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お台場・トライスロン会場の水質汚染。抜本的課題は、東京都の下水道システム(合流式下水道)にある

日々のこと

こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

お台場の水質悪くスイム中止 パラトライアスロンW杯:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48670290X10C19A8CR0000/

本日予定されていたパラトライアスロンにおいて、お台場の水質が問題となりスイムが中止になったことが話題となっています。

つい先日も、オリトライアスロンにおいてお台場の水質が問題視されていたばかりでした。

すでに何人かの政治家や有識者が指摘している通り、これは東京都(というより多くの日本の都市)における下水処理方法の問題です。

下水道には大きく分けて「合流式」と「分流式」という2つの仕組みがありまして、「合流式」とは下水と雨水を分けずに一つの下水道管で流す方式です。


東京都HPより引用)

これは一つの下水道管を設置・管理するため安価で住むというメリットがある反面、今回の事態を引き起こした大きなデメリットもあります。

通常時はもちろん、下水道管を流れてくる水は水再生センターを経由して、処理された後に海や河に放流されます。

しかしながら、豪雨の際など雨水の量が非常に大きくなり、再生センターのキャパシティを超えそうになった時は、未処理の汚水・雨水がごちゃまぜの状態で放流されてしまうということです。

>合流式下水道では、晴天日と弱い雨の日には、下水の全量を水再生センターに集めて処理しますが、強い雨が降ると、市街地を浸水から守るため、汚水まじりの雨水を河川沿いの吐け口やポンプ所から河川や海などに放流します。

東京都自身も認めているように、キャパオーバーして水再生センターを通すことができなかった汚水は、塩素を混ぜただけの通称「簡易処理水」として放出されています。

この点の情報公開が不十分であった点については、私も都議時代に折に触れて追及を重ねていたところでした。

参考過去記事:
港区の調査では、大腸菌が海水浴基準の千倍以上?!都の下水道局が管理する「簡易処理水(未浄化水)」の実態を追え(2016年10月)

https://otokitashun.com/blog/daily/13163/

これらの指摘によって情報公開は徐々に進んできたものの、キャパ超えの際に汚水が放流されるという問題点は抜本的な解決を見ないままです。

こうして先送りをしてきた課題が、東京五輪・パラリンピックという一大イベントを前にして、ついに国民・都民に対してわかりやすい形で顕在化したのが今回の事態というわけです。

とはいえ、明治の時代から合流式下水道を中心に整備が進められてきた東京都の下水道システムを改善することは、並大抵のことではありません。

東京都の資料にもある通り、大阪市・名古屋市などに加えて、世界を見てもロンドンやニューヨークなど多くの大都市が合流式下水道を採用しており、コストと緊急性の兼ね合いから合流式を採用して下水道の整備を進めてきた政治決断を一概に責めることはできないでしょう。

これを今から分流式に切り替えていくには、東京都23区だけでも約10兆3千億円(!)もの財源が必要になることが、都議会での質疑でも明らかになっています。

>○池田計画調整部長 仮に区部の合流式下水道区域を分流式下水道に改築する場合の概算事業費は、総額で約十兆三千億円程度と想定しています。なお、そのほかに、宅地内の排水設備を分流式に改造する経費は、都民の負担となります。
平成二十九年度公営企業会計決算特別委員会第二分科会速記録第四号より)

となると現実的な解決策としては、現在東京都が推し進めているように、降雨時に汚水を貯留する施設を増設していくことだと思います。

上記画像の「取組③」で触れられているように、170万㎡クラスの貯留施設の整備が計画されているものの、完成予定は平成35年(2023年)

つまり、来年の東京五輪・パラリンピックには間に合いません。。

なので、目先の対策としては報道などで発表されいる通り、水中に3重のシートを設置するなどして、競技会場に汚水が入ってくるのを防ぐしかないという計画に戻ってくるわけですね。

財源が比較的豊かな東京都においても、こうした下水道の問題が大きく改善してこなかったのは、一言で表せば優先順位の問題と言えるでしょう。

正直なところ、今回の問題が可視化されるまで、汚染水が放流される付近の関係者を除き、東京都の下水道システムに課題意識を感じていた都民はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。

超少子高齢化や教育無償化を始めとして、東京都にも取り組むべき・財源を投下すべき課題は山積みになっています。

その中で、環境問題に直結するこの下水道の問題に対して、どこまで可及的速やかに・財源を投資して取り組むべきか。

合流式下水道の問題は、着実に取り組んでいるとはいえ、今のままの改善スピードで良いのかどうか。そしてトライアスロンの水質問題は、本当にクリアできるのかどうか。

今回の出来事をきっかけに、私自身も改めて調査し、検討していきたいと思います。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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