こんばんは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
昨日の予算特別委員会質疑の続きです。
築地再開発に関して、小池知事はすでに市場機能を築地に残す意思を失っているにもかかわらず、決断を先延ばしにしていることは前回記事で指摘してきました。
市場機能を残すためには、東京都は築地跡地を売却して手放すわけにはいきません。
そこで土地を売却せず所有し続けるために、基本方針として編み出されたスキームが「長期貸付で賃料160億円プラン」です。
「売却してしまえばそれでおしまいだけど、所有して賃料もらえばずっと収益が上がり続ける。これぞワイズスペンディング!」
と小池知事が宣言されたわけですが、いくら都内一等地にある東京ドーム5つ分以上の土地とはいえ、160億円もの賃料を継続的に(50年以上!)生み出す点については、当初から懐疑的な指摘が相次いでいました。
この財源論をクリアできなければ、そもそも市場機能云々の話すらできません。
そのため、都議選後すみやかにこの財源論・収益性の検討がなされるのかと思っていました。
ところがその検討がなされるどころか、いまや160億円スキームは完全に崩壊し放置されています。
それを理論的に指摘したのが、昨日の質疑です。
(使用したパネル)
まず、そもそもの「賃料160億円」という数字をはじき出したのは財務局だったのですが、この数字の根拠はすでに崩れています。
なぜなら、この160億円の中には住宅用地として貸し付ける部分が約6万ヘクタールも計上されているものの、すでに中央区が人口抑制策に舵を切ることを発表しており、さらに築地再開発検討会議の中でも住宅用途は否定されています。
じゃあ数値の根拠が崩れた160億円の数字をアップデートしているのかと財務局に聞くと、それは再開発検討会議に任せていますと。
それでは、再開発検討会議の内容を見てみましょう。
会議の中では、具体的な財源論を議論するどころか、委員の方々が次々にこんな発言をしています。
「前提としての考えるべき枠をある程度与えていただくと、それに応じたいろんなものが議論できる」
「都の姿勢として、売却するのかどうかってわかりませんけど、ここでどれだけの財源が投入できて財源が返ってくるのかという議論はかなり重要な、開発の大きな点になるんじゃないか」
はい、委員たちに財源論や収益を考える専門家はいませんから、当然のことながら他人事ですね。
これらの発言を受けて、座長がこのようにまとめています。
「商業施設か文化施設かというのは、都がまず決めて欲しい。あるいは、どれくらいの財政的な措置をとるのか、民間に任せるのか、それを決めていただかなければ、なかなか詳細が詰めていけないというご意見もありました」
これ、1回目の議事録じゃなくて、もう行程の折り返しに差し掛かる3回目の内容です(唖然)。
有識者会議は定められた枠組みの中で具体案を検討するのが役割ですから、委員の方々の懸念はもっともだと言えます。
議論が具体化できないで皆さん困っており、ましてや財源を考えることはできませんし、彼らの役割ですらありません。
財務局が「財源はあちらで検討している」と丸投げした再開発検討会議はこの状態で、実際に築地市場用地を所有する中央卸売市場も、当然のことながら収益性の検討などできません(不動産屋じゃないですから)。
で、このパネル内容に行き着きます(再掲)。
基本方針発表から9ヶ月が経過した今、どこも、誰も財源論を議論していないという、驚くべき無責任体制が取られています。
■
収益性確保がまったく望めない点に加えて、長期貸付を前提とした築地再開発にはもう一つ致命的な欠点があります。
仮に、仮に160億円の賃料が50年間継続的に生み出せたとして、それと売却した場合を比べて、どちらが財政的に有利なのでしょうか。
この試算は実は、もう庁内では行なわれています。
そして昨年の第四回定例会と今回の予算特別委員会で、中央卸売市場長が長期貸付の場合は「一定期間、資金収支のマイナスを補う財政上の方策が必要と想定」とはっきりと答弁しているのです。
160億円が継続的に生み出せたとしても、何かの手を打たないと財政的に破綻するスキームって…!
つまり現行の「中央卸売市場が築地跡地を所有したまま、再開発を行う」という政策を貫徹するためには、
・まず賃料160億円以上を50年間、安定的に生み出し続ける(≒副業で不動産業)
・それでも足りないので、さらに稼ぐ方法を何か途中で考える
・その間、もちろん本業である豊洲市場等を円滑に運営し、破綻しないためにコストを抑える
という無理ゲー中の無理ゲー(※)を中央卸売市場当局がクリアしなければならないということになります。
※無理なゲームの略
私はこの状況をして、俗な言葉(?)ですが小池知事に「すでに詰んでいる」とはっきり申し上げました。
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賃料160億円を検討することを放棄し、加えてもっとも楽観的な試算の上ですら売却>>>長期貸付なのですから、もはややるべきことは明白です。
中央卸売市場が土地を所有し続けることは諦め、売却を前提とする方針(=有償所管換え)に切り替えることです。
そうすれば、いま市場会計に計上することでおかしくなっている、築地再開発予算(5,400万円)なども一般会計に移ることになり、予算案としても一本筋が通ります。
ここまで理詰めで展開してきた私の質問に対して、小池知事は感情を前に出しながら
「委員とは認識の相違がある」
と述べ、残念ながら前向きな回答は得られませんでした。
やはり小池知事は目先の豊洲市場移転を終えて、ほとぼりが冷めたところで有償所管換えをする腹づもりだと考えられます。
しかし、その先延ばしこそが混乱を産み続ける最悪の選択であることは、前回の記事でも述べた通りです。
決断をするならば、一刻も早い方が傷は浅くて済みます。
築地再開発検討会議も、売却の前提となる都市プランを作ってきたという意味では大いに意味があり、有償所管換えをしても決して無駄にはなりません。
一刻も早い有償所管換えについては、引き続きあらゆる場面で求めていく所存です。
明日は最後の質問内容、特別顧問編について記事に起こす予定です。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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Tags: 予算特別委員会2018, 築地市場, 築地市場移転問題, 豊洲市場, 豊洲新市場