3月11日、東日本大震災から丸3年を迎えた朝。
王子駅前で街頭活動をしていた僕の元に、
わざわざ訪ねてきて下さった青年がいました。
「僕、ゲンの中学・高校の同級生なんです」
ゲンは、自分の大学時代の友人である。
そして今はもう、この世にいない。
■
大学3年生の終わり。
「日本を変える、すごいプロジェクトがあるんだ!」という友人の誘いで、
僕はとある企画に参画していました。その名も
「I love Japan プロジェクト」
銀座にビルを持っているという謎の人物がスポンサーになり
(いま考えても、あの人が何者だったのかよくわからない…)、
東京体育館を貸し切ってどでかい企画を打つ。
そこに全国から1万5千人の若者が集まり、
「なんだかでっかいこと」をやって、この日本を動かす。
いま思うと企画段階から曖昧模糊としたプロジェクトだったけど、
当時はそれなりに名の通った学生の企画屋たちが集まって、
「なんだかすごく熱くなるもの」
「集まった若者たちに、『日本を変えたい』と奮い立たせるもの」
を創るために、あーでもないこーでもないと
頭を悩まして侃々諤々の議論を繰り広げていました。
ゲンはその中で、とりわけ熱い想いを持った学生でした。
「このままじゃこの国はダメになる」
「いま、俺たちが変えなきゃいけないんだ!」
なぜ彼が、そこまで強い思いを抱くに至ったのか。
理由を聞いた気もするけれど…正直に言えば、すっかり忘れてしまいました。
空手の有段者で体格にも恵まれた彼は、
とても自信に満ち溢れているように見えました。
自分のことより、常に他人のことを考えて行動できる人物でした。
イベント本番は、2005年8月31日。
でも当時の僕は、チラつく大人たちの影やそのしがらみ、プロジェクト内の
意見の相違などにほとほと嫌気がさして、本格的な夏が来る前にメンバーから抜けていました。
早稲田祭の準備や仲間たちとの旅行に熱中し、
いつしかプロジェクトの仲間たちのことは忘れかけていました。
■
そして、ゲンが亡くなったことを聞いたのは、
夏の海外旅行から帰ってきた日のことでした。
お年寄りの親族以外に、初めて直面した友人の死。
しかも、自ら命を絶ったことに対して、感情を整理することはできませんでした。
「イベントに対する、プレッシャーから来る精神病で…」
そんな話は、とてもにわかには信じられませんでした。
何が彼をそこまで追い詰めていたのか。。
本当の理由は、もう誰にもわかりません。
ただ、「日本を変える」ために企画されたイベントで、
その想いを実現するために思い詰めた若者が命を落としたのだとしたら。
そこまでして一人の単なる大学生に、
「変えたい」
と思い詰めさせてしまうほどの社会というのは、
一体なんだったのだろう。何か、おかしいんじゃないか。
当時もそう思ったし、今もそう思います。
■
東日本大震災で、多くの人が亡くなりました。
異なる故人を重ねることは失礼かもしれないけれど、
残された人たちは亡くなった方々の
「忘れないで」
という想いを背負って、毎日を生きているのだと思います。
「ゲンの分まで生きてください…頼みます」
というゲンのお母さんの言葉は今でも耳の奥に残っていて、
きっと僕らの人生に大きな影響を及ぼしてる。
当時の仲間たちはもう30歳になって、きっとそれぞれのフィールドで
「日本を変えたい」というゲンの想いを実現するために頑張っています。
僕が今の立場にいることも、決してそれと無関係ではないだろう。
決してあの時のことを忘れることはなく、でも前を向いて進むこと。
地震がきても、津波がきてもビクともしない、誇りに満ちた人生を歩むこと。
それが、亡くなった方々へできる
残されたものたちの何よりの追悼ではないでしょうか。
東日本大震災から3年目のこの日に、
改めて被災者の皆さまに深い哀悼の意を捧げます。
そしてゲン。
さぼっててゴメンな。
こんど、きちんと墓参りにいくわ!
【当時の日記】
I LOVE JAPAN 8・31
http://otokita.seesaa.net/article/6433809.html
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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