以前に、実はダンスって風俗なんだよというお話を書き、
沢山の方に閲覧をいただきました。
【風営法】ダンスは風俗ですか? -規制の中で僕らは踊る-
http://www.junkstage.com/syun/?p=391
んで、実はこの件で11月下旬に大きな展開がありまして、
バタバタしていて取り上げてなかったのできちんと後追いしたいと思います。
風営法の改正について集まったパブリックコメントを受けて、
警察庁がひっそりと11月21日に新たな公式見解を発表しました。
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令の一部を改正する政令案」等に対する意見の募集結果について
http://bit.ly/TgCsox
…まあ、リンク先に飛ぶ人も希少でしょうし、
読んだところで相変わらずのお役所作文なので、
僕なりに要約して内容をお伝えしましょう。
■
そもそもパブリックコメント募集の要旨としては、
(日)
今の条例では、特定の団体から講習を受けた指導者以外が
お金を取ってダンスを教えることは風俗営業にあたる
(月)
その「特定の団体」とは社交ダンス系の2団体だけであり、
今まではこのどちらかの団体の講習を受けねばならなかった。
(火)
なので、ダンスのジャンルも多様化してきた昨今、
この「団体」の門戸を他のジャンルにも開きましょう!
みなさん、どうですかー??
ってなところだったと思います。
これまで、風営法の規制を受けたくない真面目なダンサーさんたちは、
ダンス教室を開設するにあたって社交ダンスの講習を受けてたわけですね。
ヒップホップだろうが盆踊りだろうが。そうじゃない場合は、風営法の規制化でダンスを教えていたと。
そうした講習団体を多角化するという提案に対して、
市井の方々からは
「いやそもそも、今の時代にダンス講習受けなきゃ風俗っておかしいだろ」
「だいたいこれって、社交ダンスが前提の規制だったんでしょ?
それを他のジャンルにまで拡充しようって方がおかしくない?」
という至極当たり前の意見が噴出したようです。
んでこれに対して警察庁は、衝撃の見解を発表しました。
「風営法の理念はあくまで、『男女のいかがわしい京楽』を防ぐためのもの。その京楽とは身体が密着する『ペアダンス』を前提にしたものです。つまり今まで黙ってたけど、実はペアダンス(社交ダンス)以外はそもそも風営法で規制なんかしてなかったんだよね。てへぺろ」
なんということでしょう…!
こんな見解の発表を受けて、粛々と風営法と戦ってきた
ダンス関係業界の方々はひっくり返っているとの話も聞きますが、
僕が前回のコラムで言及した
「グレーゾーンで放置をしていた領域まで、国の監視を行き届かせようとしている」
「自らの権力を手放そうとしないどころか、ますます強化しようとしている」
という心配は、良い方向に外れたようです。
やはり、中学でヒップホップ授業が必修化されるような流れの中で、
さすがにダンスのすべてを「風俗」と見なす矛盾を続けられなかった、
というのが今回の見解の背景でしょう。
しかしながら、この見解がダンサー側としては
新たな問題を含んでいることもまた明らかです。
風営法規制の基準が「男女の京楽」であるというなら、例えばペアダンスの
社交ダンスやサルサダンスに比べて、セクシーなポールダンスやレゲエはどうなんでしょうか?
(別に後者2つに他意があるわけではないのですが…)
ペアダンス以外は風営法の規制から外れると明示された中で、
相変わらず規制化におかれ続ける「ペアダンス」ジャンル業界の方々から
意見や不満が噴出することは、想像に難しくないでしょう。
■
いやはやしかし、このような決着(?)がつくとは正直、
僕の想像の斜め上を行っておりました。
そして今後のシステム的な問題点としてはやはり、
規制に関して
「京楽の程度によっては、規制の対象になる場合もありえる」
と行政側が恣意的解釈の余地を大いに残している部分でしょう。
前回も書いた通り、時代遅れの風営法自体の法改正で問題解決をするべきだと思いますが、
いつまで小手先の条例改正や「解釈」で逃げ切るつもりなんでしょうか…。
とにかく、今回の風営法とダンスの件でわかることは
「政治や行政に無関心だと、いつの間にかどこかで知らない誰かが、
自分たちに関わるルールや決まりを勝手に決めたり変えたりしてしまう」
ということです。
しかし逆に言えば、今回のパブリックコメント募集のように、
我々が高く関心を持っていれば意見を言える余地もあるし、
また少なからずその決定に影響を与えることもできます。
それが、民主主義の良さであり、めんどくささでもあるのです。
今回のダンスは一例ですが、ぜひ自分の身近な政治・行政問題に
何らかの形で関心を持っていただきたいと思います。
そしてまたこの件は、続報があれば取り上げていきたいですね。
■
といったところで、本年度のコラム更新は最終回となります。
1年間、ジャンクステージの「Recommended Writers」として
大きく取り上げていただき連載を続けてきましたが、どこまで皆さまの期待に応えられたやら。
本コラムが皆さまの政治意識の向上に多少なりとも貢献し、
多くの方が政治を諦めず、関心高く見守るようになっていただければ幸いです。
それでは、良いお年を。
2012年12月30日
オトキタシュン
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
twitter @otokita
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