本日は東京大学を中心とする学生さんたちが、
後輩の紹介で政策提言に来てくださいました。
現在彼らは某教授の元で
「AED実施率向上プロジェクト」というチームを組んで活動しており、
AEDの問題点と今後について貴重なご提案をいただきました。
(本日の記事内容は、彼らのプレゼンから学んだことを多く含みます)
AEDは心停止状態になった心臓に電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器です。
2014年に導入10周年を迎える医療器具で、その存在はだいぶ認知されてきたものの、
まだまだ実施率は非常に低い状態です。
平成25年の総務省による「救急・救助の現況」によりますと、
目撃された心停止者数23,296名に対して、市民がAEDを使用した件数は738件。
なんと率にしてわずか3.7%に過ぎません。
心停止に対して3分以内に除細動=AED使用ができれば生存退院率は70%と
言われていますが、現在の日本では救急車が到着までに要する平均時間は7.9分。
この時間まで手を打たないと、生存退院率は20%程度まで低下します。
もしも適切に市民がAEDを使用できる環境が整えば、
救える命は現状と比べて4.5倍にもなるとの試算があるそうです。
■
このAEDに関する政策課題としては大きく、
・設置(設置台数は不足してないか、網羅性は十分か)
・使用(存在や使用方法は周知されているか、場所は認識されているか)
・作動(実際に設置された危惧が、正常に使える状態で保持されているか)
の3点に分けられますが、
今回は主に設置についてフォーカスします。
合わせて本日、東京都の福祉保健局の担当課長からレクチャーを受けましたが、
東京都のAED設置数は平成23年末時点で40,504台。これは全国トップの数値で、
人口10万人あたりの使用可能AED数においても全国3位です。
ちなみに日本全体には平成23年度末で38万3247台のAEDがあり、
このうち専門家のみが使う医療機関や消防機関に設置されたものを除くと、
一般市民が使用可能なAED(PADという)は約29万7千台になります。
東京都では数字だけでみると1キロ四方あたり約19個のAEDがある計算になり、
これは取りにく距離と時間で試算すると十分な数と言えるようですが、
いくつか問題が残ります。
現在AEDは区役所などの公共施設や、駅や介護・保育施設などの
準公共施設への設置がメインとなっており、夜間に市民が使用できる
AEDの数は著しく減少することです。
また、どこにあるAEDがいつの時間帯なら使えるのか、
網羅性の確認とその周知徹底も不足していると言えるでしょう。
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この設置に関する問題を解決するためには、
24時間営業をしているコンビニ等の民間施設に
AEDを設置することが解決策として有力ですが、ハードルがあります。
まず、これは私も知らなかったんですけど、
AEDの普及について東京都はほとんど予算を持ってないんですね。
消防庁が行う救命講習の実施などはもちろん行っているものの、
各種の施設がAEDを設置することに関する補助はゼロ。
行政が作るのが大好きな(笑)、普及啓発リーフレットなども刷ってないそうです。
一台30万、リースでも月5000円と言われるAEDの設置費用は
設置主体がすべて負担しており、駅などの準公共機関に対しては
「お願いベース」で設置を拡大してもらっているとも言えます。
あくまで現時点ではAEDに対して国からの法的な「設置義務」は一切ないため、
地方自治体が独自に予算措置を講じることがなかなか難しいわけですね。
(民間に設置してもらおうと思えば、設置補助金を講じることは不可欠)
うーん、こういう
・やった方がいいことだけれど、
・現時点では法的な枠組みがなくて、
・予算がついた前例がないこと
という政策課題は、正直に言うと
・国に働きかけて法的措置を待つ
・強い首長が、リーダーシップを発揮してその自治体で先行実施する
のどちらかでないと、なかなか政策実現できないんですよね…。
AEDの普及促進については総論では異論は出ないと思うので、
決して安くはないAEDの導入にどこまで予算を投じるのかという、
財政的な優先順位の決定と世論の醸成も必要になってくるかと思います。
■
とはいえ、こうした「設置」での課題面については
今すぐには実現が難しい部分もありましたが、「使用」「作動」については
予算がなくても実行可能性がある提案も多くありました。
こうした草の根の政策提言が実を結ぶよう、
引き続き連携を取って実現に向けて努力していきたいと思います。
今後進捗がありましたら、再度ブログで報告いたします。
また私はこうした学生さんからの政策提言は随時歓迎しておりますので、
我こそはと思う方はぜひお気軽にご連絡いただければ幸いです^^
それでは、また明日。
良い週末をお過ごしください。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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Tags: AED