もっと、新しい日本をつくろう

若者に魅力的な「焼け跡リセット論」は、歴史学的に見るとリスクが大きすぎる件

日々のこと

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
本日はAMがオンラインサロンの勉強会、午後が政党主催の政治塾と、
座学が中心の日曜日となりました。安息日どこいった。

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オンラインサロン勉強会のゲスト講師は、
気鋭の若手歴史学者の呉座勇一さん。私の海城高校の先輩にもあたります。
(在学中は面識ありませんでしたが…)

「政治の勉強会なのに、歴史学者??」

と思う方もいるかもしれませんが、
政治を語る上で歴史を学ぶことは欠かせませんし、
実際にこれが本当に面白かった!!びっくりマーク2つ付けちゃうくらい。

「歴史から見る日本的革命とは?」

をテーマに講演・ディスカッションをしていただいたのですが、
その中で一つフォーカスされたのが「焼け跡リセット論」

これは、社会変革を成し遂げるためにはいったんすべてが崩壊して、
ゼロリセットをしてやり直す方が手っ取り早い、という理論です。
もちろん歴史学者が公式に使っている専門用語、ではありません(笑)。

これを戦前に提唱した一人が東洋史学者の内藤湖南という方で、

旧体制の徹底的な破壊の上にこそ、新時代は切り開かれる
→秩序崩壊が国家統一の原動力になる

と主張し、その論拠となっていたのは「応仁の乱」です。
少し日本史の授業を思い出してほしいのですが、応仁の乱は足利幕府末期に起こった
11年に及ぶ大騒乱で、これによって将軍家の権威を始めとする社会秩序はいったん崩壊しました。

簡単に言うと、このゼロリセットがあったからこそ
今日の日本の繁栄があるのであり、中国史を専門としていた内藤湖南氏は
1920年代に「中国にも、この『焼け跡リセット』が必要だ!」と唱えたのですね。

ここまでが、とりあえずの前提。

ここから何が興味深いかというと、内藤湖南氏は当初
明治維新をモデルとする「自発的革新」に期待していたものの、
後に応仁の乱をモデルとする「焼け跡リセット論」に傾斜していった
、という点です。

内藤湖南氏は1914年に「支那論」、10年後の1924年に「新支那論」を上梓したのですが、
中国(支那)は1911年~1912年に「辛亥革命」が起こり、社会変革のまっただ中だったわけです。

中国の専門家である内藤は当初、この辛亥革命を明治維新になぞらえて期待しますが、
待てど暮らせど明治維新のような社会刷新は起こらず、中国は混迷を極めていきます。
それに業を煮やした内藤は、

「もっともっと混乱をして、いっそ破たんをしてしまうべき」
「ゼロリセットして焼け野原になれば、そこからあるべき秩序が生まれるはず!」

という前述の主張へと転換していきます。
そして実際に中国は日本の介入を招き、更なる焼け野原状態に突入することになります。

確かに中国の秩序は目論見通り崩壊し、「焼け跡リセット」によって
戦後には共産党を中心とする新しい社会体制が確立しました。

しかしその「新時代」「新しい秩序」が中国の国民たちにとって果たして
幸福なことだったのでしょうか?天安門事件では多くの人民が犠牲になり、
いまだに独裁政権が敷かれている社会体制を見れば、大きな疑問と言えるでしょう。

また一方で、内藤湖南が高く評価する応仁の乱以後の日本はどうでしょうか?
一歩譲ってそれが日本の繁栄の礎になったのだとしても、国が秩序を取り戻し、
戦争のない世の中が訪れるまで100年以上の時が必要とされたのです。

ここから得られる教訓は、一体なんでしょうか?

内藤氏のような考え方は、当時の日本や中国に
少なからず存在していたものと考えられます。

そして現代の日本でも、
この「焼け跡リセット論」がくすぶり始めています。

「どうせ財政破綻するのなら、いっそ早くした方が良い」
「財政破綻や戦争で混乱して、今の格差がゼロリセットされて欲しい」

ジャーナリストの赤木智弘氏は、ストレートに「希望は戦争」という
過激な言説で一躍注目を集めましたし、橋下徹氏が掲げる

「グレートリセット」

という単語に、多くの人々が惹かれていることも
「焼け跡リセット論」への羨望と無関係ではないと思います。
特にこうした主張は、抑圧されてきた若い世代に特に魅力的です。

しかしながら歴史は、この「焼け跡リセット」に厳しい審判を下しています。
ゼロリセットの後に独裁国家が誕生するリスクは中国が証明し、

「一旦ぶち壊れてもらった方が、立て直しが早い」

という魅力的な見方についても、
応仁の乱後100年の歴史がNoを突き付けています

どれだけ今の社会に絶望しても、改善が期待できないように思えても、
それでも漸次的に、少しずつ社会を良くしていくことに勝るものはない。

本日の歴史講座は、そんな教訓を示唆してくれた気がします。

さらに今日は「では明治維新は、根本的な『革命』だったのか?」
という点についても、現在の安保法案をめぐる日本の現状と重ねて
非常に興味深いディスカッションが行われたのですが、これはまたの機会に紹介します。

いやー、こんな密度の濃い話が聞けるなんて、
このオンラインサロン勉強会は本当にお得です!
ということで、入会希望者はメール予約をオススメします(笑)。

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宇佐美典也とおときた駿の「あえて政治の話をしよう」
http://synapse.am/contents/monthly/usamiotokita

また日本史の勉強をしたくなってきました。
読書の秋に、時間を見つけてたくさんの書籍を読みたいと思います。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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