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地下水のハードルは高すぎた?石原慎太郎氏に、どうしても聞かねばならなかったこと

都議会の話

百条委員会、浜渦証人に続き石原慎太郎証人への尋問が終わりました。

5分しかない持ち時間の中で、悩みに悩んだ末、移転問題の決着を前に進めるためにこれは聞かねばならないだろうと考え、地下水の安全基準についてをメインに選びました(狙いは違えど、某党と見事に被りましたが…)。

私自身この問題を決着するためには、「合意の履行」をどう捉えるか・どう見直すかという点が避けて通れないと考えているからです。

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石原慎太郎氏は3月3日の記者会見以降、

「現在豊洲の安全は科学で補償されているのだから早く豊洲に移転するべきだ」
「その決断をしないなら、不作為の責任がある」

等と発言しています。

しかしながら、今の豊洲の「地上」は科学的に安全かもしれませんが、かつて石原都知事が約束した「地上も地下も安全安心」という状態とは、明確に異なっています

現時点で豊洲を「安全安心」と言い切るなら、かつて「地上も地下も安心安全にします」「無害化します」と宣言し、そのために800億円以上もの費用をかけて対策してきたことは、いったい何だったのでしょうか。

そして議会にも市場関係者にも繰り返し宣言し、「合意」をしたことはどうなってしまうのでしょうか。

…という内容は以前にも書きましたので、ご参考に↓

石原慎太郎元知事が「豊洲市場は安全なのだから、今すぐに移転しろ!」と言うべきではない
http://otokitashun.com/blog/daily/14347/

なおフリップの時系列でまとめた通り、

「勝手に基準を上げたのは小池知事」

という声もありますけど、上げたわけではなく石原都政で約束した基準を確認しているだけです。

行政の継続性から考えれば、むしろそれを変えたと言えるのは舛添都政ですが、このときの判断には予算承認という形で議会も賛成しているので、議会側にも責任があります(ただし、都の方針として「地下水を基準値以下にする」ことは変わっていません)。

このとき、盛土は「ある」ものとされていましたし、モニタリング調査も7回目まですべて基準値以下で、ここまできて大きく値が変わるとは、私を含めてほとんどの議員が想像していませんでした。見通しの甘さについて、率直に反省する他ありません。申し訳ございません。

そして都知事選挙において、「築地移転はいったん立ち止まって考える」ことを宣言・公約した小池知事が、方針通りの安全確認の見直しに着手したところ、地下ピットの存在や地下水の環境基準値超過という事実が出てきたわけです。

話を戻します。

第五回の専門家会議での議論を見れば、これから短期間で地下水を「すべての地点で基準値以下」にすることは困難ですし、細かなメッシュで調査した以外のところに(健康にもちろん被害がない程度の)小規模な汚染が残留している事実は認める他ないと思います。

よって豊洲市場を活用するとすれば、地下深くまでの土壌を丸ごと交換するのでない限り、健康被害がない程度の土壌汚染まで浄化することはそもそも不可能であったし、やる必要もなかったということでみんなが「再合意」する必要があります。

しかしそれは、並大抵のことではありません。専門家による科学的なお墨付きはもちろんのこと、当時の「合意」の再検証を行うことが必要不可欠です。

いや、不可能ではないのかもしれません。ですが新しく来た人が、前提条件が変わってここまで信頼が崩れているのに、「前の約束はナシにしてくれ。新しい約束はコレ!」と言っても、納得できない人の方が多いでしょう。

前に約束をした責任者がまず、自分が交わした約束が間違いであったことを認めて、ゼロリセットして初めて、新しい人物との約束を検討できる状態になります。

「そんなことは不要。自分で蒸し返したんだから、小池知事が自分で責任を持って合意を取れ!」という声があることは承知しています。しかし私は、こうなった以上は前任者の「禊」が大多数を納得させるためには必要だと思います。

仮にそれなしに知事が拙速な「安全宣言」をしたら、いま「早期移転」を求めている以上の非難が知事や都政に降り注いでくることは、想像に固くありません。

よって、ほとんど「覚えていない」であろう石原氏に対して、百条委員会という場で求められることがあるとすれば、私の中ではここが一番プライオリティの高いものでした。

石原慎太郎氏が真に市場移転のためを考え、問題解決に心を砕くつもりであるなら、自分が設定した基準の誤りを認めて撤回するべきだったと思います。

残念ながら私に対しては、

「誤りとか誤りでないとかではなくてね…」
「細かいところまでは覚えていないが、私は地下水が重要だとは思っていなかった
「これは文明論で…」

などというお答えに終始されましたが、他の委員から尋問に対しては

「確かにハードルを上げすぎたのかもしれない」

旨の発言をされました。これを世間がどう捉えるかは現時点で図りかねますが、意味のある重い言葉だと思います。

昨秋からずーーっと本件で安全性についてのブログを書いてきた人間としては、「重要だと思っていなかった」発言には、膝から崩れ落ちましたけどね…。

その他、この3日間の百条委員会では様々な事実がわかってきました。マスコミ等には

「新事実、明らかにならず!」

などと報道されておりますが、それは「メディア的に面白い事実が明らかにならなかった」という意味に過ぎません。

東京ガス側の資料は、当時の状況を知る一級資料です。資料そのものは公開することはできませんが、この後順次、尋問を通じて明らかになった事実をまとめて報告していきたいと考えています。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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