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「大阪維新の会」が候補者200人を擁立できない理由

政治コラム

政治塾、2262人を選抜=維新の会
http://bit.ly/y0R68Z

大阪維新の会のニュースが世間を賑わせていますね。
国政対策でまとめられた維新の会の政策

「維新八策」

は、まさにわれわれ若者世代にとって
「これしかない!」と思わせる内容になっており、
否が応にも期待が高まるというものでしょう。僕も大いに期待しております。

しかし、上記のようなニュースをご覧になり、
また「国政に200人擁立目標!」という威勢のいい掛け声を聞いて、

「おいおい、維新の会200人だってよ!こりゃ凄いことになるんじゃないの?!」

と思われる方も多いかと思いますが、
年内選挙であればほぼ不可能、来年でもかなり厳しい数値目標
だと考えられます。というわけで、今日は維新の会から見る選挙のお話。

政治塾に2000人以上の申込があり、
大阪維新の会から出馬したい人は相当程度いると思います。

それでもなぜ、200人の候補者が擁立できないのでしょう??
理由は大きく2つあります。


出馬に際する資金が拠出できない

まあお金です。カネ。
毎回選挙の話題になるたびに出てくるので
いい加減イヤになりませんか?僕は超イヤです。

維新の会が200人擁立を目指す国政(衆議院選挙)ですが、
出馬するだけで最低どれくらい必要かご存知でしょうか?

小選挙区に立候補するのに300万、比例代表に立候補するのに300万
両方に立候補すると600万もの「供託金」を納めなければならないのです!
正確に言うと

小選挙区のみ…300万
比例代表のみ…600万
両方に立候補…600万

となっておりまして、
小選挙区のみだとしても300万円のお金を積むことが
選挙に出馬するための最低条件となります。

なおこの供託金、これはご存じの方も多いと思いますけど
一定の得票を得れば返還されます。「一定の得票」というのは
選挙の種類によって変わるのですが、まあ概ね有効投票数の10分の1(10%)です。

余談ですが、前回の衆議院選挙では「幸福実現党」なる政党が
小選挙区に337名の候補者を乱立。そのすべてが供託金没収点を
圧倒的に下回る得票数で落選を決め、12億弱の供託金はすべて没収

「宗教法人って、ガチでお金が唸ってるんだな…」

という事実を全国民に知らしめるという
宗教史上もっとも謎のブランディングに成功したことは
我々の記憶に新しいところです(?)。

…話を戻しまして、ではなぜこのお金の話が
維新の会につながってくるのでしょう。
彼らが200名の立候補者を目指すとします。

300万 × 200 = 6億円!

もの資金が必要になりまして、
出来立てホヤホヤの政党にそんな軍資金はありません。
そう考えると幸福実現党ってやっぱマジで凄いですね。入信しようかな

そもそも300万は「出るのに最低限必要」というだけで、
実際の選挙活動を鑑みたら軽く1000万のオーダーになります。

ということは、大阪維新の会としては
「これは!」と思う候補者がいたとしても、

「公認は与えます。けど、資金面は自分の持ち出しでなんとかしてね」

と言わざるを得ないわけです。
これは大衆や若者を支持基盤とする政党にとってかなりの痛手です。

普通の20代で、300万+選挙資金を捻出できる人はほぼいません。
30代、40代でも、家庭や子供があれば相当キツいでしょう。

志のある人々が塾生に多数いたとしても、
資金力を兼ね備えているとなると、相当数は絞られます。

供託金が返ってくるかはフタを開けてみないとわかりませんし、
返ってくるとしても選挙が終わってから一定期間が経過して、所定の手続きを踏んだ後。
やっぱり先立つものがないと、選挙に出る踏ん切りはつけられませんよね。


候補者の多くが職業持ち(サラリーマン)である

新興政党には、「職業政治家」が多くありません。
自民党あたりには政治家二世やタレント候補がウヨウヨしてますし、
前回の衆議院選挙に落選して「浪人中」の元議員も腐るほどいます。

こういう人たちが、いつでも政治活動(選挙活動)を始められますし、
立候補も比較的用意です。

ですが、大阪維新の会をいま支持しているのは
改革を望む若者層や、普通の民間人労働者です。
この点がなぜ不利になるかというと、

衆議院は、いつ選挙があるかわからない!
(いつ解散するかわからない!)

からです。これに尽きます。
ただでさえ選挙資金の拠出に悩むであろう候補者たちに、

「6月に選挙がありそうだから、もう会社はやめておいて下さい」

と言って、首を縦に振れる人が何人いるでしょうか?

色々な事情があって仕事をすぐにやめられないのはもちろん、
仮に早めに仕事をやめてしまって、来年9月まで選挙がなかったら
1年間無収入で過ごすハメになり、生活資金や選挙資金はおそらく途中で枯渇します

いわゆる普通の会社勤めから政界を目指す人にとって、
このタイミングは非常に悩ましいものなのです。

こうした状況から、民主党や自民党は
大阪維新の会の体制が整う前に解散総選挙をしかける動きを見せています。
(もちろん、それ以外にも様々な思惑があるのですが)

実際の解散がいつになるのかわからないというのは、
民間人候補者を新興政党にとってそれほど致命的です。

お金と人材で板挟みになる中で無理やり候補者を選定しようとすると、
怪しいところからお金を引っ張ってきている候補者に公認を出してしまい、
後に政治資金を突かれて政党自体が壊滅してしまうかもしれません。

極端にいうと他政党からのスパイがいるかもしれませんし、
候補者選定というのはとてもリスキーな作業であると言えます。

個人的には解散の時期はなるべく後ろに引き伸ばして
なんとか維新の会には粒ぞろいな候補者を揃えて欲しいと思いますが、
そもそもこんな問題が起きるのは選挙制度が悪いとしか言えません。

供託金一つとっても、普通の民間人が拠出できる金額ではありません。
いまの選挙人資格は

「財産又は収入によって差別してはならない。」

という憲法の条文に明らかに触れていると思います。
売名行為による立候補を防ぐためであれば、
50万円程度で充分ではないでしょうか。

なお、この供託金を減額して没収点も緩和する改正法案は
2008年~2009年にかけて当時政権与党だった自民党から提案されたのですが、
民主党と国民新党の反対によって否決されたことを、われわれ若者は忘れてはいけません。

その他、選挙にお金がかかる事実は枚挙に暇がありませんし、
結局のところ現行の制度は

「君は出馬するとだけ言ってくれればいい!
資金面その他は、すべて党で面倒をみるから!」

なんてことが言える大政党や既得権益者たちに有利にできており、
この壁を突き崩すのは用意ではないのです。
なお、供託金の減額に反対したのは小沢一郎だそうです。あんニャロ。

それでも維新の会旋風は、旧体制に風穴を開ける大きなチャンスです。
解散がいつになるかはわかりませんが、その時まで興味を保ち続け、
気鋭の候補者たちに投票することが、改革を目指す我々の勤めだと言えます。

そして維新の会の「維新八策」には選挙制度(公職選挙法)についての
言及はありませんが、ぜひ政権を取った暁には(!)自分たちが苦しんだ分、
若者や民間人が政界にチャレンジしやすい制度を整えて欲しいものですね!

それではー。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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