こんばんは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
私が都民ファーストの会を離党して、20日間が経過を致しました。
この間に衆院選も終わりましたので、本日は目下のところ都政における最大の課題となっている「豊洲市場移転問題」について、これまでの私の政治的判断を総括させていただきたいと思います。
小池百合子知事が事実上率いる「都民ファーストの会」という組織の一員として、本件については思い悩みながらも、その時折で自分なりの最適と思える行動を取ってきました。
しかしながら、最終的に自分自身が都民ファーストの会を離党する運びとなり、移転の道筋にも多くの課題が立ちはだかっている現状を見れば、私の政治判断や行動にミスがあったことは疑いありません。
この点を真摯に認め、影響を与えた関係者・市場業者の方々、何より都民の皆さまには深くお詫び申し上げたいと思います。
誠に申し訳ありませんでした。
そしてこの反省を今後の行動へとつなげていくために、これまでの経緯の振り返り・ご説明からさせていただきたく思います。
市場移転に対するスタンスの変遷
私自身は市場移転の延期が決定してから一貫して、
「築地再整備は極めて困難。最終的には豊洲への移転しかありえない」
という考えでしたし、移転延期の当初からそのようにブログや各種メディアで主張してきました。
市場移転問題についての過去記事一覧:
http://otokitashun.com/tag/%E7%AF%89%E5%9C%B0%E7%A7%BB%E8%BB%A2%E5%95%8F%E9%A1%8C/
「あるはずの盛土がなかった」などのガバナンスの不徹底や、建設費の高騰・入札に対する疑惑などは徹底的に追及するが、最終的な結論としては豊洲へ移転。
この現実的な方向性で、小池知事やその周辺(一部のブレーンを除く)も考えられていたと思いますし、実際のところ、ある時期まで私のこうした主張が咎められることは一切ありませんでした。
流れが明白に変わったのは、年明けの地下水調査で「ベンゼン79倍」という数字が出たあたりからです。
この結果と世間のリアクションから、小池知事の中で「築地残留・再整備」という選択肢が現実化してきたのではないかと思います。
「豊洲に移転をしない可能性もある。豊洲移転が前提のような情報発信や議会質問は控えるように」
との指示が組織の中から出されるようになり、私自身も逡巡します。
しかしながら、科学的には安全なのだし、築地再整備の困難さを考えれば、判断に時間がかかったとしても最終的には知事の決断は「豊洲移転」になるはずだ…
私はここで折衷案として、対外的には「豊洲市場は安全ではあるが、まだ安心かどうかがわからない」という玉虫色のスタンスを取りながら、組織内部で速やかな豊洲移転決定に向けて働きかけていく道を選びました。
しかしながらこれが、結果的には豊洲地区の風評被害の片棒を担いだという事実は否定することはできません。
「豊洲移転白紙撤回」という選択肢は止められた…?
世論が過熱し、また都議選が迫るに連れて、小池知事の中では「豊洲移転の白紙撤回」という選択肢が、どんどん大きくなっていっているように感じました。
小池知事のブレーン機関である市場問題PTでは、築地再整備に偏重気味の議論が行われ、小島座長による突然の「私案」発表は関係者たちに大きな衝撃を与えました。
加えて、「都議選までには移転の是非を決めるべきではない」という論調も、組織の中で高まっていました。これは完全に、「移転派と残留派、両方の票を取る」という選挙戦略に他なりません。
こうした流れの中で、ブログやメディアでの発信内容についても、豊洲移転に関わる内容についてはますます厳しい注文が入るようになっていきます(けっこう強気に無視してましたけど)(それが後に疎まれる要因になる)。
豊洲市場問題特別委員会、百条委員会と委員を歴任し、この問題に誰よりもコミットしてきた私は、こうした動きにどう抗うべきか必死に考えました。
豊洲市場移転が頓挫することだけは、なんとしても避けなければならない。抗議の意を示して組織を離れることは簡単だが、果たしてそれでこの問題が前に進むのか…?
