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愚か者のコスト -教科書が教えない統治構造の話し-

政治コラム

先日、金融機関勤務の友人と飲んでいた際、熱い話しになりまして。

「(日本の)1000兆円以上の借金なんて、金融の常識として返せるはずがない」
「デフォルト(国家破産)かハイパーインフレか、いずれにせよ破滅的な結果がくる」

そして日本に限らず、先進国諸国の現状を踏まえて

「大衆はお金を使うことしか考えないから、借金ばかりが増える。
やっぱり民主主義はダメで、独裁だろうとも一部の優秀な人間が
社会を統治した方がよっぽどマシ!」

と結論づけていました。
飲み会でのヨタ話しなのですが、実は大切なポイントが
いくつか含まれているので、今日はその辺りについてなんか書きたいと思います。

「大衆はバカなので、国民を主権者とする民主主義国家は
結局のところは衆愚政治になって国家が衰退する」

なる「衆愚論」は、民主主義を否定する論拠として根強く残っています。
そしてそれを裏付けるものとして、

民主主義を採用する先進国は、例外なく財政赤字に陥る

という経済学者ブキャナンが喝破した事実が存在します。
実際現在でも、ほとんどの先進国は赤字です。財政タカ派のドイツでさえ、
常にある程度の借金は抱えて苦しんでいるのが実情です。

何故こうなるのかは、それほど難しい話しではありません。

民衆に政治家を選ばせると、政治家は民衆のご機嫌取りを行う。
民衆は目先のことしか考えないから、短期的に利益をもたらしてくれる、
甘いことを主張しいわゆる「バラマキ」政策を行う政治家を支持する。

当然、財源は有限なので限界はあるはずだが、
「国債発行」という借金の先送りでどんどんバラマキ政策が行われる。
そして国の借金は膨れ上がり、最終的には…?

こうした負の側面を論拠に一部識者が支持するのが、
寡頭制(独裁制を含む)です。愚かな民衆よりも、優秀な頭脳を持ち
長期的なスパンで物事を考えられる一部の人間に社会運営を委ねよう!と。

これは正直、なかなか魅力的な案です。
実際にシンガポールなどいわゆる「開発独裁国」が
順調に成長を遂げていますし、一見正しいようにも見て取れるのです。

しかしながら、結論から申し上げて寡頭制は
民主制より明らかに優れたシステムにはなりえません

なぜなら、たとえ一時期は優秀な人材たちが国を発展させたとしても、
「絶対的な権力は、絶対に腐敗する」からです。

具体的に申し上げると、原因は世襲です。
一度権力を握った権力者は(なぜか)必ず、どこかのタイミングで
自分の血縁者、あるいは息がかかったものにそれを譲渡しようとします。

そして残念ながら、今の権力者がいかに優秀であろうとも、
譲渡先の人物が優秀であるとは限りません。いやどちらかというと、
優秀でない可能性の方が高いとさえ言えます。

権力者が優秀な間が脅威の発展を遂げてきた国が
跡継ぎが愚昧であったため一気に滅亡へと突っ走った例は、
枚挙に暇がないのです。また、年老いた指導者が迷走するケースもありえます。

何が言いたいかと申し上げますと、我々はどこかで必ず
「愚か者のコスト」を払わなければならないということです。

人間は完璧ではありません。
いやそれどころか、大いにミスを犯す存在です。

寡頭制は、優秀な人に権力を収集させ、その「愚か者のコスト」を
極限まで消滅させるシステムです。しかしながら、後を着ぐ人物次第で
一気にそのツケが爆発し、「愚か者のコスト」が最大になるリスクがあります。

翻って民主主義とは、
愚か者のコストを常にちょっとずつ皆で引き受けながら、
その中でもどうにかこうにか世の中をよくしていこうとするシステム
なのです。

人間が完璧な存在ではない以上、このコストを消滅させることは不可能です。
どこかで一気に引き受けるのか、少しずつ常に抱えるのか…

どちらが正しいか、断定はできません。

しかしながら、一部の人間に国の舵取りを任せて
どこかのタイミングで一気にコストが爆発するような社会よりも、
色々ともどかしくてもみんなでコストを分け合う方がよっぽどマシ!

それが文明社会が2000年以上かけてたどり着いた、
「現時点での世界の知見であり結論」であることは間違いないでしょう。

世の中がうまくいかないと、どうしても我々は
一気に社会変革が起こるような出来事に期待してしまいがちです。
大阪維新の会や橋下市長のリーダーシップへの期待も、そんな感情に起因します。

しかしながら、魔法の解決策はやっぱりあるようでないのです。

「愚か者のコスト」を払いながら、
理想と大衆との間で少しずつ世の中を改善していく。

それが21世紀の社会を導いていく、
真の為政者に求められる自覚と資格なのかもしれません。

だからこそ「ノブレス・オブリージュ(高貴なるものの義務)」の精神が
民主主義社会でこそ重要であると僕は思うのだけれども、
長くなるのでこの話しはまたの機会。それでは!

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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