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水道民営化(水道法改正)が、国会議員たちのポジショントークになっている件

日々のこと

こんばんは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

昨日成立した水道法の改正について、ネットを中心に多くの論考が寄稿されました。

「水は命にかかわるインフラ」「その国の根幹を外資に売り渡すのか!」という野党のイメージ戦略が功を奏し、ネガティブな意見が目立つ情勢になっていますが、私の考えは下記の記事を書かれたやながせ都議とほぼ一緒です。

コンセッションブーメラン。水道法改正は悪か?
http://agora-web.jp/archives/2036043.html

改めて私の方でも簡単にまとめておきますと、そもそも水道事業は地方を中心とする多くの自治体で非常に苦しい経営状態に追い込まれています

人口減と給水量減少で収入が低下しているところに、老朽化した水道管などの更新時期が重なり、多くの地域で将来的な水道料金の値上げが避けられない状況になっています。

こうした状況をなんとか「少しでもマシ」なものにするために、一部民営化をして収益が改善する見込みがあるのであれば、そういう選択肢も取れるようにしましょうね、としたのが今回の水道法改正です。

勿論民営化したところで、すべての地域で水道事業の収益が改善するわけではありません。むしろ永江一石さんが指摘するように、民間資本に見向きもされない地域も多々あるというのが現実でしょう。

本来はこうした状態になる前に、料金の値上げや経営形態の見直しなど抜本的な改革に踏み出さなければならなかったのですが、政治家たちは目先の選挙が大事なので、痛みを先送りをし続けてきてこういう状態になってしまいました。

こうした積み重なった負の遺産に直面し、各地域は広域化を模索するなり、一部民営化を検討するなり、考えうる限りすべての手を打たなければならない状況に追い込まれています。

例えば袖ヶ浦市では広域化が検討されていますが、仮にこれが実施されても「値上げ幅が1.5倍から1.3倍に抑えられる」というもので、それだけ各地域は悪戦苦闘しているということです。

こうした

「放っておいたら破綻する」
「無為無策でいれば、将来的に大幅な料金値上げは避けられない」

という現実を直視せず、水道を外資に売り渡すための陰謀ダーと騒ぎ立てる政治家は、

1.今が良ければOK、ツケは将来世代に回しておけばそれで良い(オレの次の政治家が頑張れ)
2.とにかく政府与党のやることが嫌いなので、反対しておきたい
3.本当に何もわかっていない

のいずれかだと思います。

なお、すでに多くの識者が指摘しているように、民間に売却できるのはあくまで運営権であって、料金すべてを差配する全権を明け渡すわけではありません。

こうした仕組みについては、以前に私が下水道事業ですでに民営化(コンセッション方式)されている浜松市の事例を詳しくレポートしたことがありますので、こちらが参考になると思います。


過去記事:
運営権収入で25億円!浜松市の下水道コンセッション方式、東京都でも実現の余地ありか

https://otokitashun.com/blog/daily/17209/

また、「利用者側に選択の余地がない(少ない)インフラ事業は、競争が起きないので民営化になじまない」という理論については、電気や鉄道・高速道路も民営化されている現状においては説得力を持ちません。

前置き(?)が長くなりましたが、今回の一連の政党・政治家たちの言動を見ているに、上記の2番にあたる政治家が多いことにがっかりするのです。

冒頭のやながせ都議のブログで指摘されているように、そもそも今回の法改正への道筋を開いたのは民主党政権です。

ちなみに、「コンセッション方式」の採用は、2011年のPFI法「改正」により、水道事業を含めたさまざまな公的事業で可能となったもの。今回の改正は、自治体が事業認可を返上しなくても「コンセッション」を採用できるように手続きをしやすくするための改正であって、反対するなら、2011年の時点で反対しとけって思うわけですが。。。

なお、2011年、このコンセッション方式導入を主目的とした改正PFI法を閣議決定から施行まで(立案から実施まで)したのは、当時の民主党政権です。つまり、水道事業のコンセッションを可能としたのは民主党政権となりますね。

また、江田憲司氏もSNSにこのような投稿をしておりましたけども、

Twitterで指摘をした通り、完膚なきまでに主張が変わっているわけであります。

一体あのときに主張していたことは何だったのかと、元党員として非常に残念な思いでなりません。

ちなみに改めてみんなの党のアジェンダを見たら、この政党本当に良かったな、マトモなことを言っていたなあと改めて悲しい気持ちになりました。嗚呼。

社会状況によって政策や方針が変わることはあると思いますが、水道事業を取り巻く厳しい環境が激変したわけでもない中で(むしろ年々苦しくなっている)、このような手のひら返しは単なる政局利用であり、本質から目を背けるばかりで何ら国にとってプラスにならないと思います。

水道事業の状況は、地域によって様々です。今回の法改正によって、取りうる選択肢は一応増えましたが、それでもどうにもならんという自治体は現実的に出てくるでしょう。

極めて苦しい状況の中で「少しでもマシ」な決断をしなければならないのが今の政治状況であって、潤沢な資産を外資に好き勝手に売り渡せたり、現状を維持していればみんなハッピーということはないのです。

こうした観点から、民営化の議論と将来を捉えていただければ幸いです。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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