悩んだ末に、私は組織の中から、
1.築地残留はありえない。豊洲への移転を決断すべき
2.そして都民に誠実に向き合うために、その決断は都議選前に行うべき
3.仮に知事が現実的でない選択をするのであれば、そのときは離党も辞さない
という声をあげ続ける道を選び、知事に対しても1、2点目についてはその主旨を直接申し上げました。
こればかりは、最終的にどのような力学があったのかはわかりません。
しかしながら、こうした私の動きは知事およびそのブレーンたちが「築地残留」へと突き進むことに対して、一定の歯止めをかける効果はあったと思いますし、そう信じたいというのが本音です。
政治に100点満点はない?基本方針による「一歩前進」
最終的に小池知事は「都議選前に結論を出す」と私を含む都議たちに約束し、実際に都議選前に「築地を守る、豊洲を活かす」という結論が下されました。
豊洲への完全移転を主張していた私にとっては、築地にも市場機能を残して再開発をするという方針は寝耳に水でした。
しかし一方で「中央卸売市場は豊洲」と明言されており、確かにその主張も内包されている…。
大きく意見が割れる政治イシューについては、100点満点の結論というのはなかなか出ないのが政治の世界です。
自分とほぼ同じ方向性で豊洲市場への移転を主張していた都議会公明党も、この知事の結論については一定の評価をし、受け入れる姿勢を表明しました。
私も、この知事の基本方針を現実的なものに落とし込むことがこれからの役割であろうと考え、これを受け入れて前に進むことを決断しました。
しかしながら、今の築地再開発検討会議に対する知事の姿勢などを見れば、果たしてこの基本方針は貫徹できるのか。あの時点で他に、できることがあったのではないか…という思いは拭えません。
この基本方針は都議選でオーソライズされ、都民から一定の信託を受けているものでありますが、その実現可能性については不断の検証を続け、場合によっては見直しの検討もしなければならないと感じています。
百条委員会には意義があったものの…
また、都民ファーストの会を離党するにあたって、
「ならば、百条委員会の実施自体が誤りであったことを認めるべきだ」
「石原元知事と浜渦副知事に謝罪しなさい!」
というご意見をいただきましたので、これについても一言、見解を述べたいと思います。
繰り返しになりますが、私自身は当初から豊洲への移転を推進する立場ではあるものの、それでも豊洲移転のプロセスに重大な瑕疵がいくつもある以上、その経過を明らかにし、取りうる対策を検討しながら丁寧に移転決着を図っていく手法に対しては賛同していました。
そのため、様々なご意見を頂いてはいますが、百条委員会に石原元知事や浜渦元副知事を召致したことについては間違っていないと思っています。
都庁の職員にも共有されていなかったことが、水面下の密約のような形で進んでしまう。極めて不透明な実態があったことを掘り起こした点については、意義はあったと思います。
具体的には、ダンボール169箱に及ぶ資料の読み込みや証人尋問によって、移転先の選定にあたっては、都庁内ですら共有されていない「確認書」の存在が明らかになるなど、そのガバナンスの問題が詳らかになりました。
過去記事:明らかになった16年前の真実。浜渦副知事らが締結した、「隠された確認書」が示すもの
http://otokitashun.com/blog/daily/14618/
確かに今回の百条委員会の範疇では、法的な瑕疵は発見されませんでしたが、移転における意思決定においてガバナンスの不備があったことは事実です。
当時の責任者である石原知事・浜渦副知事には、これについて一定の政治的責任・道義的責任があります。
また、浜渦副知事は残念ながら証人尋問の場で事実と異なる証言を故意にされましたので、偽証罪に問うことも妥当だと考えます。
ただ、その一方で。
石原知事らに対して「なぜ豊洲だったのか」という点を、百条委員会を開催するほど厳しく問うたのであれば、現知事に対してもまた、「なぜ豊洲と築地、両方だったのか」というその意思決定プロセスは厳格に問わなければなりません。
つまり、「最終的な政策判断は頭の中にしかない」という旨を述べた小池知事の「AI発言」が許容されるのであれば、石原・浜渦両氏の決定もまた、政策決定なので「頭の中で」あるいは「水面下で」決めて問題ないとして、許容されるべきだという考え方が成立します。
この点において、基本方針が発表された直後や、あるいは方針決定の過程に文書などの記録が一切ないことが判明した時点で、百条委員会で最前線に立った私は声を上げなければいけない立場でした。
当時の私は、まだ組織の中で課題を解決させていくことを選択しており、このダブルスタンダードに気づきながらも、適切な対応を取りませんでした。
また、臨時議会における委員会質疑においても、組織の方針とはいえ、現知事の手法を庇うような質疑を行いました。
いかなる理由があれ、こうしたダブルスタンダードな政治的姿勢を取った事実については、極めて不適切であったことを石原元知事や浜渦元副知事、そしてすべての皆さまに深くお詫びいたします。
誠に申し訳ありませんでした。
■
以上、まだまだ総括の足りない部分がありますし、様々なご指摘・ご批判があると思います。
長文になりますので本日は一旦これで区切りますが、今後も市場移転問題については折に触れて省み、その解決まで真摯に取り組んでいくことが、信頼を取り戻すために必要であろうと考えています。
議員報酬の一部は、風評被害対策のために寄付
また、これで贖罪になると考えているわけではないものの、今回の政治的判断の過ちに対する自分なりのけじめとして、議員報酬の一部(約2割)を三ヶ月間返上いたします。
もう少し詳しく申し上げますと、制度的に「返上」ということができないので、その金額相当を豊洲市場並びに豊洲地区の「風評被害対策」に資する活動や団体に寄付することを予定しています。
また寄付先などの詳細が決まりましたら、必ずブログやSNS等でご報告させていただきます。
■
あの時、どのような判断をするのがベストだったのか。どうすれば、私の立場で豊洲市場移転問題を解決することが可能だったのか。
正直なところ、今もって私にはわかりません。
しかしながら、その判断で生じたことには説明責任と結果責任を認め、
「過ちては改むるに憚ること勿れ」
の精神を忘れずに、今後も政治家として邁進していきたい。ミスを挽回し、信頼を取り戻していきたい。
甚だ未熟な私ではありますが、今後とも厳しいご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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