「EU、上場企業に女性役員登用の義務づけ検討」
という記事が、一昨日の日経朝刊に掲載されました。
ウェブでは有料記事になっており、アクセスできないのですが…
「努力目標だけでは、女性の社会進出が進まない」と業を煮やした欧州議会が
罰則規定をつけることまで視野に入れた法制化を検討し始めるようです。
可決されれば上場企業には、30~40%の登用義務を課されるとのこと。
うーん…
女性の社会進出が進むことは、とても素晴らしいことだと思います。
何せ僕のコラムのサブタイは「女性主導の世界の作り方」だもんで。
欧州でも女性の取締役がなかなか増えず苦労しているようですが、
それでも大抵の国では10%~の比率をKeepしています。
我が国の上場企業の女性役員比率は、なんと0.98%です。
げに恐ろしき、男尊女卑国家。
しかしながら女性の社会進出は、政府が法律を作って縛り、
無理やりに生み出されるもので良いのでしょうか?
政治は、制度や法律を作ることができます。しかしながら、
価値観を押し付けたり、変えたりすることはできません。
(正確には、するべきではありません)
例えば、小子化問題。
国家が
「国民は25歳までに結婚して、生涯2名以上の子どもを生む努力をすること!」
と義務づけることには、ほぼすべての人が反対するでしょう。
これは明確に国家による、思想信条の自由への侵害です。
しかし、上記のように企業に登用義務を強いるような政策には
賛否両論が発生し、賛成に回る人もけっこう多いと思います。
ですが程度の差はあっても、やってることの根は同じです。
僕は「小さな政府」を支持する立場の人間です。
国家による経済活動への干渉は必要最小限に抑え、
人々が自由意志で活動できることに史上の価値を置きます。
国家は自由意志で動く国民の活動が円滑になるように、
法律やシステムを整える黒子であるべきです。
働きたい女性が増え、今の法律や制度がその実態に合わなくなってきた。
だから変えましょう!こういう流れが正しい順番のはずです。
女性の活動を制約する法律やシステムはどんどん取っ払うべきですが、
女性の活動を無理強いする政策は、新たな不自由を必ず生み出します。
欧州の環境にはそれほど明るくはありませんが、
この法律の導入はあまりにも安易な気がします。
「じゃあ、どーすんのよ!自由に任せるって、今の状況を放っておくの?!」
と言われそうなので、日本については一言。
僕は現状の女性(及び最近の若者)を虐げているのは、雇用の硬直性だと考えています。
終身雇用のサラリーマンとその専業主婦が理想とされる価値観が支持され、
それを反映して制度やシステムが構築されています。
正社員は手厚く保護され、首にすることは事実上できません。
会社に忠誠を近い、長時間残業も厭わない社員の給与が年功序列で上がっていきます。
これが「女性の活動を制約する法律やシステム」の一つです。
以前の記事にも書かせていただいた通り、
労働市場(雇用)の流動化が進み同一の条件ですべての労働者が健全に競争を行えば、
やる気とスキルのある女性は男性以上のパフォーマンスを発揮できると思います。
そしてこの正社員を手厚く守っている「規制」を取っ払う
変革を起こすには、なんだかんだで日本にまだ蔓延している
「終身雇用のサラリーマンと、その専業主婦が理想とされる価値観」
が覆される必要があります。
「やっぱり大企業が安心だよね」
「あたし、働きたくないから家庭に入る」
という人々が大多数では、
制度も法律も変わるはずないのです。
そう、結局のところ
「政治は、人々を映す鏡」
どこかの優秀な誰かに任せておけば、
いい制度や法律ができて世の中が変わるわけではありません。
また逆に、政治や政治家が悪いから、社会が悪くなるわけでもありません。
この世界を良くするのに近道なんてたぶんなくて、
我々一人ひとりの意識と行動にかかっていると、僕は考えます。
仮に前述の法律が可決されて、表舞台に出てきた欧州の女性たちが得るのは
自由なのでしょうか。それとも、新たな不自由なのでしょうか。
もしも法律という不自由の力なくして、
マイノリティが自由に経済活動できないのならば、
それはそれでとても悲しい現実なのだけれども。ね。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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