前回から凄まじく更新が空いてしまいました。
楽しみにしてくれてる(数少ない?)読者の皆さまゴメンナサイ。
さて、書こう書こうと思って旬を過ぎてしまったのですが、
先月ニュースを賑わせたこちらの話題を取り上げたいと思います。
ヒップホップに指導資格 中学のダンス必修化で
http://bit.ly/HXJ5Ed
この報道を初めて見たときの怒りは、今も忘れることができません。
書いてて思い出しムカつきをしているくらいです(苦笑)。
実は僕はこう見えてStreet Dancerの端くれなので、
ダンスというもの自体に思い入れがあります。
「ダンス」という創造的な芸術に「資格」を設けることも、もちろん疑問です。
ですが怒りの最大の理由は、この「国主導による資格(免許)の新設」が
典型的な天下り構造に他ならないからです。
※
「これは国家資格ではない」というご指摘がありましたので、
「国による資格」→「国主導による資格」に訂正いたしました。
国家資格でなくても、誘導施策であることは間違いないと思います。
–
最初の武道と共にダンスが必修化になることが話題になったのは、
たしか自民党の安倍政権の時だったと記憶しています。
「武道はわかるけど、なんでダンス?それもよりによって、ヒップホップなんて…」
という疑問はずっと持っていましたが、
4月18日のこの資格新設発表を持って、僕の疑問は完全に氷解しました。
すべては、官僚たちが新しい天下り先を確保するための、
周到に準備された計画だったのです。安易な陰謀論は好きではありませんが、
これはほぼ間違いないと思います。
この資格の新設で事実上、ダンスを教える公立学校の教師は
高い受験料と更新料を払ってこの資格を取らざる得なくなります。
(検定料2万5千円、更新料が年間1万2千円!)
そうなると、この資格と多額の資金を管理運営する団体が必要になります。
というわけで登場したのが
一般社団法人「ワールドリズムダンス技能協会」
http://www.worldrhythmdance.jp/
設立は2012年1月。
いかにも「この資格のために創設された」団体です(厚生労働省外郭団体の模様)。
こんな実績も何もない団体が、ダンスの資格を与えて管理するというのです。
もっとも官僚にとって見れば、インストラクターの質や実績などどうでもいいのでしょう。
この団体に、第一線を外れた官僚OBたちを送り込めればそれで一丁上がり。
多額の資金と官僚OBが流れこむ、天下り団体の完成というわけです。
そして、掲題の疑問に戻ります。
「どうしてヒップホップだったのか?」
これも、天下り団体創設のためだったと考えれば話しは単純です。
結論から言うと、ヒップホップ(ストリートダンス)というジャンルが
「政治力が弱い」「権威がまだない」からです。
例えば子どもの創造性や感受性を高めるために
日本舞踊や日本の伝統的踊り(阿波踊りやよさこい踊り)の
導入を計画したとします。
こうなれば、大議論は必死です。
どれを導入するか?
導入するとして、誰が教えるのか?
どの流派を、どんな割合で導入するか?
上記のような「伝統のある」芸術分野は歴史がありますし、
「その道の大家」「研究者」と呼ばれる人たちが沢山います。
これを教育課程に導入するとなれば、
「ちょっと待て、俺にも一言いわせろ」
「◯◯先生を差し置いて、この話しは進められないだろう」
という論客や権威者が出てくることは容易に想像できます。
つまり、「とってもめんどくさい」のです。
ところが、まだ若いカルチャーであるヒップホップには
悲しいことにこうした「権威」や「伝統」がまだありません。
そもそも「ヒップホップ」自体を正確に理解している人も少数でしょう。
もちろん「有名ダンサー」はいるにはいますが、
世間一般から見ればマニアックの領域を出ません。
日本舞踊や伝統的踊りのように、
「政治や教育に物申せる」ような論理や権威が
ヒップホップなどのストリートダンスにはまだないのが実情なのです。
狡猾な官僚たちは、ここに目をつけました。
そして、その選択は大正解でした。
僕たち国民は
「どうしてヒップホップダンスなんだろう?」
という疑問をどこかで持ちながら、
「よくわからない」ままで見事にスルーをしてしまったのです。
–
官僚がその構造から、天下り先確保(自己増殖)のために
行動せざる得ないことは4月上旬の記事で述べました。
官僚と天下りの甘くない関係
http://www.junkstage.com/syun/?p=232
官僚組織が国家を支える最も大事な機能である、
「教育」にここまであからさまに手を突っ込んだこと。
橋下市長の教育改革を
「政治が教育に干渉するなんて、とんでもない!」
「教育がポピュリズムに侵される!」
と批判する識者は数多くいますが、
では官僚たちの干渉は見過ごして良いのでしょうか。
国民の審判を受けない官僚の暴走の方が、
はるかに由々しき事態だと僕は思います。
そしてこの問題は、官僚組織だけの問題にとどまりません。
4月18日にワールドリズムダンス技能協会が自ら発表を行うまで、
マスコミは一切この資格新設の動きを報道しませんでした。
年初からダンス必修化が話題にはなっていましたが、
「中年のダンス教師が習得に苦戦」
「子どもの方が飲み込みが早く、評価が大変」
というレベルの報道ばかりであり、
肝心要のこの資格については一切触れられてなかったのです。
また、官僚(行政)を監視する立場である政治家(国会議員)たちも
722名も雁首を揃えながらこの官僚の動きを事前に一切キャッチしていません。
これははっきり言って、異常な事態だと思います。
そしてこの理由には、2つのシナリオが考えられます。
1つめは、日本のマスコミや政治家は本当に無能なので、
こうした動きをマジで知らなかった、キャッチできなかったケースです。
ワールドリズムダンス技能協会は実際に1月に設立されているわけですから、
これだけカネとヒトが動く物事を本気で見過ごしていたとすれば、
マスコミも政治家もかなりの末期症状ということになります。
2つめは、なんらかの事情でマスコミや政治家が
国民にこの事実を「敢えて知らせなかった」ケースです。
このシナリオでは、政官マスコミは完全に癒着しています。
官僚の天下りを見過ごすことで、マスコミや政治家もそこから
なんらかの利益を享受しているということでしょう。
どちらのシナリオであったとしても、
日本の現状はとても暗いものであることは間違いなさそうです。
–
改革が必要なのは、官僚組織だけではないのです。
マスコミも、政治の世界も、およそ正常に機能しているものを
見つけるのが難しいくらいな今のニッポン。
それでも諦めずに前に進むのがわれわれ若者の責務だと思うのだけど、
さすがに何がなんだかなぁ…と思った4月なのでした。
とはいえ5月病にも負けず、今月も日本を良くするために頑張りますよ!
引き続き応援とご愛読、よろしくおねがいしまーす。
(まずはコラムを毎週更新しようね)(はい)
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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