次の世代に希望をつくる

本田由紀氏の「遺伝」発言。役職を奪って終わりにしない、という選択肢について

• 日々のこと

9月1日、東京大学大学院教育学研究科の本田由紀教授が、三笠宮家の彬子さまの皇族費に関する報道を引用した一般ユーザーの投稿を引用リポストし、

「この人たちを目にするたびに、遺伝的要因のおそろしさを感じる」な

どと書き込みました。

批判が広がり、本田氏が会長を務める日本教育学会は9月3日、「倫理委員会で対応を検討中」と回答しています。

この投稿が不適切であることは、言うまでもありません。

皇族費のあり方を批判するのは自由です。皇室制度そのものに反対する言論も、当然に保障されます。

しかし、制度への批判と、特定の個人への否定的評価を「遺伝」や「血筋」に結びつけることは、まったく別の話です。

線はどこにあるか。本人が選べないものを、評価の理由にしたときです。

生まれによる不利を本人の責任にしてはならない。これは教育社会学が積み上げてきた知見そのものであり、本田氏ご自身が訴えてこられたことでもあるはずです。

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その後、本田氏は書面を公表されました。

それによれば、「遺伝的要因」は個人の生得的な特徴を侮蔑したものではなく、血縁者を公的に優遇しようとする行為、いわゆる政治的ネポティズムへの批判だった、という趣旨の説明です。

権力者による身内優遇を批判する。それ自体は、まっとうな問題提起です。

ただ、この書面のタイトルは「お詫び」でも「謝罪」でもなく「解説」でした。批判は「曲解」であるとも断じています。

しかし、本当に読み間違えた側が悪いのか。明らかに今回は、そうではないでしょう。

「この人たちを目にするたびに」という書き出しで写真つきの投稿に反応すれば、人物そのものへの評価だと読まれる。それは曲解ではなく、ごく自然な読解です。

意図の説明と、受け取られ方への責任は別物。私自身、お叱りを受けるたびに痛感してきたことです。

これまで数多の政治家の発言を厳しく批判してきた本田由紀氏だからこそ、今回の態度には整合性が厳しく問われています。

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ただそのうえで、私は「役職を辞めろ」の大合唱には加わりません。

理由は、キャンセルカルチャーの構造にあります。

その本質は、批判が本人に向かわないことです。腹が立ったとき、本人に反論するのではなく、勤務先に電話をかける。学会に通報する。スポンサーに抗議を送る。

組織はリスクを避けたいので、内容の当否を判断する前に手を切ります。抗議対応のコストを考えれば、切るのが最も合理的だからです。

こうして、言論への応答が、言論ではなく兵糧攻めになる。

しかも、キャンセルには終わりがありません。

刑罰にすら刑期があり、行政処分にも期間の定めがあります。ところがネットの追及には、いつ終わるという線がどこにもない。

謝罪すれば反省が足りないと言われ、説明すれば言い訳だと言われる。

出口のない制裁は、制裁ではなく排除です。

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誤解のないように申し上げますが、批判をするなということではありません。

差別的と受け取られる言説には、はっきりそう言うべきです。私も今回の投稿は不適切だと明言しました。

批判とキャンセルは違います。

批判は相手に応答の機会を残し、キャンセルは発言の場そのものを奪う。前者は議論を続ける行為で、後者は議論を終わらせる行為です。

学会の倫理委員会が手続きに則って検討することは、前者に属します。反論の機会があり、判断の理由が示され、処分に比例性がある。

ネット世論が職を奪うことには、そのどれもありません。

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ただし、繰り返しになりますが、本人が謝罪・撤回を適切になされない限り、批判と指摘は続けます。

なぜあの表現を選んでしまったのか。生まれによる差別を批判してきた自分が、なぜ差別的と受け取られる言葉を使ってしまったのか。

そこをご自身の言葉で語っていただけたなら、辞任よりもはるかに価値のある社会への貢献になります。

処分より、説明を。

その積み重ねでしか、この息苦しい空気は変わらないと考えています。

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音喜多駿

おときた駿
前参議院議員(東京都選挙区) 43歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」

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