こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
「安心できる監視国家」が安心できるという思考は本質的だ。すでに中国から途上国に拡散しており、権力者にとって統治の仕組みとして魅力が増している。
だからこそ、監視国家でない日本が新型コロナウイルスを克服する意味は大きい。我が国の社会の力が問われている。 https://t.co/nPKQerjiti
— 細野豪志 Goshi Hosono (@hosono_54) March 6, 2020
今日はアゴラ編集長・新田さんと細野代議士のやり取りが目に止まったので、今般の感染症対策等を契機に、中国の台頭と「デジタル・レーニン主義」について思うところをメモ書きしておきます。
「デジタル・レーニン主義」とは、デジタル技術を駆使して国民の情報を管理し、その行動まで規制していく強権的な政治思想・スタイルのことを指します。
レーニンとは言うまでもなく、あの一党独裁体制を確立した独裁者のパイオニアのことであり、まさにいま中国がゴリゴリと国策で推し進めているのがこの「デジタル・レーニン主義」と称される国家運営の手法です。
新型コロナ「“ゆるゆる”対策の日本は怖すぎる」在日中国人の不安 中国のガチぶりに比べると……
https://bunshun.jp/articles/-/36500
そもそも日本の新型感染症による死者は現時点でまだ6名にとどまり、「日本は甘い、何をやっている!」という論調そのものが、中国のプロパガンダだと思うのですが…それはさておき。
で、新田さんが引用した上記の記事で指摘されているように、10年前は「危険だ!」と衆目が一致していた中国のこのやり方が、羨望を浴びるようになってきています。
理由は、経済の繁栄を筆頭に結果を出してきているから(少なくとも、そう見えるから)です。
すでに2年前に、社会実業家である慎泰俊さんが「個人的には嫌だけど」と前置きをした上で、「民主主義と自由権はそろそろ終わるかもしれない」と、デジタル社会における中国スタイルの優位性と社会の変化を指摘し、個人的にもずっと危機感を覚えています。
参考:
民主主義と自由権はそろそろ終わるかもしれない(慎泰俊)
https://note.com/taejun/n/n894762122686
確かに慎さんが指摘するように、全量データからアルゴリズムを構築する技術が完成した現代では、独裁はとても効率的で相性が良い。
かつての共産主義者・社会主義者たちが夢見ながら、実現できなかったフラットでフェアな平等社会が、今度こそ実現できるかもしれないという期待感すら漂わせます。
■
しかしそれでも、「デジタル・レーニン主義」は、致命的な欠陥を克服できないはずです。
それは「明君がずっと明君であり続けるとは限らない」という歴史が示している永遠の課題であり、技術を駆使して国民を管理する統治者が暗君に堕ちた途端に、その国はトンデモないディストピアに突入していくでしょう。
それに国民が気づいた時には、技術による独裁・管理は生活のあらゆるところまで張り巡らされ、そこから再び自由主義を取り戻すことは極めて困難なものになるはずです。
もう一つは、根本的にそんな国家・権力者に箸の上げ下げまで管理される生活が、どんなに豊かでも「幸福」と言えるのか?という哲学的な問いです。
私は「選択の自由」を強く重視する価値観の持ち主です。間違ったとしても、自分で意思決定できる社会のほうが素晴らしい。どんなに苦しくても、自分の意思で人生を決めたい。
そして、どんなに優れた統治者であって、AIがどれだけ進化して統治者をサポートしても、(少なくとも当面の間は)人間は間違いを犯します。
だからこそ、何か間違いが起きた時に「自分たちで決めたことだから、仕方ない」と納得できる社会であってほしいと、私は心から思っています。
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ポピュリストが陰謀論と全員検査を主張し、メディアが間違った情報を煽り、民衆がトイレットペーパーを買い占める光景を見ると、ため息をつきたくなることはあります。
それでも、各々が自由で行動できる社会の方が素晴らしい。
ただそれは、上記のような行動を容認するわけではありません。そんな人々の行動が目につくようになればなるほど、理性的な人たちはどんどん「デジタル・レーニン主義」に惹かれていきます。
そしていずれ、「知的な独裁」を支持する人が過半数を超えた時、日本は自由と民主主義を手放す選択をしてしまうかもしれません。
そうならないためにこそ、私たちは努力をする。
自由と民主主義の中で、理性を保ち、社会を良い方向に導けるのだということを証明したい。
日本は今まさに、21世紀の「東西冷戦」の最前線に立っているのかもしれません。
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私は中国式のやり方が、いつまでも上手くいくとは思いません。習近平体制は盤石に見えるけど、その次は果たしてどうなるのか。
中国の歴史を見ても、明君による繁栄から転がるように転落していった国家体制はいくつもあります。
ただその転調の時期が、いつくるのかはわからない。
「明るい北朝鮮」と言われるシンガポールは、リー・クアンユーなき今でも堅調な成長を維持しています。その間にも、デジタル・レーニン主義の魅力が世界を席巻していく。
前回の東西冷戦は、約40年間続きました。今回の闘いも、2050年くらいまで続くのかもしれません。
自由とは、幸福とは、社会が目指すべきものとは。
改めて私も、皆さまととともに色々と考えていきたいと思います。
それでは、また明日
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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