次の世代に希望をつくる

嫉妬、と名づけてしまえば楽なのに。泥のように沈殿するものとの向き合い方

日々のこと

落選してから、もうすぐ2年が経つ。

自分の感情に一区切りをつけて、党からの仕事を受けて、メディアに出演しながら飄々としているつもりだけど、

ふとした瞬間に、激しい感情に揺さぶられる。

一言で片づけるなら「嫉妬」だ。

けれど、その二文字ではどうにも足りない気がしている。嫉妬という言葉は、まだどこか青くて、健全ですらある。

自分の胸の底に沈んでいるのは、もっと名前のつけにくいものだ。

水中にある泥のように、光の届かないところで静かに堆積していく感情。かき混ぜなければ澄んで見えるのに、何かの拍子に足を突っ込むと、ぶわりと濁って立ちのぼってくる。

その「何かの拍子」が、いまだ。

人事のタイミング。誰がどのポジションに就くのか、永田町の空気がそわそわと動く時期。

役職が、肩書きが、人の名前とともに配られていく。その一つひとつを見るたびに、胸の奥のいちばん見せたくない場所が、じくじくと疼く。

落選していなければ。

自分もあの場所にいたなら。

あのポジションに、本来なら自分が。

書いていて、自分でも嫌になる。こういう感情を持ってしまうことが、恥ずかしい。政治家として、いや一人の大人として、もっと超然としていたい。

他人の栄達を素直に喜べる人間でありたい。そう思っているのに、心の方は言うことを聞かない。

頭で組み立てた立派な建前の下から、もっと幼くて、もっと剥き出しのものが顔を出してくる。

厄介なのは、誰を恨んでいるわけではないことだ。仲間たちはみんな努力し、そのために選ばれ、しかるべき場所に立っている。

何も間違っていない。

間違っているとすれば、それを見て勝手に軋んでいる自分の方だ。だから余計に、この感情の持って行き場がない。

誰かのせいにできれば、まだ楽だったのに。

かつては自分も、選ばれる側にいた。

決して平坦ではなかったけれど、有権者に名前を書いてもらい、あの議場に席を持っていた時期が確かにあった。

それがある日、選挙という一番わかりやすい形で「否」を突きつけられる。積み上げたものが、一夜にしてゼロに戻る感覚。

あの感覚を味わった人間でないと、たぶんこの泥の味は分からない。

いまの自分は、裏方だ。かつて隣で肩を並べていた人たちが表舞台で動くのを、少し引いた場所から支える立場になった。

それは決して不本意な仕事ではない。政策を練り、言葉を整え、誰かの登壇を後ろから押し上げる。

地味だが、確かに意味のある仕事だと思っている。思っているのに。

ときどき、光の当たっている場所を、まぶしそうに見上げている自分に気づく。

こういうことは、本当は書かない方がいいのかもしれない。

政治に関わる人間が、嫉妬だ、どす黒い感情だと吐露したところで、得することは何もない。器の小ささを晒すだけだ。

それでも書いてしまうのは、たぶんに弱さと、ずっと正直でいたいという妙な意地と、そこに付随するちっぽけな承認欲求があるからだろう。

きれいな部分だけを差し出して、澱んだ部分を隠して生きるのは、性に合わない。澱みも含めて自分なのだと、どこかで認めておき、また認められたいのだ。

だから今日は、永田町から少し距離を置いて仕事をしている。

物理的に離れれば、感情も少しは薄まる。人の名前が飛び交う場所から一歩引いて、目の前の政策と向き合っていると、泥は再びゆっくり底に沈んでいく。

それで解決したわけではない。ただ、澄んで見えるようになるだけだ。次にかき混ぜられれば、また濁る。

その繰り返しなのだろう。

この黒い感情に、いつか決着をつけられる日は来るのだろうか。正直、分からない。

もしかしたら一生、つけられないのかもしれない。

落選という経験は、時間が経てば風化するようなものではなく、季節が巡るたびに形を変えて戻ってくる。

そういう厄介な類のものなのだと、この2年でうっすら分かってきた。

でも、それでいい気もしている。

この「泥」があるということは、自分がまだ何かを諦めていない証拠でもあるからだ。心底どうでもよくなったなら、嫉妬も軋みも生まれない。

込み上げてくる黒いものは、裏を返せば、まだ自分があの場所に未練を、意志を、希望を持っているということだ。

厄介で、みっともなくて、でも消えてほしくはない。

そんな矛盾した感情を抱えたまま、流れてくるニュースを今も目で追っている自分がいる。

やまない雨はない。なかなかやまないけどな!

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音喜多駿

おときた駿
前参議院議員(東京都選挙区) 42歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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