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何のための有識者委員会だったのか?大幅変更された過剰支援にNo!【工業用水道】

日々のこと

こんばんは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

本日は第三回定例会の大きなテーマの一つである「工業用水道廃止およびその支援策」について審議するため、公営企業委員会・財政委員会のよる合同審査会が開催されました。

複数局にまたがる議案であっても、このように合同審査会が開催されることは稀で、いかにこのテーマが都民・事業者にとって重要なものであるかが伺えます。

過去記事:
本定例会もう一つの「主戦場」公営企業委員会は初日から紛糾。参考人招致は行われるのか

https://otokitashun.com/blog/daily/18844/

参考人招致を行うか否かで、これまで深夜まで続く激論が行われてきまして、最終的にユーザー当事者などを呼ぶことは見送られたものの、工業用水道存廃を審議した有識者委員会の委員長を招くことになりました。

午前中:有識者委員長(井出先生)を招いての参考人招致
午後:各局への質疑

という長丁場のスケジュール、私は午前・午後ともに質疑に立ちました。そしてこの議論の中で、改めて廃止に伴う都の支援策には重大な問題があることが浮き彫りになりました。

工業用水道を廃止するか否か、廃止する場合には現ユーザーにどのような支援を行うかについては、あしかけ5年間に渡って有識者委員会が専門的見地から慎重な議論を重ねてきました。

その有識者委員会の最終報告書で出た結論は「廃止すべき」、そしてそのために示された支援プランは以下の通りです。


有識者委員会報告書より抜粋、赤丸筆者)

切り替えにかかる期間が4年間、そして料金を徐々に工業用水道から上水道料金に切り替えていくための「激変緩和期間」を最長4~8年として、最長でも12年で完結する支援プランが示されています。

参考人として招致された井手先生も、

「通常であれば3年、5年という支援が一般的」
「経緯も踏まえて、これが最大限というところを示した
「こうした一定期間の間に、企業は適応してもらわなければならない」

ということを繰り返し述べておられました。この支援期間が1年延長する毎に、雑駁な計算ですが約10億円の都民負担が発生します。

ところがこの有識者報告書が提出された後、都はたった数ヶ月の「調査結果」を元に、20年にも及ぶ超長期支援プランを独自に策定してしまいます。

有識者委員会の議論では一切なかった、「据置期間」という新しい概念が登場し、激変緩和期間もさらに延長。支援が終わるのは平成50年で、そこまで毎年約10億円の都税が投入される計画です。

これに対しては「過剰支援ではないか」「いま現在も上水道でビジネスしている事業者も沢山いるのに、さすがにおかしい」という声が相次いでおり、私も同意見です。

上記で都は、たった数ヶ月の調査結果を元に支援計画を上書きしたことに触れましたが、この調査手法にも極めて疑問が残ります。

都は「ユーザーに丁寧に聞き取りをした結果、有識者委員会の支援プランでは短すぎるという意見が半数以上だった」ということを論拠としていますが、当然、有識者委員会もヒアリングを行っています。

275件の回答を得ていて、質問の仕方も「事業経営への影響が大きいか」という外部からも測定可能な客観的な回答が期待できる質問内容になっています。

そして合計で7割以上のユーザーが、それなりに前向きな回答をしているわけですね。

ところがその後、都が行ったアンケートは「支援期間が長いか短いか」という主観的な回答で済ませられる質問となっていました。

このような質問の仕方であれば、「短い」が増えるのは合理的な選択として当然のことです。

しかも、回答を得れたのは有識者委員会の約三分の一となるたったの82件です。さらに、バイアスが生じやすいアンケート手法にもかかわらず、それでも「短い」は56%で、「適正」との回答と拮抗しています。

回答者も多く、客観的な質問である有識者委員会の報告書におけるアンケートを重視せず、回答数も少なく主観的な質問を重要視して、支援案を新たに策定したということには非常に強い違和感をおぼえます。

有識者委員会が「最長12年」としたものを、都が示した20年計画に差し替えれば、都税負担は100億円近く増えることになります。

これまで述べてきたように、あしかけ5年かけて審議してきた有識者委員会の報告・提案ではなく、突如として都が独自プランを策定したのはたった82件の「丁寧なヒアリング」という乏しい論拠しかなく、何らかの政治的背景があったのではないかとの疑念が生じます。

確かに政治家からすれば、「手厚い支援」を訴えていた方が合理的かもしれません。現存のユーザーたちには喜ばれ、批判されることも少ない。弱者に優しいというイメージも醸成されるでしょう。

逆に、支援策をもっと短く限定するべきと主張する政治家・議員には、大きな抵抗・批判が殺到することは想像に難くありません。

しかし、政治家・議員こそ長期的な視野で、都民全体の利益を取るために時に厳しい判断を下すべきです。

なお、都が20年という大盤振る舞いな支援策を示した後に行ったアンケートでは、支援期間を「短い」と答えた人の割合は56%→31%と15%減少しました。

この15%の納得を得るために約100億円という費用対効果を、厳しいようでも冷静に判断していくことが必要ではないでしょうか。

私は今日の議論を通じてやはり、この支援内容は過剰・不適当であり、有識者委員会の報告書を無視したプロセスにも問題があると確信いたしました。

支援策の早急な見直しを求め、引き続き来週の委員会審議に臨んでいきたいと思います。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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