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法律の摩訶不思議 -公職選挙法と交通違反-

政治コラム

いよいよ、12月16日は衆議院総選挙の投票日です!
街には徐々に街宣車が溢れ、選挙モードが漂ってきました。
このままクリスマスムードを吹き飛ばしてくれればいいのに。

…さて、そんな選挙ですが。

選挙に「おかしなルールがある」というのは
皆さま方もなんか薄々気づかれているのではないかと思います。
もうすでに大半の方が知っている有名な問題点としては、

「選挙期間中は、インターネットによる宣伝・選挙活動ができない」

なんてのがありますね。
こうしたルールは「公職選挙法」という法律で定められています。

なんでネットで選挙活動をしちゃいけないんでしょうか??

まず公職選挙法には、実に高尚な理念(理想)がございます。
それは、

経済力の多寡で当選者が決まるような選挙ではいけない!
万人が政治の世界に挑戦できるようなルールを定めるべきだ!!

というものです。
おや、「選挙はカネがかかるもの」という僕らの常識からは
あまりにもかけ離れた理念ですね!これはどうしたことでしょう。

まあこうした「崇高な理念」にもとづいて、
ざっくり言うと選挙には大きく2つのルールがあるわけです。

1.
選挙期間中に使えるお金の量は決まっている
→ゆえに、出せるハガキの枚数や貼れるポスターの枚数にも上限があります。
上限を設けないと、お金のある候補者が作りまくって選挙で有利になっちゃうからね。
こうした印刷物は選挙では「文書区画」というものに分類され、色んな制限がかけられています。

2.
定められた選挙期間以外は、選挙活動をしてはいけない
→それができたら、選挙期間外にいくらでもお金を使って宣伝でき、
上記1のルールが有名無実になってしまうからです。

インターネットが選挙期間中に使用できないのは、
ネットが現在1番のルールの「文書区画」にあたるとされているからです。

詳しく解説すると、ネットにもお金がかかる時代がありました、と(確かにあった)。
ハガキやポスターの枚数は制限してるのに、電子メールでいくらでも有権者に
ダイレクトメールを配信できたら意味がなくなってしまいます。

ここにも制限をかけないと、ダイヤルアップ接続で(懐かしい!)
ネットをつなぎ放題にして、湯水のように使える金満候補者が選挙で有利になってしまう!
それはいかん!じゃあもう、ネットは全部禁止にしてしまえ!!

…とまあ、こんな感じになるわけですね。
だいぶ端折りましたけど。

2番の方も、だいぶおかしなルールです。

選挙期間中(今回は12月4日~16日)以外は選挙活動してはいけないのに、
もう街頭演説もしてるし、街には候補者のポスターがバンバン貼られてますよね?

実は表面的には、いま行われている活動は候補者の名前を売る「選挙活動」ではなく、
政党や政策のアピールをする「政治活動」であるというタテマエで許容されています

あくまで街に貼られているポスターは、候補者の名前を売るものではない。
なので、よーーく見るとポスターのどこかに小さく小さく

「平成25年◯月◯日、街頭演説会(やら、勉強会等)開催」

というような、遥か未来のイベントを告知する文章が書かれています。
あくまで「演説会や勉強会の宣伝ポスターで、名前を売るポスターではない」という理屈です。

政治家っぽい人が配っているチラシも同じです。
どこかに小さく「勉強会討議資料」とか書いてあったりします。
討議資料ばらまいてどうするんだよっていう突っ込みを、選挙管理委員会は入れてくれません。

長々と書いてきましたが何が言いたいかというと、
公職選挙法は完全に形骸化しており、まったく理念が現実に追いついていないということです。

結局、事前の選挙活動は「政治活動」として見て見ぬフリをされるので、
ずーーっと前から仕事やめて宣伝活動を続けられる、お金のある候補者や
もともとの地盤がある世襲議員が圧倒的に有利になります。

こいつらに勝つためには新人候補もバカ正直に
選挙期間だけ闘うわけには行きませんから、事前の宣伝活動で
やっぱりとんでもなくお金がかかるハメになるわけです。人も雇えた方が有利だし。

なお、選挙期間中の運動に対しては、印刷費の一部や選挙カーのガソリン代まで
かかった経費のかなりの部分が選挙管理委員会から支給されます(もちろん上限はありますが)。
選挙期間中は理念通り、「お金のかからない、対等な闘い」なのです。

インターネットも、つなぎ放題が当たり前になった今、
圧倒的に現実は先の方にいっちゃってルールが追いついていません。

追いついていないどころか、地盤や鞄(資金力)がない新人候補が
知名度を上げるために必須とも言えるツールを奪い取って、
足を引っ張り狂うような状態になりさがっています。

ここで少し話は逸れるのですが、日本人はどうも

法律(ルール)はそのまま放ったらかして、グレーゾーンで運営したがる

という面があるように思えます。
例えば、交通ルールのスピード違反。

だいたい都心の道路は制限速度が40~50キロくらいが多いですけれども、
そんなのを守ってる車のが珍しいくらいで、大体60キロくらいまではOKになってます。
ていうか、それくらい出さないと流れにまったく乗れません。

高速道路も名目上の制限速度は100キロですが、追い越し車線では
110~120キロくらいは概ねOKというのが暗黙の了解になっています。

ドイツなんかは全く逆で、制限速度が適正に設定されている替わりに、
数キロでもオーバーしていると容赦なく警察の御用になるそうです。

これなんかも、

「本当はこれくらいの速度で走ってくれるとみんな安心よね」

という理想に、現実の法律(ルール)がまったく追いつかず
形骸化している顕著な例なんじゃないかと思います。

こうした「暗黙の了解」を好むのは日本社会のムラ文化が…
などという社会学的な分析は学者に任せるとして、兎にも角にも選挙においては
公職選挙法は古い政治家たちが生き残る道具となり、害悪になっていると言わざる得ません

これを解決するには、

・ルールを現実に合わせる(ネット選挙や、事前選挙活動もある程度思い切って解禁。新たなルールを作る)
・現実にルールをあわせる(取り締まりをめっちゃ厳しくする。事前にビラ配った瞬間逮捕!とか)

このどちらかの道に進むしかないわけですが、
どう考えても後者は現実的じゃないですよね。。現職が有利になるし。

「お金で人を差別してはいけない!」

という公職選挙法制定時の理念は大変立派なものだったと思いますが、
やがて形骸化して既得権益者たちの拠り所となってしまった悪法は一刻も早く
ご退場いただくべきです。そんな高尚な理想があるわりに、立候補に供託金300万必要とかも意味不明だし。

特に個人的には、公職選挙法を作ったやつは今のルールだと選挙期間前後で
何度もポスターの種類を変えなきゃいけず、その度に徹夜で張替えをしている
人たちの気持ちになってみろハゲ!!と言いたいです。いや、マジでクソゲーだから今の選挙。。

まあとはいえ、泣いても笑っても、今はこのルールで勝負するしかありません。
こうした理不尽なルールを正す政治家をきちんと選出することができるのか、
それは我々有権者一人ひとりの意思にかかっています。

みんな、選挙には行こうNE!
投票日は12月16日(日)、不在者投票もやってますよー。
ではでは。

 

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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