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【風営法】ダンスは風俗ですか? -規制の中で僕らは踊る-

政治コラム

以前にヒップホップの指導資格新設の件で
「政治とダンス」について記事を書きましたが、

ヒップホップが狙われた理由 -政官マスコミ、腐敗の果てに-
http://www.junkstage.com/syun/?p=250

まだダンス絡みで政治(法律)にちょっとした動きがありますので、
ダンサーの端くれとして今回もなんか書きたいと思います。

僕がノロノロしており募集は締め切ってしまったのですが、
警察庁が先週末までとある風営法(の中の政令)改正案について
パブリックコメント(要は世間のご意見)を募集しておりました。

「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令の一部を改正する政令案」等に対する意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=120120009&OBJCD=&GROUP=

とリンクを貼り付けておいてナンですが、せっかく飛んでもらって
わざわざPDFファイルを開いていただいたとしても、おそらく99%以上の人には
まったく意味不明だと思いますので、解説させていただきますね。

(なんで官僚ってのはこういう書き方しかできないのか・・・ブツブツ。。)

まず衝撃的な事実をお伝えしなくてはならないのですが、今現在、
わが国でダンスを教えることは風俗に当たります。なんだってー!!
(風適法第2条第1項第4号)

これには色々と歴史的背景がありまして、かつての社会では
社交ダンス場が売春斡旋やドラッグの売買の温床となっていた時期があり、
お酒を出す所謂「キャバレー」だけでなくダンスホール自体も風俗規制の対象としたようです。

法律というのは強力な硬直性を持っておりますので、
時代が変わってダンスが「スポーツ」「文化」となった(かな?)今でも法律上は
それらをスタジオ等で踊ったり教えたりすることは「風俗営業」になると、こういうわけですね。

半年ほど前にクラブが「客を躍らせた」ということで検挙された事件が
話題になりましたが、そもそもダンスそれ自体が風俗だとみなされているので
それを厳格に適用すれば深夜0時以降に客が踊ってる店は全部アウト。

ちょっと話はそれますがこのクラブ摘発事件は、

・風営法の許可を取れば、深夜0時以降は営業できない
・深夜営業の許可を取れば、ダンスという行為ができない

という現実と法律が乖離しているジレンマから生まれたものだったわけですね。

風営法ってのは本当に適用が曖昧な法律で、時の為政者や官僚の胸先三寸で
運用のルールが変わって街の様子が一変します。首長が替わる度に、その都市の繁華街の
雰囲気が変化することは、その辺に明るい人は薄々察しているのではないかと思います。
(その辺に明るい人?)

なお大阪では、橋本徹さんが市長になってほどなく
宗右衛門町(東京でいう歌舞伎町)から「セクキャバ」という業態が消え去ってすべて
「ツーショットキャバクラ」へと姿を変えており、客引きも締め付けに嘆いておりました。

…話をダンスに戻します。

というわけでダンス教室は区分でいうとキャバクラやソープに近い扱いなので、
ダンススタジオという存在はなんとなく繁華街の胡散臭いところにあるのですね。
ちなみに僕が通っているスタジオも歌舞伎町の端っこの方で、ラブホテル街のど真ん中です…。

そしてきちんとしたスタジオはちゃんと風営法の許可を取っていると思いますが、
フリーのインストラクターで貸しスタジオで生徒さんに教えているダンサーの方なんかは
そもそもこういう事実や法律をまったく知らなかったりします(危ない!)。

深夜練とか、お金取って教えてたら厳密には完全にアウトですな・・・。

とはいえ、ダンスが「風俗」とみなされ続けることに対して
ダンス業界も無抵抗でいたわけではありません。

かつてはビリヤードも同じく風俗とみなされ、
玉突き場(ビリヤード場)には厳しい規制がかけられていましたが、
時代の変遷の中で風俗規制から外されたという事実もあります。

