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AKB総選挙!…ところで選挙って何ですか?

政治コラム

今週は週末のワイドショーに至るまで、
水曜日に結果の出たAKB総選挙一色でしたね!
まあ僕、テレビあんま見ないんで適当に言ってるだけですけど。←

んでこれを天下の日経新聞まで取り上げたので、
政治周りの世界でもちょっとした話題(?)になったようで。

バカバカしくないAKBの総選挙
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO42302970X00C12A6000000/

日経新聞は「世代交代」という点にフォーカスして記事を書いていますが、
僕もせっかくなので選挙にこじつけてなんか書きたいと思います。

この企画の何が凄いって、「選挙」という言葉を
ここまでセンセーショナルに使いこなしたことでしょう。
これに対して、

「1人で何票も投票できるんだから、選挙じゃない!」

という意見が多く聞かれますので、
ココらへんを切り口に選挙制度を見てみましょう。
とかく日本人は「一人一票!」という固定観念がありますからね。

■多数代表制と比例代表制

そもそも選挙とは主に投票を用いて代表や役員などを選び出す行為ですが、
これには凄いざっくり言うと制度的に二種類しかありません。
「多数代表制」と「比例代表制」です。

日本では、衆議院選挙がわかりやすいですね。

・自分の選挙区(小選挙区)で候補者個人に投票し、定数(1名)が当選する制度
・政党名を投票して、得票数に比例して政党から当選者が出る制度

が併用されています。
前者が「多数代表制」で後者が「比例代表制」です。

じゃあこの「多数」と「比例」ってなんじゃらほい?
何に対して「多数」や「比例」なんでしょうか??

結論から言うと、
多数とは「大多数」「多数決」の多数で、
比例は「民意と比例する」という意味の比例です。

解説しましょう。

まず多数代表制。
日本では「小選挙区制度」として定着していますが、
選挙区で個人名に投票する制度では、当選者が決まると当然他の候補者は落選します。

たとえ100万1票 対 100万票 であろうとも、
定数が1なら当選者は前者の1名だけであり、後者の
100万票の民意は「無」となります(これを死票という)。

この根底に流れる思想は「多数決の原理」です。
民主主義とは、「多数決」だ!数が多い方が勝ちを「総取り」し、世間の意見を代表する!
まあ『弱肉強食』に近いのがこの考え方です。

翻って比例代表は御存知の通り、政党単位で投票させて
その票数に比例させて議席数を各政党に割り振っていきます。

かなりの票数を取る政党があっても、すべてを総取りできるわけではありません。
逆に言えば小政党でも、それなりの議席数を確保することができます。
これにより、世論を鏡のように「比例した」当選者を選出することができます。

こちらの考え方の基調となっているのは、
少数の意見を汲み取ってこその民主主義!」というものでしょう。
多数決が弱肉強食なら、こちらは『多様性重視』とでも言いましょうか。

単なるテクニカルな違いではなく、この2つの制度には民主主義の根幹にも関わる
天と地ほどの隔たりがある思想・哲学が内包されているのです。

さて、ちょっと強引にAKBの話しに戻りましょう。
では選挙とは、常に1人1票なのでしょうか?

そうとは限りません。

多数代表制においては、
定数(当選者の数)が2以上の場合は定数分だけ有権者が票を持っている
大選挙区・完全連記制という制度があります。

日本の衆議院選挙はいま「小選挙区制度」といって
当選者は1人なので、有権者は1票でまあこれは普通です。

アメリカやイギリスではこの選挙制度で
国から地方までほぼすべての選挙が一本化されています。

ですが日本の場合、地方議員の選挙では自分の選挙区の定数は3だったり4だったり、
市・区議会レベルにいたっては20だったり40だったりします(!)。

でも、有権者は1人1票しか持ってない。
するとどうなるか?

