平成26年第二回都議会定例会
文書質問趣意書
提出者 おときた駿
質問事項
一 補助86号線について
二 消防団について
三 シルバーパス事業について
一 補助86号線について
木密地域不燃化10年プロジェクトにおける「特定整備路線」の中で、北区に関わる補助86号線についてご質問いたします。
世界各国の大都市に比べて道路事情で後れを取る東京都では多くの道路計画がありますが、この特定整備路線は東日本大震災を受けて急きょ事業化が急がれている道路です。しかしながら、その地元住民の方々の理解は必ずしも十分とは言えません。特に志茂一丁目地区では、直接補助86号線にかかる多くの住民の方々が計画に納得しておらず、現段階では測量への協力に否定的であると聞いています。
この地域では建築制限が緩和され、3階建ての家を建てた住民もおり、急に事業が進められている道路建設について根強い抵抗と不信感があるようです。この事業についての住民説明会は昨年末に2回予定されておりましたが、1回は天候によって中止され、実施された1回も質疑応答が十分でなかったとの意見もあります。
多くの利害関係者を生み出す大型の道路事業には、住民の十分な理解と納得が不可欠です。そこで、下記の3点についてお尋ねします。
1 補助86号線の事業は当初の計画段階に比べて、少子高齢化による人口減少もあり、費用対効果についても疑問が示されています。その必要性と意義について、交通と防災の双方から、数字や論拠を示しながら具体的に改めてご教示ください。
2 火災時の必要性に関しては、補助86号線の建設予定の志茂一丁目は不燃領域率が60%を超えており、防災上の目標とされる70%まであとわずかです。補助線を敷かなくても、住居の建て替えで十分対応可能であるとの指摘もあります。また、火災発生時の危険性に関しては、補助86号線建設の対象地である志茂一丁目より志茂三丁目、四丁目の方が高いのも事実です。なぜ防災対策の上で「ここに」「道路」が必要なのか、明確な根拠を挙げてご説明ください。
3 交通と防災の観点から道路の必要性が認められたと仮定しても、人々の価値観が多様化した地域社会においては住民の納得は困難といえます。説明が不十分との地域からの声を受けて、今後どのような対応を行っていくのか、具体的に計画をご説明ください。
二 消防団について
地域の安心・安全の要となる消防団についてご質問いたします。「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」が昨年国会で成立するなど、その重要性がますます高くなる消防団ですが、近年は団員不足と高齢化が進んでいます。少子高齢化という背景はあるものの、特に都心部では若年層の地域活動そのものや消防団活動への無関心が指摘されていますが、一方で被災地支援やボランティア活動には多くの若年層が参加するなど、彼らの防災や地域貢献に対する関心は決して低いものではありません。消防団員の不足や高齢化を解消するためには、潜在的に消防団に関心のある若年層への効率的なアプローチが欠かせません。そこで、以下の3点についてご質問いたします。
1 東京都が所管する特別区消防団の定員数と、現時点での団員数とその平均年齢を教えてください。また、その現状に対する東京都の見解もあわせてお示しください。
2 デジタル化を背景に、近年の若年層は非常に合理的で、「情」よりも「理」でつながると言われています。彼らが実際に消防団に入団する際に懸念するのは、人間関係よりも具体的なスケジュールや現実に発生する負担であるとも言えます。そこで、各種の操法大会やその訓練、出動や各種会合などを含めた消防団員の年間平均稼働日数を教えてください。また、消防団員の募集の際には様々な広報紙が作成されていますが、そこにはこうした具体的な出勤回数や、年間スケジュールのモデルケースなどを掲載することが有効かと思いますが、見解をあわせてお伺いいたします。