そして一部ダンス関係者たちのロビー活動が実りついに1988年、
一定の条件を満たしたダンス教室は風営法の対象外となりました。
その一定の条件というのが、条文の中では長ったらしいのですが要は

国が認定する特定団体から講習を受けて、資格を取得した指導者がいること

なんか、どっかで聞いた流れだな…。
そしてその「国が認定する特定団体」というのが1988年から現在まで

・社団法人全日本ダンス協会連合会
・財団法人日本ボールルームダンス連盟

の2つだけなのです。

そしてコレ、名前を見ればなんとなくご想像がつくかと思いますが
どちらも社交ダンスの団体です。つまり今、社交ダンス以外のジャンルは
風俗規制から抜け出すことはできない
のです。

さあ話が冒頭にグルっと戻ってきました。

この状況を変えましょう、というのが今回の
警察庁がパブリックコメントを募集している改正案。

端的に言うと、今現在2団体だけになっている
「国の認可団体」の幅を広げて、色んなジャンルのダンスを
救い上げて認可団体を作れるようにしよう!ということ
らしいです。

これは果たして、喜ぶべきことなのでしょうか?
前置きがすんごく長くなりましたが、今日の論点はここです。

確かに一見、社交ダンス以外のジャンルにも認可団体を
増やして認めていこうという姿勢は、ストリートダンスやサルサやタンゴ、
民族舞踊などにも理解が広がってきた前向きな姿勢にも思えます。

しかし逆から見れば、これまでは社交ダンスに限定され
それ以外はグレーゾーンで放置をしていた領域まで、
国の監視を行き届かせようとしているとも取れる
のです。

僕の意見を結論から申し上げると、このような小手先の改正ではなく、
風営法からダンス規制自体を撤廃するべきであると考えます。

ジャンルが多岐にわたり、そもそも「芸術」の分野であるダンスを、
「国が認定する団体」を通じてコントロールしようとすること自体に
そもそも無理があるし、現実と法律はどんどん乖離して破綻寸前です。

いま現在もダンスがアングラな文化で犯罪の温床になっているならともかく、
ダンスはいまやスポーツや文化として一般的に認知されおり、
中学の体育の授業にも取り入れられるなどむしろ健全化が進む一方です。

国や行政の規制はあくまで消費者保護に限るべきであり、
その必要性がほとんどなくなった今、ダンス教室やクラブの運営は
市場原理に任せて競争主義の下で淘汰されていくべきです

今の現状を鑑みればビリヤード同様、ダンスも規制対象から外すのが筋なのに、
警察利権はまだ苦し紛れに政令を改正し、様々なジャンルにまで監視の目を広げ、
自らの権力を手放そうとしないどころかますます強化しようとしているように見えます。

これを許して「特定団体」制度がますます強化されれば、
官僚の天下りの温床となる組織が雨後のタケノコのように誕生するでしょう。
「ストリートダンス検定」なんて実施する例の厚生省外郭団体は大喜びですね。

しかしこの動きには、ダンス業界でも意見が分かれています。

「確かに、風営法からダンスが除外されるのが理想。
でもそうは言っても、そうなるまでの道はまだまだ険しい。
それなら一旦この改正を受け入れて、風営法の規制から抜け出したい…」

そのように考えるダンスインストラクター、ダンススタジオ経営者もいらっしゃいます。
またレバ刺し規制が一部の人々に歓迎されたように、

「国がしっかり監視して、守って欲しい」
「いかがわしいクラブやダンススタジオは、行政が淘汰して欲しい」

と思う人々も、決して少なくありません。
自由な選択には常に、重たい責任が伴います。

ダンスの法律ひとつ取っても実は
社会のあるべき姿、これからの国が進むべき姿が垣間見えるのです。

皆さんは、どう思いますか?
ダンスはまだ、いかがわしい風俗でしょうか?
国に守られた規制の中で、ずっと踊り続けますか?

ダンスに関わる風営法に興味を持った方は、
こんなサイトも参考にしてみてください。
http://www.letsdance.jp/

それでは、また次回。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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