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非正規雇用しかない「学校介護職員」で、特別支援学校の質は維持できるか?

政策

本日は、行く行くと言っておきながらなかなか実施できなかった、
肢体不自由の生徒たちが通う特別支援学校の視察・見学に行ってきました。

地元の北支援特別学校にお邪魔しまして、
夏休みのため授業風景は見られなかったものの、
その分施設などは気兼ねなく説明していただけました。

特別支援学校の中に入った経験がある方は
少数だと思いますので、少しご紹介をしたいと思います。

写真 1

一見普通の教室ですが、すべての教室にシンクと冷蔵庫が設置されています。
メディカルケアが必要な生徒さんに対応するためですね。

写真 4 (1)

机の一つ一つも、実はそれぞれの生徒さんのために、
先生の手によってカスタマイズされているそうです。

写真 5 (1)

微妙な高さ・角度が工作によって調整された机。
サイドテーブルのようなものも付いています。
先生、器用ですね…(感動)。

写真 5

一般の学校に比べて重要度が高い保健室は、当然広めの作り。
ベッドだけでなく畳のスペースがあるのは、この方が様々な生徒さんに
対応しやすいという経験から、各学校に設置されているそうです。

写真 2 (1)

写真 1 (1)

廊下にはときどき、アルファベットと共に派手な色のカーテンがついています。
なんだろうと思っていたところ、このゾーニングによって生徒さんたちが
自分がどこにいるのか、どう移動しているのか視覚で把握するためだそうです。

写真 3 (1)

前を通ると、音声案内が流れる場所もあります。
そして一番インパクトがあったのは、トイレ。

写真 4

写真 3

写真 2

うちの事務所の三倍くらい(!)の広さがあります。
トイレの全容を撮影するのに、3カットが必要になるという…。

シャワーや洗濯機、フラットスペースなどが完備されており、
様々な容体の生徒さんに対応できる工夫が見てとれます。

特別支援の実態はなかなか伝わる機会がありませんが、
我々のイメージする「学校」との違いや様々な努力がわかり、
大変貴重な知識を肌身で得ることができました。

ところで、都立の特別支援学校には少し前から、
「学校介護職員」という制度が取り入れられています。

都立特別支援学校 学校介護職員について
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/buka/gakumu/kaigosyokuin_bosy.htm

image02

【学校介護職員とは?】(画像と共に上記ページより抜粋)

都立肢体不自由特別支援学校において、子供たちの学校生活を
充実させる介護の仕事を行う職員(専務的非常勤職員※)です。
移動介助、食事介助、排泄介助、学習補助等を行っていただきます。
※1年間の有期雇用。4回まで更新制度あり。

要は、特別支援学校は教育を行う「学校」ではあるものの、
どうしても介助などの「介護的な役割」が教員の負担になってしまい、
実際の教育に割けるリソースがなかなか確保できない。

そこで、介護を専門に行うスタッフを雇うことで、
教員の負担を軽減しようという試みなわけですね。

これだけ見ると素晴らしい施策なのですが、欠点もあります。
介護職員が導入された学校はその分、教員の数が最適化、要は減らされてしまうことです。
最適化された教員は、不足しがちな知的障害の学校などに配置されるとのこと。

介護を専任でしてくれるスタッフが来るのはいいけれど、
その分教員が減るのでは、本来の目的である「教育」の質が
落ちるのではないか…という心配が多くの保護者から寄せられています。

また、介護職員自体の「質」にも懸念があるようです。

というのも、上記のように介護職員は有期雇用、つまり非正規のみです。
このため、長く続けてくれる熟練スタッフが養成されづらかったり、
働き盛りで一家を支える世代の男性スタッフが確保できない事態が発生します。

「常勤で雇用すると、逆に採用形態が硬直化して、人数の確保が難しくなる」

というのが東京都の言い分で、一理はあるとは思うものの、
それならば常勤・非常勤どちらのキャリアも選べる制度にするべきではないでしょうか。

保育や健常者介護の世界もそうですが、採用条件が悪いために、
優秀な人材が確保されづらい状況が続いています。

「学校介護職員」制度の導入により、
特別支援学校でも同様の問題が起こる可能性が高そうです。

こちらの制度は2年前から順次導入が始まったばかりで、
平成28年度までに都立全校に配置が完了するとのこと。
北特別にはまだ、介護職員は未着任の状態でした。

保護者の方々の懸念が的中しないか、
しっかりと介護職員の質と量が確保されるかどうか。
制度設計も含めて、慎重に見守っていく必要がありそうです。

夏休みが終わったらまた、実際の授業風景なども視察させていただきたいと考えています。
なかなかスポットが当たらない特別支援についても、最適な政策提言が行えるよう、
引き続き注力をしていきたいと思います。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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