。

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まず当事者側の対応を公平に見ておきます。

内田氏は28日に「ゲラを読んだ時点で気付かずに申し訳なかった」と投稿。望月氏も同日夜に「公表前に一つひとつの内容を十分に確認すべきだった」と謝罪し、編集者を通じて川中さんに直接謝罪と説明の機会を求めているとしています。

版元も30日、取材に対して「詳細を調査中」「真摯に対応を続ける」と回答しました。

謝罪自体はあった。ただ、肝心な二点がまだ埋まっていません。なぜこうなったのかという経緯の説明と、いま書店に並んでいる本をどうするのかという判断です。

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対談本の作り方を知っている人ならわかると思いますが、口述をそのまま本にすることはありません。

録音を文字起こしし、構成者や編集者が整え、著者がゲラで確認する。少なくとも二重、三重の目が入るのが普通です。

なぜ編集者がいる書籍で、ここまで実在の人物に関する誤りがすり抜けたのか。

望月氏の「確認が十分でなかった」という説明だけでは、この問いには答えになっていません。

構成の段階で話が混線したのか、本人が誤って記憶していたのか、編集部側のファクトチェックはどう機能していたのか。

版元が「調査中」とするなら、その結果はきちんと公表してほしいと思います。

これは望月氏個人の問題だけに留まらず、出版という仕組みの信頼にかかわる話だからです。

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そして、販売の継続についてです。

サイトに「お詫びと訂正」を載せても、すでに本を買った読者はまず気づきません。これから書店で手に取る人も同じです。紙の本は、Web記事のように差し替えがききません。

誤った記述の対象は、公人ではなく一人の高校生です。「同級生から老害と呼ばれていた」という、本人が否定している話が、訂正の存在を知らない読者の手元に残り続ける。これを放置してよいとは思えません。

出版社は、いったん販売を停止し、回収も含めて検討すべきではないでしょうか。

重版で訂正するという対応もあり得ますが、それは「これから刷る分」の話です。すでに流通している分をどうするかは、別に判断が要ります。

過去にも事実誤認や権利侵害で書籍が回収された例はありますし、実在の未成年に関する虚偽記述という性質を考えれば、決して過剰な対応ではないはずです。

迷うなら、止める。それが本人のため、そして著者と版元自身のためでもあると思います。

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最後に一つ。

生成AIの時代になって、文字起こしも、要約も、構成案づくりも、機械がかなりの部分をやってくれるようになりました。

だからこそ、どこで事実が混ざり、誰の発言が誰のものにすり替わったかを最後に見抜くのは、人間の仕事です。

そして、ミスが起きた後にどう振る舞うか。経緯を説明し、流通している本をどうするか決め、当事者に向き合う。

この誠実さは、AIが代わりに発揮してくれるものではありません。

川中さんが訂正を求めるために費やした時間と労力に報いるのは、謝罪の言葉だけではなく、版元の次の一手だと思います。

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音喜多駿

おときた駿
前参議院議員(東京都選挙区) 43歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」

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