3 消防団活動の中で指摘されるのが、各種大会などにおける式典の長時間化です。例えば消防操法大会などですと、3時間半あまりの大会の中で、最後の表彰式・来賓のあいさつが1時間近くになることもあります。この間、季節によって消防団員は極寒や炎天下の中、制服を着用して整列待機をしなければなりません。実際、6月に行われた消防操法大会では最高気温が33度にもなる中、表彰式の最中に体調を崩される団員の姿もありました。こうした時代にそぐわない長時間で形式的な式典は、消防団員の負担であるとともに若年層の消防団離れの一因とも考えられます。来賓の祝辞を割愛や、長時間にわたる場合は衣服の着脱を認めるなど、消防団活動の式典における合理化を進めるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
三 シルバーパス事業について
東京都の発行するシルバーパスについてご質問いたします。シルバーパスの発行枚数は平成25年度で約89万枚、その予算額は約165億円となっており、高齢化に伴いこの数値は年々増加する傾向にあります。「高齢者の社会参加を助長し、もって高齢者福祉の向上を図ることを目的とする」とされるシルバーパス事業ですが、全国を見てみると都道府県(広域自治体)で実施しているのは東京都だけで、ほかは大阪市、京都市、川崎市など市区町村(基礎自治体)レベルでの実施が基本です。また大阪市では1回あたり50円の負担をお願いするなど、合理化の動きもあります。若年層と高齢層の世代間格差が指摘される中で、子育てや教育に十分な予算を配分していくためには、シルバーパス事業についても不断の見直しが欠かせないものと考えます。そこで、以下の3点についてお尋ねいたします。
1 東京都のシルバーパスは都営の交通機関はもちろん、民営25社にも利用することができ、活用すれば広い東京都を端から端までパスを使って移動することができます。高齢者の社会参加の重要性は言うまでもありませんが、買い物や地域活動への参加であれば、その行動範囲となるエリアでパスが利用できれば十分であり、遠方への外出までパスで補助する必要はないとの指摘もあります。そこで、広域自治体である東京都がシルバーパス事業を実施する意義を改めてご教示ください。
2 現在、財政支出は東京都が一般社団法人東京バス協会に補助金を交付する形となっておりますが、この補助金の算出額を詳細に教えてください。
3 シルバーパスの利用回数や、適切な利用がなされているかを調査するために、ICカードを導入する方法が考えられます。実際の利用回数や経路が判明すれば、補助金の妥当性や利用範囲の合理化を検証することに非常に有効です。すべての高齢者がICカードという機器を使用できないとしても、まず利用可能な方に支給してサンプル調査を行うことや、段階的な導入は検討に値するかと考えますが、東京都の見解をお伺いいたします。
平成26年第二回都議会定例会
おときた駿議員の文書質問に対する答弁書
質問事項
一 補助86号線について
1 補助86号線の事業の必要性と意義について、交通と防災の双方から、数字や論拠を示しながら、具体的に伺う。
回答
志茂地域は火災危険度が4から5と高いなど、防災都市づくり推進計画において震災時に大きな被害が想定される整備地域となっています。このため、特定整備路線に選定した補助86号線(志茂一丁目地内)を、幅員約7メートルから20メートルに早急に拡幅整備することによって、北本通りや隅田川などと一体で延焼遮断帯を形成し、あわせて、避難や救援活動の空間を確保する必要があります。
また、本路線は幹線道路を補完し、区域内の交通を効率的に集散させるとともに、快適な歩行空間を創出する重要な機能も有しています。
このため、本路線の整備が必要です。
質問事項
一の2 なぜ防災対策の上で「ここに」「道路」が必要なのか伺う。
回答
志茂地域は、火災危険度が高いなど、震災時に大きな被害が想定される整備地域となっています。このため、不燃化特区の取組による老朽木造建築物の不燃化建替え等を推進するとともに、特定整備路線である補助86号線(志茂一丁目地内)を早急に整備し、延焼遮断帯の形成を図り、併せて、避難や救援活動の空間を確保する必要があります。
質問事項
一の3 説明が不十分との地域からの声を受けて、今後どのような対応を行っていくのか、具体的な計画について伺う。
回答
これまで事業概要及び測量説明会のほか、個別相談会や自治会主催の場での事業説明を実施するなど、地域への説明を重ねてきました。今後も用地説明会や個別相談会を開催するなど、引き続き丁寧な対応をしてまいります。
質問事項
二 消防団について
