こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
菅総裁候補が「不妊治療への保険適用」について言及したことが、かなり大きな波紋を広げています。まさか自民党の総裁選でこの政策が出てくるとは思っていなかったので、私自身もびっくりです。
菅氏「不妊治療に保険適用」 自民党総裁選演説会
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63565520Y0A900C2PP8000/?n_cid=SNSTW001
不妊治療への助成拡大・保険適用はどちらかと言えば左派・リベラルといわれる政党・政治家が熱心な政策で、ある意味で「自民党っぽくない」政策の一つです。
私は積極的に進めていく立場の人間ですが、これまで進んでこなかったのは当然に賛否両論や課題があるからなわけで、改めてそれらの点をまとめておきたいと思います。
参考過去記事:
「産みたいけど産めない」人への支援をどうするか?-東京都の不妊治療助成-(2014年4月)
https://otokitashun.com/blog/policy/3158/
高度不妊治療に保険を適用、STOP日本の少子化!(PoliPoli)
https://polipoli-web.com/projects/qZ1sl1GueyOsTyiJQREH/story
不妊治療は現在「自由診療」で保険適用外となっており、高額治療については行政が一定の条件下で助成金を出している状態です。
もちろん財源が無限であれば保険適用ができるに越したことはありませんが、医療保険財政はすでに火の車。
医療保険というのはそもそも、誰もが意思に関係なくかかる可能性のある病気に対して、それぞれが保険料を負担して成り立っているものなので、一部の人しか必要としない治療にこれを適用することには「受益と負担」の観点から根強い反対意見があります。
不妊治療への過度な保険適用拡大を行ってしまうと、後になっての適用縮小は非常に困難。
現実的には40歳だと90%以上、44歳だと98%以上の方は不妊治療を行っても子供を得る事はできない事の周知も必要。
医療の財源は限られているので、既にこの世にいる子供たちへの支援とのバランスをとる必要がある。 https://t.co/4JOR0NYQRV pic.twitter.com/qFEXOS786d— たぬきち(夫婦でHPVワクチン接種済) (@TOTB1984) September 8, 2020
加えて高齢になればなるほど、成功率が低くなる点もネックです。
命にかかわる治療ではなく、40歳を超えると成功率が1割を切る施術に対して、みんなが拠出している保険料をつぎ込んでいいの?という意見は当然に多く出てきます。
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こうした不妊治療に対する世界の対応はマチマチで、保険適用としているフランス・ドイツのような国もあれば、税方式や助成金で対応している国もあります。
(国会図書館作成の資料より)
それだけクリアな正解がない、難しい政策課題であるということでしょう。
最後は財源をどこにどう使うかという「決め」の問題であり、私は課題を踏まえて上でなお、少子化対策・将来世代への投資という観点から不妊治療は保険適用とすべきであると考えます。
ただそのためには、年齢や回数などで精緻な制度設計はもちろんのこと、そもそも高齢者負担も含めて改革が待ったなしである社会保険制度の抜本改革が必要不可欠です。
菅総理が誕生して不妊治療の保険適用が行われても、改革が先送りされるのであれば持続可能性や納得はありません。
その改革の推進力になれるのは、しがらみない立場から筋金入りで社会保障制度・社会保険制度の改革を訴えてきた我々しかいないでしょう。
総裁選の行方を注視しつつ、我々も政策提言を磨いてまいります。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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