日本では多くの人が選挙に行きません。
地方選挙では、下手したら6割以上の人が行かないことすらあります。
民主主義国家なのに。
自分たちのことを、自分たちで決める、大事な選挙なのに。
どうしてでしょうね?
「よくわからなくて、めんどうくさいから」
色んな言い訳があっても、だいたいこの言葉に
その理由の八割くらいが集約されている気がします。
そんな人たちには、どういう言葉で説得したらいいのでしょう?
「行かないと、自分たちが損をすることになる」
これは、それなりに説得力のある戒めです。
だからこそ、高齢者の投票率は若者のそれに対して格段に高い。
でも、今は政治なんかの保護に頼ることなく、
毎日を楽しく生きる若者の心には届きません。
「民主主義は、先人たちが血を流して勝ち取ってきた、貴い制度だ」
「昔の人は、選挙に行きたくても行くことができなかった」
そんな高尚な理念で攻めてみるのはどうだろう。
でもここで、民主主義の根幹にぶち当たります。
そもそもみんな、政治に参加したい(選挙したい)んでしょうか?
■
民主主義にまつわる、3つの歴史を見てみましょう。
古代ローマでは貴族の圧政に苦しむ人々が貴族制を打倒し、
世界最古の民主主義制度を築きました。しかしその後、三頭政治や
カエサルの独裁を経て、アウグストゥスをもってローマは帝政へと移行します。
近代フランスでも、重税に苦しむ大衆の不満が引き金となってフランス革命が起こりました。
しかしその後、革命の指導者たちが先鋭化し粛清の嵐が吹き荒れ、社会は不安定になりました。
そこに颯爽と登場したナポレオンは圧倒的な支持を得て、ほどなくしてフランスは帝政になります。
第一次世界大戦後のドイツは、世界で最も民主的な憲法を持っていましたが、
戦争によって負った賠償金で国の経済はガタガタ、プライドはズタズタになりました。
そんな中で台頭したヒトラーを民衆は諸手を上げて迎え、ドイツはファシズムを体現します。
いずれの例でも民主主義がもたらしたのは
安寧や理想の社会ではなく、新たな帝王や独裁でした。
しかもそれは、「民主的な」選択によって選ばれたのです。
このことから論理的に導き出される帰結はずばり、
民衆は民主主義など求めていない、政治になんかできれば関わりたくないということです。
ローマの民主政もフランス革命も、
圧政に苦しむ人がそこからの解放を求めて始まっただけで、
何も「政治に参加したかった」わけではなかったのです。彼らはただただ、
「今よりもっとマシな暮らし」
を求めていただけなのです。
だから同じ理由で、帝政や独裁へとまた回帰していきました。
したがって、
「民衆は本来政治に参加したいと思っているはずだし、参加するべきだ」
「そのために歴史上多くの血が流れ、民主主義はその犠牲の上に立っている貴い制度だ」
というロジックはまったく成り立たないどころか、
むしろ民衆が選挙を忌避することさえ納得できてしまうのです。
そう考えると、投票率が低いことは寿ぐべきことかもしれません。
民衆は
「マシな暮らし」
ができている限り、政治になど関心は持たないのです。
つまり、投票率が低いことは、社会が安定していることの裏返しなのかもしれません。
■
それでも僕は、今の現状を看過する立場に与しません。
選挙には行くべきだし、政治にはもっと参加するべきです。
民主主義は我々に安寧も理想ももたらさなかったけれど、
それでも世界がこのシステムを採用したのには理由があります。
誕生以来何千年かけて人類が学んだ最新最強の知見は、
一部のエリートたちが起こすシステム・クラッシュよりも、
愚かにも少しずつ損をする民主主義の方がよっぽどマシということです。
民主主義下で民衆の関心が政治から遠ざかることで、
この社会はゆっくりと劣化していきます。恐らく、破綻は突然訪れるでしょう。
その時、大衆は独裁を望み、そこにはもれなく戦争と混乱が付いてきます。
戦争や混乱を望む人など多くないはずです。
しかし何度も、何度も、歴史の中でこうした流れが繰り返されてきました。
そんな中でも。
今度こそ、同じことは起こらない!
今の日本人の教養レベルと、現代のIT技術を持ってすれば、
民主主義は次なるステージに必ず辿り着ける!
そう信じて、信じて、愚直に政治参加を訴え続けることだけが、
政治の道を志したもののレゾンデートル(存在意義)なのだと、僕は思います。
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だから最後に、しつこいようでも
(そして伝えたい層はこんなコラムを読まないんだけども)
「よくわからなくて、めんどうくさいから」
選挙に行かない将来世代の仲間たちへ。
「行かないと、自分たちが損をすることになる」
ことに薄々気づきながら、選挙を忌避する若者たちへ。
いま選挙に行っていなくても、
「学生時代にもっと勉強しておけばよかった」
なんて後悔をしている人はいると思います。
そうした後悔と、選挙に行かないことで被る損害は
まったく別次元のものであることをお伝えしておきたい。
あなたが「勉強しなかった」ことで被る被害は自分だけのものですが、
選挙に行かないことで被る被害は同世代全員、そして将来世代にまで渡る大損害です。
自分たちの子どもや孫にまで、ツケを包装して贈呈する明白な選択ミスです。
民主主義は、恐ろしいシステムです。
政治家は、みんなの代表ではありません。
政治家は、選挙に行く人たちの代表です。
1票では、何も変わらないと思わないでください。
1票でしか、この社会は変わらないのです。
なぜなら、日本が民主主義だからです。
入れたい人がいないかもしれません。
選びたい政治家がいないかもしれません。
それでも、もうちょっとだけ辛抱して、選挙に行き続けて下さい。
その「選びたい政治家」が一人でも多くなるように、
僕も牛歩の歩みながら、研鑽を積んでいきたいと思います。
少しでも早く、前へ。前へ!
■
というわけで皆さま、明けましておめでとうございます!(遅っ)
今年の決意表明も兼ねた新年一発目のコラムですが、
なんだか重たくてゴメンナサイ。
ここまでお付き合いくださった皆さま、ありがとうございます。
本年も本コラム及びオトキタシュンを、どうぞ宜しくお願い致します!
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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