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子どもの貧困の中で…「養育費」という子どもの権利を守る方法はないのか?

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

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社会的擁護などの児童福祉の分野に携わっていると、
どうしても避けて通れないのが「子どもの貧困≒親の貧困」問題です。

物質的には豊かになったように見える一方、
我が国では6人の1人の子どもが「相対的貧困」水準に陥っていることは
阿部彩子氏の名著「子どもの貧困」で広く知られるところとなりました。

もちろん、子どもは生まれて勝手に貧困に陥るわけではなく、
多くの場合は親の経済状況の影響をモロに被ることになります。
その中でも際立っているのが、「ひとり親世帯の貧困」です。

【メモ】子ども・子育て世帯、とくに「ひとり親世帯」の貧困率に無為無策な国で
http://otokitashun.com/blog/memo/6601/

以前にも取り上げましたが、シングルマザーを大半とする
ひとり親世帯の貧困率は54.6%と驚異的な数値となっており、
しかもここ20年間ほとんど改善しておりません。

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我が国はこの分野に対して無為無策どころか、

「離婚したのは自己責任」
「若くして『子どもが子どもを生む』からこうなるんだ!」

と言わんばかりに、
『自立』の名の下で経済的支援よりも就労支援を推し進め、
むしろ母子家庭の貧困は悪化の一途をたどっているとの説もあります。

そんな中、都議会図書館に7月・8月と連続して
新刊として

「シングルマザーの貧困」
「ルポ母子家庭」

が入荷されまして、早速読み終えたところです。

母子家庭が貧困に陥る理由は多岐に渡りますが、
その中で大きな問題の一つとなるのが「養育費」です。

離婚した夫婦のうち、子どもを引き取った側にそうでない側が
子どもを養育するために支払う責務を負う「養育費」ですが、
なんと我が国では養育費の受け取り率は2割に満たない状態です。

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離婚母子世帯における父親からの養育費の状況
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-setai06/02-b16.html

「相手と関わるのが嫌で、養育費の取り決めをしなかった」
「最初の方は支払われていたが、やがて支払いが途絶えた」

というケースが大半であり、上記の2つの著作の中でも
養育費がもらえないばかりにあっという間に子どもが貧困に陥るケース
複数に渡って報告されています。

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これには、2つの要因が考えられます。

1.
「養育費は子どもの権利」という意識の希薄さ

日本人の大半は、養育費を

「子どもを養うために、その親に対しての生活費諸々として払われるもの」

という勘違いをしていますが、
養育費は決して親のために支払われるものではありません
養育費は、健やかに育つために子どもが受け取る「権利」なのです。

「相手の顔を見たくもないから、養育費は受け取らない」
「あいつにためにお金を払うなんてまっぴらだから、養育費は払わない」

もちろん様々な感情や事情はあるのでしょうが、
こうした理由で養育費を(支払いも受け取りも)放棄することは
『大人のエゴ』に他なりません。

どんなことがあっても、養育費は子どもの権利として
しっかりと取り決めを行って支払う・受け取る意識を涵養する必要があります。

2.
養育費を取り立てる法的手続きの煩雑さ、脆弱さ

養育費の支払いは「義務」なので、
支払いを拒否したり滞った場合は、所定の手続きを踏んで
裁判所から勧告や資産の差し押さえをしてもらうことが可能です。

しかしながらそれは事実上、調停離婚をして記録が残っている場合か、
公正証書などので養育費の取り決めがしっかりとされている場合に限られます。
そしてそれは、全離婚のうちのわずか40%足らずに過ぎません。

口約束や非公式な書面だけで養育費の取り決めを行っていた場合、
そこから法的訴訟を起こして養育費を取り立てることは、
不可能ではないまでも相当な困難が予想されるようです。

そうこうするうちに、本来もらう養育費より弁護士費用が上回ったり、
子どもが成長して大人になってしまったりと、事実上養育は相手が支払いを拒否すれば
受け取る側の大半は泣き寝入りせざるを得ないのが我が国の現状といえます。

付け加えれば、養育費がもらえないような形で
離婚をしてしまった母子家庭に対し、

「自業自得」

として厳しい目を向ける風潮も疑問です。
離婚の理由は性格の不一致だけでなく、夫からのDVや経済的困窮など
女性側に過失のない、やむを得ない事情によるものも多く存在します。

何より、養育の義務や養育費の支払いを放棄した男性側こそ
もっとも有責性を問われるべきであって、ひとり親として残された
母子家庭に厳しい目を向けることはどう考えても筋違いと言えます。

もちろんこうした養育費の問題は行政側も課題認識しており、
各自治体にも相談窓口などが設定されていますが、民法の改正でやや改善されたものの、
依然として養育費の取り立てハードルは非常に高いと言えます。

養育費 電話相談・専門相談
http://www.haat.or.jp/category/1907040.html

◯養育費は「子どもの権利」であるという国民的意識の醸成
◯養育費の不払いに対する罰則の強化、法的な差し押さえの簡素化
◯相手が支払い能力を喪失した場合の救済措置

これくらいのことを「子どもの権利」という観点から
我が国はしっかりと行っていく必要があると言えるでしょう。

国政とも連携しながら政策提言を行いつつ、
地方レベルでも改善・支援できる分野について調査研究を進め、
またこちらで提案していきたいと思います。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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