本日は皆さんの頭が痛くなる(笑)、財政のお話し。
みんなの党東京都政調会で、東京都の「基金」運用について勉強会を行いました。
「基金」とは、特定の事業や目的のために積み立てておく資金を意味します。
わかりやすいのは「オリンピック基金」ですね。オリンピックのような巨大な事業は、
単年度の予算では対応しづらいので、毎年少しずつお金を積み立てておいた方が良い、と。
東京都が現在積み立てている基金は、合計約2兆7千億円。
都の一般会計予算が約6兆円超であることを考えると(予算のおよそ半分!)、
いかに巨大なお金が「将来のために蓄積」されていることがわかるでしょう。
別に東京都がとても裕福な自治体で(まあ実際に日本で一番裕福ではありますけど)、
有り余る予算を将来のために基金として積み立てておくのならば異論はないのですが、
東京都にも借金はあります。それも、かなりしっかりと。。
(上田令子都議のブログより。記事内容も必見!)
※都債…都が発行する債権。国債の都バージョン
東京都の借金(=都債の発行額)は、なんと6兆3千億円。
しっかりと一般会計予算の一年分ものお金を借金している状態です。
財政再建団体に転落寸前だった平成12年頃が、都債残額のピークですね。
そこから財政再建をして徐々に借金を減らしてはいるものの、
今年度も新規都債を4700億円ほど発行しており、
まだまだこのインパクトは大きいものです。
■
ちなみにこの東京都の都債発行額は予算比の6.6%程度で、
やろうと思えばプライマリーバランスを拮抗させて予算内で済ます、
新規の都債を発行せずに予算を組むことも不可能ではないと思います。
それでもなぜ新規都債を発行するかというと、
「長く使用する道路などの公共建築物などは、将来にわたってその便益が及ぶため、
単年度の予算でつくるより長期間に渡って召喚する都債でつくる方が公平・平等」
なる理屈があるわけでして、これに関しても
個人的に異論があるものの、今回はとりあえず横に置いておきます。
(詳しくは上記の上田都議ブログを!)
ここでは話を基金に戻して、ここにおける論点は
すんごい簡単に言ってしまうと
「なんで借金してるのに一方で積立(貯金)してんの?
そんなお金があるなら、借金返せよ!!」
ということに尽きます。
国や都などはとにかく「将来にわたる事業」だの、
「不足の事態に対応するため」だのと言って基金を溜め込みたがるのですが、
その必要性が疑問視されているものはたくさんあります。いわゆる「埋蔵金」です。
この基金の問題点を羅列すると、以下のようになります。
1.
運用利益が、借金の利払いにまったく及ばない
積み立てておくといっても、タンスにしまっておくわけにはいきません。
金融機関に預けたり、どこかの債権を買ったりして「運用」しなければなりません。
もちろん公共機関の行う運用ですから、安全性が第一に行われます。
その結果、東京都の基金運用における「利回り」はわずか0.2%弱。
一方で、6兆以上の都債の「利払い」は平均すると1.5%弱に及んでいます。
つまり、借金を返さないで溜め込んで運用していると、
勝手にその差額だけ損をしていくのです。誰得なんですかねコレ…。
極端な例ですが、数字で表すと以下の通り。
基金2兆7千億円×0.2%の利回り=54億円の利息
都債6兆円×1.5%の利払い=900億円の支払い
→年マイナス846億円
■基金で都債を返済した場合
都債3兆3千億円×1.5%の利払い=495億円の支払い
→年マイナス495億円
このように積み立てておくと、毎年350億円以上軽く損をしていくわけです。
10年すれば、オリンピック基金分くらいのおカネになっちゃいますね。
都債を発行して、安定した国債を買ってるとかどんなジョークなんでしょうか。
運用益が出せるならいいけれど、そうでないならさっさと借金返済に充てるべきです。
2.
インフレリスクをまったく考慮していない
元本割れなどの安全面を最重要視している割に、
インフレが起きた場合に関しては無為無策と言っていいでしょう。
3兆近くも積み立てておいて、ハイパーインフレとか起きたらどうしちゃうんでしょうかね。。
3.
東京都の基金全体を俯瞰して精査する仕組みがない
基金を運用しているのは会計管理局という部署ですが、
彼らは各局がそれぞれ基金として積み立ててきたものを機械的に
運用しているだけで、それが基金としての妥当性があるかを判断する部署はないそうです。
つまり、例によって縦割りで、
各局が自己申請で基金を積み立てているのですね。
それがつもりに積もってこの金額。
税収が4兆円兆の東京都に2兆7億円も基金、本当に必要なんでしょうか…?
■
基金の欠点はこれだけではないのですが、
長くなってきたので今日はこのあたりにしておきます。
そんなわけで、「将来のため」「不測の事態」に備えるはずの基金。
実は放っておくとマイナスを産みだして、インフレで吹っ飛ぶリスクすらあるのです。
2億7千億円にものぼる基金が果たして妥当性があるものなのかどうか、
貯めておくと安心どころ損をする「負の埋蔵金」と化していないか、
今後一つひとつチェックをしていきたいと思います。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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