本日は私のライフワークの一つである児童養護・里親制度のお話。
日本や東京都ではこの分野への政策的支援が極めて不十分であることは、
過去の記事で再三述べさせていただいた通りです。
過去記事はコチラから↓
http://otokitashun.com/tag/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E9%A4%8A%E8%AD%B7/
身よりのない、あるいは虐待や経済的事情で親元にいられない
子どもたちを社会的に保護する児童養護ですが、学説的にも国際的にも
「里親」の元で家庭的環境を与えることがベターだと言われています。
ところが我が国ではいわゆる「孤児院」、施設で育てることがメインであり、
里親の元で子どもたちを養育する環境がまったく整っていません。
参考:すべての子どもに家庭を!日本で里親委託が進まない残念な理由
http://otokitashun.com/blog/daily/5128/
その原因の一つが、「里親」に対する無理解です。
日本では、かなりの知識層でも「里親」に対する正しい知識がありません。
実際、私はこの問題に取り組むようになってからたくさんの人に尋ねてみましたが、
・「里親」といえばペットを引き取る人のことだと思っている方
・「里親」と養子縁組の違いがわかっておらず混同している方
が大半を占めていました。
行政も里親制度の認知拡大は課題認識していると思いますが、
どれだけ世間がこの存在を誤解しているかを数値化するため、
<ソーシャルボイスラボ>子供の里親とペットの里親は違うんだよ!!
http://social-voice.jp/lab/fosterparent/
を使って、インターネット上で使われる「里親」という単語が
どのような意味・文脈で用いられているかの解析を行いました。
その結果…
ネット上で使われる「里親」という単語は、96%以上がペットの文脈で使われる!
という、衝撃の(しかし予想通りの)結果が得られました。
我が国では、里親=ペットを引き取る人のことなのです。
ではこれの、何が問題なのでしょうか?
行政用語における「里親」とは、親元での養育が困難である児童たちを
「一時的に」預かって養育し、健やかに育成していく制度とその存在のことです。
親権の移動はなく、成人した・あるいは家庭環境が改善した児童は、その里親家庭から巣立っていきます。
ところがペット業界における「里親」とは、
「子犬が5匹うまれました!里親さん(=引き取り手、飼い主)を募集します♪」
という感じで、養育して成長したら手放すものではありません。
これは、行政制度でいえば「養子縁組」にあたるものです。
どうして日本のペット業界で、引き取り手に「里親」という言葉が使われるようになったのか…
私が調べた限りではその起源は把握できなかったのですが、
こちらの用途の爆発的な普及により社会でも
里親=恵まれない子供たちを引き取ること
という謝った認知、養子縁組との混同が完全に確立されたものと推測されます。
■
繰り返しになりますが、親権の移動を伴って子ども引き取るのは「養子縁組」であり、
子どもに適切な社会的保護を与える「里親」とは似て非なるものです。
しかし、上記のソーシャルボイスラボの調査結果でも
この2点を混同する書き込みは多数見られ、認知と理解の不足を裏付けています。
以前の記事でも述べた通り、子どもの里親委託を阻む最大の要因は
「実親の不同意」ですが、その背景としてこれらの『里親』への無理解が
「私の子どもを『里子』に出すなんて、とんでもない!」
「里親に持って行かれたら困る!施設ならいいけど、里親はダメ!」
という頑なな態度を醸成させている可能性は非常に高いと言えそうです。
行政が考えている以上に「ペット里親との混同」「存在そのものへの誤解」は深刻なのではないでしょうか。
この「里親」という制度・存在のリブランディングに力を入れなければいけないのですが、
ブランドイメージの常識から言えばここまで定着してしまった存在を覆すことは困難なので、
いっそのこと「里親」を別の行政用語に変えてしまうのも一つの可能性かもしれません。
実際の里親の方々には抵抗があるでしょうし、
私もすぐにはナイスな単語が思い浮かばないので、難しさは承知していますが…。
「養育支援家庭」とか?そういう感じのものを。。
■
ところで、そんな話をとある友人にしていたら、
「おときたさん、映画『アニー』を見れば、そんな誤解はみんな吹っ飛びますよ!」
と言われたので、これも職務だと思って実は先ほどまで見てきました。
(すいません、今からまた仕事します)(って言わないと怒られる政治家の宿命。)
映画『ANNIE/アニー』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ
http://www.annie-movie.jp/
結論:間違いない。
かいつまんでストーリーを説明すると、
いじわるな「里親」の元で暮らすみなしごアニーは、いつしか家族との再会を夢見ている。
そのアニーを偶然見初めた大富豪は、やがてアニーを「養子」にしたいと思って…
というもので、政策的見地から見るとかなり興味深い展開です。
「おまえは明日から施設だ、グループホームに行くんだよ!」
「アニーの親になるにはどうしたらいいんだ?foster(里子)じゃなくて、adopter(養子)だ」
というようなセリフが随所に出てきて、
「社会的養護」における階層や問題点を鋭くあぶりだしてきます。
しかしほんと、なんで日本ではfoster(里子)という単語が
ペット業界で使われるようになったんだろう…謎だ。。
なおこの映画、他の部分でも刺さりまくったので、
映画評はまた別の記事で書きたいと思います。
超絶オススメ映画!!
■
以上長くなりましたが、今回のソーシャルボイスラボの調査結果では、
この分野の問題点について多数の定量的データが得られましたので、
ぜひご一読いただきまして考察を深めていただければ幸いです。
▼再掲載
<ソーシャルボイスラボ>子供の里親とペットの里親は違うんだよ!!
http://social-voice.jp/lab/fosterparent/
▼関連書籍はこちら
「里親」の正しい理解と普及促進のため、引き続きあらゆる確度から
東京都に具体的なデータと実績を元に政策提言をして参ります。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
twitter @otokita
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