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美辞麗句の裏で-「被災者高速無料」に、政府のバラまき体質を見る-

政治コラム

お盆ですね。高速道路の渋滞や羽田空港の混雑がニュースで流れる昨今、皆さまいかがお過ごしでしょうか?僕は高級ホテルのプールに単騎突撃する素敵な週末を過ごしましたよ(死)。楽しかったナァ…

さて、ちょいと古いニュースですが↓
無料化高速、トラック“裏技”横行 観光地は閑古鳥で明暗

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110709/biz11070918010008-n1.htm

最近のニュースでも(URLが探せなかった…)水戸ICで降りるトラックの大半が不正利用トラックである調査結果が判明するなど、政府民主党のとった高速無料化政策は愚策であったと評価する他ありません。

問題点は多岐に渡るのですが、今回は「被災者無料」という一点に絞って論じたいと思います。

上記のトラックやバスなどの産業車の無料に加えて、政府は被災者支援の一つとして暫定1年間の「被災者高速無料」を打ち出しています。被災者が制度を利用するためには、入口料金所の一般レーンで通行券を取り、出口料金所で身分証明書とあわせて市町村が発行する「被災証明書」か「罹災証明書」を提示するというものです。

曲者は前者の「被災証明」で、この発行基準は自治体に一任されています。その結果、現在までに発行された被災証明は350万枚(ネクスコ東日本調べ)とも言われており、明らかに普通の人がイメージする「被災者」以上の利用者が高速道路を利用していることが推測されます。

これによって、被災者の間でも大きな温度差が生じているそうです。

「被災地」に住んでいても、その被害程度は明らかに違います。津波ですべてが流され、高速料金の支払いもままならない方もいれば(そういう方の高速利用はそもそも多くないと思うので、根本的にこの制度自体に疑問もあるのですが…)、軽度の被害で職業や収入もあり高速代程度なら問題なく支払える人もいます。

福島県いわき市在住の方に直接聞いたお話では、もともと被害のなかった方やそれなりに生活も回復している人の中には、制度の正当性や渋滞問題などを危惧してあえてこうした制度を使わない真面目(?)な方々も少なからずいらっしゃるようで、そうした人から見れば「被災の乱用」とも感じられるようです。

なお、福島県いわき市は原発の被害もあいまって、全住民に無条件で被災証明が発行されています。

他にも例を挙げれば、岩手県矢巾(やはば)町は内陸に100キロほどに位置し、津波の被害はまったくなく被害は停電程度。それでも全戸を対象にしたのは、茨城県内の自治体が停電や断水でも被災証明を発行していると聞き、発行を決めたそうです。

一方で沿岸の農村地帯の自治体の中には「高速から遠いし、もともと利用者が少ない」という理由で発行を一切していないところがあったり、また津波被害の大きかった陸前高田市の戸羽太市長の「ボランティアが無料になるなら被災地に来やすくなるかもしれないが、被災地の住民が高速を使って東京に行くことがどれだけあるのかを考えると、そもそも被災者を無料にすることに意味はあるのかと思う」という談話もあります。

経済政策でも福祉でもそうですが、「何を持って救済対象とするのか」「どこまでを救済するのか」という判断は非常にセンシティブなものです。今回の被災者無料における最大の問題点を、僕は

政府が被災証明の発行基準を自治体に丸投げした

という一点に見出します。

真に困難に直面している被災者を救済する気があるのなら、政府が主導権をとってその基準を各自治体に示すべきでした。そうしたことがないから、自治体同士で顔色を伺ったり、被災証明を受け取った被災者同士が互いに利用を気兼ねする事態にもなったのだと思います。

振り返ってみれば、このスタンスは民主党政権のすべての施策に当てはまります。「バラまき」と批判される子ども手当や農家の個別保障、高校や高速無料化などはほとんど「一律」であるとか「すべて」が対象となっています。これは一見平等で公平に見えますが、「基準(対象)を決める」という最も政治的な役割の放棄とも言えます。

「被災者を救済したいと思っていますよ。制度は作って予算も確保したから、あとは自治体で基準を決めてやってね」では、中央政府としてあまりにも無責任な姿勢です。それならば確保した予算を各自治体に分配し、被災者支援のために使用用途も含めて自治体に委任するというのが筋ではないでしょうか。

政府は、重大な決定から逃げ続けています。8月からは観光産業復興のため東北へ向かう高速の一律無料化を検討と言っていましたが、それにより影響を受ける産業(他の交通機関など)との調整ができず、結局は先送りになってしまいました。

決定を先送り・丸投げするは、政権与党の態度にあらず。

「無料」とか「支援」ということは、一度始めてしまうとたちまちのうちに既得権益化します。人間、一度与えられたものを手放すことは想像を絶するほど苦痛が伴うのです。問題点が表面化したのなら、「被災の乱用」が定着する前に動く必要があります。

政治のリーダーシップとは、困難な決断を下すことです。被災者無料が行われるのが1年間だとすれば、まだ半年以上が残っています。自治体間、また被災者間の無用ないさかいがこれ以上広がらない用、政府が正しい決定を行うことを期待します。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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