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豊洲市場問題、石原慎太郎氏の責任を再検証。住民訴訟の仕組みと今後の展開は?

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

本日の記者会見で、小池知事が大きな都政の方針転換を表明しました。

小池知事、石原氏の責任「検証し直す」 豊洲巡る訴訟
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFB20H8F_Q7A120C1000000/

都は2012年は起こされた、

「都は石原慎太郎元知事に対して、豊洲市場の土地買取りで被った損失を請求するべし」

とい内容の住民訴訟に対して、「石原慎太郎氏には責任はない」という立場を堅持してきましたが、その対応について再度の検証を行うというものです。

さて、そもそもこの「住民訴訟」ってなんでしょうか?

まず当該の地方公共団体に住む住民(東京都では言えば都民)は、その地方公共団体の支出に不当なものがあったと判断した場合、監査委員に対してその是正を求める「住民監査請求」を出すことができます。

そして地方公共団体の監査委員はその請求内容を審査し、対応の可否を決定します。わかりやすい例として、最近では舛添前知事の公用車不正使用に対して住民監査請求が行われました。

都知事選挙の陰で、ひっそりと舛添前知事の「公用車不正使用」返還請求が却下されている件…
http://otokitashun.com/blog/daily/12090/

このケースでは、

●湯河原への公用車使用は不適切とまでは言えないので、住民監査請求を却下
●コンサートや野球観戦への使用は不適切なので、舛添氏に相当額の返金を求める

という判断が下されました。この監査委員の決定に従い、都は後者のみ舛添氏に返金を求める対応を行ったわけですね。

で、この監査委員の判断に不服がある場合、さらに住民は「訴訟」を起こして争うことができます。ここで初めて裁判所が介入してくることになり、今回のような住民訴訟に発展します。

上記の例で言えば、住民が監査委員の決定を良しとせずに「いや、舛添知事は湯河原への往復料金も、都に対して返すべきだ!」と考えれば、住民訴訟を起こすことができます。

大事な点としては、少しわかりにくいのですが、住民たちは自分たちが住んでいる公共団体である東京都に対して、「舛添知事から、我々の納めた税金を取り返せ!」という訴訟を起こすところで、舛添知事を直接訴えるわけではないのがポイントです。

そして都は、自分たちが設置している監査委員の判断を尊重しますから、基本的には「舛添知事に対して、お金を返すように請求するのは適切ではない」という態度を取り、訴訟について争うことになります。

訴訟を起こした都民 VS 東京都

という構図で裁判が争われ、東京都がこれに敗北した場合に初めて、都は都民の税金を取り返すために当該の責任者(この場合は舛添氏)に対してアクションを起こします。

前置きが長くなりましたが今回、知事が対応見直し検討を発表した住民訴訟はどんなものでしょうか。

石原慎太郎氏が知事であった当時、東京都は東京ガスから豊洲新市場の建設地となる土地を購入したのですが、その価格が不当だったではないか?というのが係争のポイントです。

具体的には、東京ガス跡地には深刻な土壌汚染があったにもかかわらず、東京都は「汚染されていない土地の値段」で購入した=不当に高い価格で購入したと指摘されています。この差額分は都税の損失であり、石原慎太郎氏はその損失を都民に返金する義務があるという主張です。

まず行われた住民監査請求に対して、当時の監査委員たちは「請求人の主張には理由がない」として却下しています。

中央卸売市場築地市場の移転予定地の取得に係る一連の財務会計行為を 違法・不当として都が被った損害を都知事に請求するよう求める 住民監査請求の監査結果について
http://www.kansa.metro.tokyo.jp/08jumin/24jumin.html#1

16枚に渡る監査結果本文はなかなか読み応えがありますが、都は定められたルールに則って手続きを進めており、東京ガス側にも土壌汚染対策費として78億円を出させたのだから、不当に高い金額を払ったとはいえない等の理由が書いてあります。

これを不服とした住民側が訴訟に踏み切り、手続きは適性であり、石原慎太郎氏に責任はないとする東京都と争うことになりました。

今回の小池知事の「見直しを検討」というのは、これまで21回行われた公判において前述の通り一貫して都が主張してきた、「石原慎太郎氏に責任はなかった」とする都の姿勢が果たして正しかったのかどうか、弁護人などを変えて再検証するというものです。

仮に方向性の転換が行われれば、

訴訟を起こした都民 VS 東京都

という構図に変化が起こる可能性もあります。なお、少し古いものですが、住民訴訟で勝訴した例には以下のものがあることを全国市民オンブズマン連絡会議が以下のようにまとめています。

住民訴訟はどんな役割を果たして来たか 住民訴訟の勝訴判決リスト
http://www.jkcc.gr.jp/data/00068.html

今回、住民訴訟に対して再検証を行うという小池知事の判断は意表をついたものであり、驚かれた方も多いと思いますが、目指しているのは以前から主張していた「石原慎太郎氏に説明責任を果たしていただくこと」であり、その姿勢は一貫しています。

強制力のない知事・行政サイドからの「依頼」では、石原慎太郎氏が行動を起こしてもらえない以上、こうした手段を使って責任を検証していくことも一つの手段ではないかと思います。

公開での意見聴取を拒否し、文書においても誠意ある回答をしているとは言い難い石原慎太郎氏は、一刻も早く適切な対応を行う必要があります。

住民訴訟の再検証に加えて、議会側からも特別委員会や百条委員会への参考人招致という声も上がっており、もはやこのまま逃げ切ることはできません。

訴訟内容の再検証を注視するとともに、なんらか動きがあった際には議会側でも対応できるよう、準備・調査を進めておきたいと思います。

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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