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「障害児への偏見」と無関係ではない、児童養護における施設偏重主義

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
本日は今回の行程で個人的にもっとも興味があった、
世界各国で家庭養護を推進している国際NGO

「LUMOS ルーモス」
http://wearelumos.org/

の本部に伺うことができました。

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あの「ハリーポッター」の作者であるJ・K・ローリング氏が、
施設の劣悪な環境で集団生活を送る子どもたちの写真に衝撃を受け、

「どんな子どもたちにも、全員に家庭環境が与えられなければならない」

という強い信念を持って団体を設立。
英国で成し遂げた脱施設化のノウハウを元に、
東欧やアジアなどで家庭養護推進のコンサルティング等を行っています。

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直接お話しをいただいたのは、J・K・ローリング氏と共に団体を立ち上げた、
創設メンバーの一人であるサー・ロジャーズ氏。

英国では「サー」の肩書は非常に権威・功績のある方に送られるものであり、
ロージャーズ氏は英国の児童福祉・家庭養護におけるまさに第一人者だそうです。

なんとルーモスでは2時間半も時間を取っていただけたため、
お話は本当に多岐に渡ったのですが、サー・ロジャースの話の中で
何度も出てきたのは

「Disability Child(障害児)」

というキーワード。
どうやら彼らが、児童養護の「脱施設化」への鍵となったようです。

イギリスでは1984年に、「障害児である」という理由だけで
子どもを施設に送ることを禁じる法律が制定されました

それ以前は、まさに今の日本と同様にイギリスでも、
問題行動の多い障害児たちは当然のように施設に送られていました。

また、当時の障害児たちは専用の学校(特別支援学校)に通っており、
多くの人たちのいるコミュニティに属するものではありませんでした。
そのために、人々に強い偏見がありました。

障害児=私たちの子どもとは違うもの。
異質なものは、「施設」に閉じ込めて別のコミュニティに属していて欲しい…

ところがそれが、いわゆる「インクルーシブ教育」の流れによって、
障害児も健常児と同じ学校に通うようになってから、
彼らに対する偏見が徐々に薄れていきました。

「障害がある子も、そうでない子も、等しく同じ教育を受ける権利がある」
「ならば、障害があるという理由で施設に送られ、家庭を奪うことも許されないのではないか?」
「どんな背景がある子どもたちであれ、私たちの仲間じゃないか!」

この流れが影響したのは実は、狭義の障害児だけに限りません。

障害児だけでなく、問題行動が多い「施設の子」が
自分の地域で暮らすことに抵抗を示す人々も多かった
ようですが、
この意識改革がすべてを変えていきます。

障害がある、貧困や虐待で育ちに問題がある…
そうした「異なる」存在を許容する社会へと進化する。

それが「施設」という枠組みから子どもたちを救い出し、
里親によって私たちに近い「家庭」と「地域」で暮らすことを可能にしていく。

まさに児童養護における改革は、
イギリスの人々の価値観の変化そのものだったのです。

翻って、我が国ではどうでしょうか。
何度も過去記事で取り上げている通り、児童相談所は

「子どもに障害がないかをを見極めるため」

として、乳児院で長期間に渡って子どもを養育します。
そして障害があると判断された子どもの大半は、
専門家がいる「施設」へと措置されていく運命にあります。

ここには実は、「自分たちの異質なもの」は閉じ込めておきたいという、
私たちの潜在意識が反映されているのではないでしょうか?

「障害児は、普通の家庭で暮らすことなんてできない」

と心のどこかで決めつけていて、そんな私たちの意志が
政策決定に影響を及ぼしているのかもしれません。

もちろん、障害児などのスペシャルニーズがある児童たちの養育困難は、
ルーモスの方々も認めるところであり、施設のすべてを否定するものではありません。

しかしそれでもなお、ルーモスは大半の子どもたちが
家庭環境で育てることができるという強い確信を持っているようです。

彼らがコンサルティングしたブルガリアでは、
スペシャルニーズに対応するために小規模施設・専門施設を
里親促進とともに整備して充実させていったものの、

障害児を含む大半の子どもたちが里親措置で対応できてしまったため、
幸か不幸か小規模施設が余ってしまうという事態が発生しているそうです。
(もちろん、手厚い里親支援体制があったことは言うまでもありませんが)

少なくとも乳児の段階においては施設の必要性はまったくなく、
今回訪問したドイツ・オランダ・イギリスのすべてで乳児院は完全に廃止されています。
日本はこの事実を、今以上に重く受け止める必要があります。

我が国における児童養護の「施設偏重」の要因を、
障害児と障害に対する偏見ということにつなげて捉えたことがなかったため、
サー・ロジャースが示した知見は非常に示唆に富むものでありました。

豊かな社会は、多様性を認めること。
施設という存在は、単一の価値観に閉じ込める象徴なのかもしれません。
※繰り返しになりますが、施設のすべてを否定するものではありません

我が国でも来年4月から「障害者差別解消法」が施行され、
健常者と同様に学校に通うインクルーシブ教育も増えていくことが予想されます。

一見なんのつながりもないように思えますが、
こうした障害者に対する差別の払拭からまた、
児童養護にも大きな変革が起こるかもしれませんね。

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サー・ロジャースを始めとするルーモスの方々、
本当にありがとうございました!

いよいよ最終日は、イギリス政府・当局の見解を伺い、日本に帰国します。
それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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