1 都が所管する特別区消防団の定員数と、現時点での団員数とその平均年齢について伺う。また、その現状に対する都の見解もあわせて伺う。
回答
特別区消防団の定員数は、16,000名であり、平成26年4月1日現在の団員数は、14,190名、平均年齢は、49.4歳です。
今後とも、消防団活動を担う人材の確保に努めていきます。
質問事項
二の2 各種の操法大会やその訓練、出動や各種会合などを含めた消防団員の年間平均稼働日数について伺う。また、消防団員の募集の際の広報紙には、こうした具体的な出勤回数や、年間スケジュールのモデルケースなどを掲載すべきだが、見解をあわせて伺う。
回答
平成25年度中の特別区消防団員一人当たりの平均活動日数は、災害活動や教育訓練等を含め、年間約28回です。
消防団員の募集広報については、広報紙やトレインチャンネルなど、様々な広報媒体を活用し推進しています。
今後、広報紙の発行に際しては、年間の活動日数やスケジュールのモデルケースなど、入団促進につながる情報の掲載に配意していきます。
質問事項
二の3 消防団活動の中で指摘されるのが、各種大会などにおける式典の長時間化であり、来賓の祝辞を割愛や、長時間にわたる場合は衣服の着脱を認めるなど、消防団活動の式典における合理化を進めるべきだが、見解を伺う。
回答
特別区消防団の式典は、地域の事情や式典の意義等を踏まえつつ、進行要領等が決定されています。
式典の実施に際しては、努めて時間の短縮化を図るなど、消防団員の負担軽減に配意した式典となるよう提案していきます。
質問事項
三 シルバーパス事業について
1 買い物や地域活動への参加であれば、その行動範囲となるエリアでパスが利用できれば十分であり、遠方への外出までパスで補助する必要はないとの指摘もあるが、広域自治体である都がシルバーパス事業を実施する意義について伺う。
回答
東京都シルバーパス事業は、高齢者の社会参加を助長し、高齢者の福祉の向上を図ることを目的としています。
本事業は、昭和47年の都議会第三回定例会における都バス等運賃改定の議決に際する付帯決議を踏まえて昭和48年に開始した、70歳以上の高齢者を対象とする都営「無料乗車券」制度をもとに、昭和49年に民営バスも加えた「東京都敬老乗車証」制度として始まりました。
昭和54年には名称を「東京都老人パス」に変更し、所得基準を設定するとともに、昭和55年には名称を現在の「東京都シルバーパス」に変更し、所得基準を超える方に対して有料パスの発行を開始しました。
その後、平成12年に実施主体を一般社団法人東京バス協会に変更し、利用者負担金を導入するなどの見直しを経て、現在に至っています。
質問事項
三の2 現在、財政支出は都が一般社団法人東京バス協会に補助金を交付する形となっているが、この補助金の算出額の詳細について伺う。
回答
都の一般社団法人東京バス協会に対する利用者運賃補助経費の算出方法は、
(20,510円-1,000円)×1,000円パスの発行枚数
です。
20,510円は、住民税課税となる方の利用者負担金であり、算出には、
200円(都内バス運賃の平均額)×10回(月平均利用回数)×12月×5,000円/5,850円(共通バスカード割引率)≒20,510円
の計算式を用いています。
なお、平成24年度の一般社団法人東京バス協会への補助金交付額は、159億8,461万6,000円です。
質問事項
三の3 シルバーパスの利用回数や、適切な利用がなされているかを調査するために、ICカードの導入が考えられるが、すべての高齢者がICカードという機器を使用できないとしても、まず利用可能な方に支給してサンプル調査を行うことや、段階的な導入を検討すべきだが、都の見解を伺う。
回答
現行のシルバーパスは磁気式で、利用交通機関の乗務員等に提示するか、自動改札機に投入して乗車いただく方式になっており、高齢者に広く定着しています。
シルバーパスへのICカード導入に当たっては、シルバーパス用の新たなシステム開発などにかかる経費や、パスの更新時に必要となるデータ移行などの事務手続に課題があると考えます。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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