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「産みたいけど産めない」人への支援をどうするか?-東京都の不妊治療助成-

政策

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先日のタウンミーティングの参加者の若い女性の方から、
不妊治療に対する助成について

・少子化と言われる割には、この分野への支援が手厚くない
・所得制限が厳しいので、頑張って働くと対象外になってしまう
・住んでいる基礎自治体によって、上乗せ支援のある場所とそうでないところがあり残念

などのご質問・ご意見がありました。

この分野については不勉強だったので
早速先ほどレクチャーを受けてきたのですが、
かなり興味深い&複雑な問題だと感じましたので、まずは共有いたします。

そもそもこの「特定不妊治療費助成制度」は、不妊治療の経済的負担を
軽減するため、高額な医療費がかかる配偶者間の体外受精・顕微授精に要する
費用の一部を助成する仕組みとして、平成16年度より実施されています。

東京都特定不妊治療費助成の概要
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/kosodate/josei/funin/

実施主体は広域自治体(都道府県)で、
国と都が半額ずつを負担して実施する制度になります。

国が定めた基準がベースで、都道府県が独自の上乗せができ、
ここにさらに基礎自治体が上乗せするケースもあります。

一見すると、

「少子化なんだし、産みたい女性に対する助成はどんどんするべきだ!」

と思いますし、私も子育て世代なのでそう感じていたのですが、
コトはなかなか単純ではありません。以下に問題点・論点を挙げていきます。

■不妊治療の成功率は2割程度

東京都が不妊治療助成に投入している予算は、平成25年度で25億円。
利用者数は約8600人ですが、治療の成功率は2割程度だそうです。

こうした受益者がかなり少数に限定されており、
しかも成功率があまり高くない治療に「公費(税金)」を
投入することに対しては、「受益と負担」や合理性の観点から問題が指摘されています。

■そもそも、「子育て支援政策」という位置づけではない

所得制限が夫婦合算で730万円となっていることが議論されますが、
実はこの制度、そもそも「子育て支援政策」という位置づけではありません

あくまで「低所得者に対する社会給付の一貫」という位置づけなので、
こうした一定の所得制限をかけなければいけないのですね。

こうした「制度の立ち位置」は見落とされがちなのですが、
議論をする上でけっこう重要な観点になってきます。
所得制限を解除するためには、制度のそもそもの目的を変える必要が出るからです。。

ちなみにこの所得制限の金額が絶妙に
「制度を使いたい層」「使ってほしい層」を弾いてしまっている気がします。
東京都の場合、所得の額面は高いですし…(730万円制限は全国基準と同額)。

■自由診療に公費(税金)を突っ込むのってどうなの?保険の対象にしちゃえば?

これもまたそもそも論なのですが、この助成の発端は
いわゆる不妊治療が保険の対象外、自由診療であることです。

本腰を入れて少子化対策として不妊治療に対策をしたいなら、
一定の不妊治療を公的保険の対象とするのが一番シンプルなやり方です。

ところが財源の問題や、最初に出てきた公平性や合理性の観点から
結論が出ずに先送りにして、

「保険の対象にするのはキツいけど、助けないわけにもいかなそうだから、
 とりあえず低所得者対策っていう建てつけにして、都道府県が
 助成金を出す制度でもつくっておきますかね」

ということで生まれたのが、この助成制度であると言えます。
言ってしまえば、先送りで及び腰の中途半端な政策…。
立ち位置も少子化対策じゃないですし。

ちなみに世界を見ると、不妊治療を公的保険の対象にするかは
各国によってちょうど半々くらいで対応が割れているそうな。
アメリカだと、州ごとに対応が異なっているそうです。

それだけ、意見が分かれる案件ということですね…。

個人的には8,600人の対して25億の公費を投入して、
2割の方がそれによって出産に成功して子供が誕生するとすれば
少子化対策としてはそんなに悪くない投資じゃないかと思います。
(投資、という言い方はなんですが…)

不妊助成の制度を拡大していくには、

「年を取るまで子どもを産まなかった女性の自己責任」
「そんな限られたところに、私たちの税金を使うな!」

というまだまだ根強い国民感情を
納得させていく作業が必要になる
でしょう。。

ちなみにこの部分に関しては東京都はかなり頑張っている方で、
平成26年度から独自の上乗せで助成金額を増額しています。

平成26年4月1日からの制度変更の内容
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/kosodate/josei/funin/top.files/seidokaiseinochirashi.pdf

筋道として、不妊治療の公的保険への組み込みを考えるとすれば、
港区が独自に行っている「所得制限なしの助成」という取り組みで今後
どれくらいの財源が増額されるかが参考になりそうです。

対象者が少なく、あまり争点にならない不妊治療ですが、
現状はこんなところでしょうか。ぜひ皆さまのご意見を
東京都や議員へと届けていただければ幸いです。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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