数百票レベルの争いでポっと出の候補者が当選したり、
支持政党に入れようにも政党から4、5人候補者が出ているもんで
決め手がなくて最後は適当に投票してみたり…。

地方議会の選挙に関しては「何かおかしくね?」と感じている方は
少なくないと思うんですが、はっきり言っておかしいです。

今の地方議会の選挙制度では「多数決」にもなっていなければ、
民意を比例して吸い上げる「政党政治」にもなっていません。

このため大選挙区を用いる海外では、定数毎に有権者に票数があるのがスタンダードです。
定数が3の選挙区なら、有権者は3人に投票することができます。
この場合は、どうなるでしょう。

政党側は、きっちり3人枠には3名ずつの候補者を立ててきます。
ガチガチの支持政党がある方は当然その3名に投票するので、
政党政治も機能します。

また、曖昧な支持をしている人は「A党の候補者2名と、B党の候補者1名に」
という選択も可能であり、「勝者総取り」になる多数代表制の欠点を多少解消した、
比例代表制との折衷案のような制度にもなるのです。

これが多数代表制における「大選挙区・完全連記制」です。

ただ、折衷案のようでどっちつかずなのが嫌われるのか、
こうした大選挙区制度をとっている国はそれほど多くありません。

しかしながら、そこではほぼ例外なくなんらかの連記制がとられており、
定数が2以上なのに1票しかない日本は世界から見ると相当に「異常」なようです。

そんなわけで、AKB総選挙においては、
仮に8名の選抜メンバーを選ぶ選挙であって、
有権者は8票ずつ持っていますよ!

…というルールであれば、別に1人1票じゃなくても立派な
「大選挙区・完全連記制」として認められる選挙なのである!

ところが。

まあAKB総選挙って、票が金で(CDで)買えるよね。
しかも、同じ人に何票投票してもいいよね。。

というわけで、やっぱり残念ながら選挙には成り得ないのでした!
惜しいぃぃ!(惜しくねえよ)

ていうかこれ、AKBにこじつけて論じる意味あったんすかね…。

まあとりあえず、AKB総選挙の制度にふさわしいネーミングは
「人気投票」もしくは「株主総会」であるのだけど、そこにあえて
『選挙』というワーディングをした秋元康にはひたすら頭がさがるわけであります。

さて、話しを戻します。
もうどっちが本題だかわからなくなってきました

現在国会では、「議員歳費のコストカット」「一票の格差の是正」ということで
衆議院選挙における議員の削減を計っており、

「小選挙区をもっと減らせ」
「いや、比例選出を減らすべきだ」

という議論が行われておりますが、
どうにも党利党略のみが先行し、前述のような
選挙における思想・哲学の話しまで踏み込んでいるように見えません。

多数の意見が代表されるのが、民主主義なのか(多数代表制)。
少数の意見をできるだけ汲み取るのが、民主主義なのか(比例代表制)。

これはまさに、民主主義の根幹を揺るがす論点です。

「とりあえず、一票の格差を是正しなければならないから」
「連立を組んでる◯◯党に不利だから、比例代表の数は減らせないな」

とか、そんなレベルで結論を出してよい問題ではないです。
そもそも日本はこの二択に結論が出しきれずに、どっちつかずの
「小選挙区比例代表並立制」という折衷案に逃げ込んだという歴史的経緯があります。

そしてこれは本当に難しい問題です。
一般的にイギリスやアメリカなどのアングロ・サクソンの国は多数代表中心、
欧州各国は比例代表が中心の考え方と言われています。

多数代表は、二大政党制になりやすく意思決定が早いが、少数を犠牲にし独善を招く。
比例代表は連立政党を招き、多用な意見を汲み取るが不安定で意思決定も致命的に遅い…。

果たして日本は、どちらの道に進むのか。
それとも今のような、「選挙制度のデパート」と海外から揶揄されるような
中途半端でどっちつかずの、国から地方まで異なる選挙制度を維持していくのか…。

20世紀で結論が出せなかった議題は、
どうやら21世紀を担う我々の宿題となったようです。


ちなみに長くなるのでまた機会を改めますが、
僕は現時点では比例代表制を支持しています。
これ、本当に本が一冊書ける議論になるのでね…実際書いてる人沢山いるし。。

世間を賑わしたAKB総選挙という祭りは終わってしまったけれど、
その結果を眺めながら時には、政治の選挙に想いを馳せるのもいかがでしょう?

次はA党とK党とB党で政党選挙やって、
比例代表制・拘束名簿式で争ったらどうかな?!

なんてこと言っていると世間からますます疎まれ置いてかれるのであるよ。
嗚呼。

【第4回AKB総選挙】大島優子が1位を奪還
http://news.livedoor.com/article/detail/6632242/

P.S.
板野に5位以内に入って欲しかった。
(知らないよ)

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 40歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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