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踏切に消えた命…親権の強さ、そして東京都の「フレンドホーム制度」の課題・改善点とは?

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
バレンタインの本日、秋葉原で行われた山田太郎参議院議員の国政報告会に参加し、
昨秋の欧州視察(児童養護分野)について報告させていただきました。

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※ニコ生のタイムシフトでもご覧いただけます↓
第2回 山田太郎のアグレッシブの会~欧州報告 尊厳死・児童養護~
http://live.nicovideo.jp/watch/lv252307774

私からは折にふれてブログでも取り上げている日本における親権の異常な強さや、
欧州先進国では「子どもの最善の利益」のために親権が制限・剥奪されること、
児童福祉に惜しみない財源が投資されていること等をお話させていただきました。

社会的養護・児童養護に関する過去ログはこちら↓
http://otokitashun.com/tag/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E9%A4%8A%E8%AD%B7/

今日は関連して、書籍の紹介と絡めながら、
この分野における東京都の制度について問題提起をしていきたいと思います。
先日、

「踏切に消えたナオ」

という書籍を読了しました。
PR会社・サニーサイドアップの次原悦子氏の著作で、彼女が関わった要保護児童が、
タイトルの通り…壮絶な踏切自殺を遂げるまでが描かれたノンフィクション作品です。

この一連の悲劇にはまさに、わが国及び東京都の
児童養護政策における重大な課題が浮き彫りにされています。

本書の中では、ひょんなきっかけから児童養護施設に
ボランティアで訪れるようになった次原氏が、懇意になった男の子・ナオミチを
「フレンドホーム制度」を利用して受け入れます。

フレンドホーム制度について:東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/satooya/seido/hotfamily/f_home.html

これは実親の強い反対などで里親措置・特別養子縁組をすることが
かなわない要保護児童たちに、少しでも家庭を体験させてあげることを目的とする制度で、
週末や長期休みなどに短期間、ホストファミリーが児童を自宅に受け入れます

少しでも家庭を経験することは非常に重要で、前向きな取り組みです。
しかしこの制度には、多くの欠点があります。

まず第一に、どれほど要保護児童とホストファミリーが信頼関係を築いても、
里子としてそのまま迎え入れることができないことです。これは再三指摘している、
わが国における異常な親権の強さに最大の要因があります。

実親が拒否しているからこそフレンドホーム制度を
利用せざる得ない状況になっていることが多いようですし、
それでなくても基本的に児童相談所は、里親委託に極めて消極的です。

そして第二に、このフレンドホーム制度の実施主体が児童養護施設であること。
里親と要保護児童をマッチングさせるのは児童相談所(行政)の役割ですが、
ホストファミリーを選ぶのは施設と、対応が分かれています。

これがどんな問題を引き起こすかというと…
「実親の意向という問題が解決し、対象児童が里親措置ができるようになった」
という場合に、懐いていたホストファミリーのもとに行けるとは限らないわけです。

ホストファミリーはあくまで、短期滞在の経験として施設が選んだだけ。
恒常的な里親措置となれば、児童相談所がまた新たな基準で選びなおす。
この仕組みのために、不幸なマッチングが行われた例も報告されています。

加えて、その児童が施設を移動することになれば、
ホストファミリーも新たな施設に選び直されることになります。

本書の中で次原氏とナオミチくんは、
まさにこの制度における後者の欠陥によって、関係を引き裂かれます。

6歳までしか滞在できない施設に預けられていたナオミチくんは、
小学校進学とともに別の養護施設へ行くことに。その児童養護施設の園長は、
次原氏ではない新たなホストファミリーを指名します。そして一言、

「新しいホストファミリーに慣れるために、もうナオミチくんには会わないでくれ」

…このように施設が内側に「抱え込んで」しまった要保護児童の実態は、
外部からは極めて様子を伺うことが困難になります。かつての関係者であっても、
個人情報保護を理由に近況などを知ることはほとんどできません。

新しい施設でナオミチくんを待っていたのは、上級生による壮絶なイジメでした。
15歳で施設を出所後、失踪。八方手を尽くして次原氏がナオミチくんと再会した時には、
変わり果てた彼の姿があって…

多感な幼少期・思春期に受けた心の傷を癒やすことは容易ではなく、
次原氏の必死の努力も叶わず、ナオミチくんは自ら死を選んでしまいます。

もしナオミチくんを、次原氏の元に速やかに里親委託することができていたら…
フレンドホーム制度が継続性のある仕組みで、たとえ施設が変わったとしても、
次原氏とナオミチくんの関係が途切れることがなかったとしたら…

彼の若い命は救えていたのではないかと、
私にはそのように思えてなりません。

このフレンドホーム制度におけるマッチングの欠点については、
昨年春の厚生委員会で東京都側に問題提起したものの、
まだまだ前向きな回答を得られていないのが現状です。

平成27年3月19日 厚生委員会質問内容
http://otokitashun.com/activity/8986/

そして親権の強さとの闘いについては、
もはや私のライフワークです。壁は分厚いですが、諦めません。
国政とも連携して、早晩かならず風穴を開けるべく、政策提言を続けていく次第です。

皆さまもぜひ機会があれば、児童養護に関係する書籍を手に取っていただき、
大きな大きな声を政治の世界に届けていただければ幸いです。
いくつか下記に、ご紹介しておきます。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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