1月は新年会・賀詞交歓会ばかりで議会活動がほとんどない
都議会議員ですが、一つだけ重要な公務があります。それが
「復活予算要望の提出」
です。
えーと、つまらないかと思いますけど、解説しますね。
今日は財政と変な慣習のお話です。
国も地方自治体もだいたい同じなのですが、秋から年末にかけて
次年度の「予算案」が行政サイドで立てられます。
平成27年度(2015年度)東京都予算(原案)の概要
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2015/01/70p1g100.htm
例えば、こういうの。
この予算案の策定は、以下のような順番で進みます。
Step1.
各部署からの「予算要求」&政治家(議員)からの「予算要望」
国なら省庁、東京都なら各局が財務省(または財務局)にそれぞれ、
「うちの担当部署は来年これくらい予算が欲しいです!」という要求を提出します。
また同時期に、政治家・議員たちも政党や会派単位で
「この分野の予算は特に厚くしてくれたまえ」という要望を提出します。
久々にテンプレなお役所仕事に遭遇して怒っちゃった話
http://otokitashun.com/blog/togikai/5427/
※我々の予算要望書はコチラからご覧いただけます。
先月、副知事に私たちも提出いたしました。
ただこれは、具体的に○○億円という数字を要求するわけではないので、
各党・各会派の「政策集」に近い位置づけのような気もします。
Step2.
財務を担当する部署が要求・要望を取りまとめて、予算原案を作成
各部署が提出してくる「予算要求」を合計すると、
たいていの場合は想定している予算規模を超過した数字になります。
そりゃそうですよね。
どの部署だってよりよい仕事をするために、予算が欲しいですから。
こうした要求金額を全体最適の観点から厳しい目でみて、
ビシバシと不要な金額を削って予算案を作成するのが、財務省・財務局の仕事なのです。
(それゆえ、財務を担当する部署は圧倒的な権力を手にすることになる)
Step3.
政治家サイドからの「復活予算要望」を受け付ける
※このステップは、自治体によってはない場合もある
Step2で策定された予算案は実は、完成されたものではありません。
例えば東京都の場合ならズバリ200億円、「復活予算枠」というのがあります。
Step1で提出された「予算要求」の中で
落とされたり削られた項目の中から、
「おいおい、これは重要だから、復活(増額)させてくれたまえ!」
という要望を議員たちが提出します。
行政はその中から200億円分の復活項目を選びだし、
ここで晴れて「予算案」が完成されるわけですね。
Step4.
予算特別委員会などの審議を経て、本会議にて議決
ここまで来てようやく、翌年度の予算が「決定」される、と。
■
なぜ「復活予算枠」のような、一見回りくどい制度があるのでしょうか?
これは戦前の議会からある伝統的なやり方で、
「巨額の予算を行政サイドだけで決めることは不健全である」
「民意の代表者である議員たちにも、差配できる余地を残すべきだ」
という思想に基づいて確立されたようです。
それには確かに一理あると思いますし、当時はあったのでしょう。
しかしながら今や、この復活要望は形骸化しているのではないかという説もあります。
つまり、復活する項目なんて事前に与党と行政の側で決まっていて、形だけ行ってハイ終わり!
それをもって与党の政治家たちは
「我が党(会派)の予算要求の通り、〇〇の予算を復活させて確保しました!」
なんてアピールに使う…(これを通称「あれ俺サギ」という。あれは俺が実現した、の意)。
そんな説を裏付けるかのように、東京都の復活予算要望に関してはそのスケジュールが
今年のケースだと本日(21日)議員側が提出して、23日には決定されます。
復活予算の金額は200億円といえ、東京都の予算は13兆円を超える規模です。
多岐の分野にまたがる要求を議員たちが出してきた場合、事実上1日でその要求を精査し、
使い道を決定できるとはとても思えません。。
■
こうした「予算編成プロセスに形だけ政治家を介入させて花を持たせる」
という儀式について、国レベルでは民主党が政権時代に
「時間と人手と金のムダ!」
とバッサリ斬りまして、現在は行われておりません。
民主党政権も、少しは良いことをしていたわけです。
少しだけど。
東京都では、いまだにこの慣例が残っています。
しかし、限りなく形骸化しているような気はするものの、2日間で職員たちを
総動員して徹夜で検討しているのかもしれないし、確かなことは言えません。
よって、「こんなの時間の無駄!」と斬り捨てるのも何か違う。
予算策定というプロセスには一定の敬意を払いながらも、
何かこの疑問が残る慣習に対してもの申す主張ができないものか…。
と、かがやけTokyo政調会(私&上田都議)が
両角幹事長のアドバイスを受けながら今回作成したのが、
「復活予算要望ゼロ」
プランです。
簡単に言うと、政治家に200億円ばらまかせていい顔させるくらいなら、
そのお金を都債の償還(返済)や将来のための基金に充てて財政基盤を強化してね、という主張です。
で、この主張を裏付けるためにロジックを作りました。
以下、本日提出した復活予算要望書の資料より抜粋。
(パワーポイントで提出している会派は、完全にウチくらいなものでしょう)
(グラフは東京都HPより抜粋、スライドはおときた駿事務所作成)
東京都の税収は6兆円前後で増えたり減ったりしていますが、
法人二税は景気に左右されやすく、また人口の伸びも止まった東京都では
今後劇的に税収が増えることは考えづらいと言えます。
一方、全国で唯一自主財源で予算を組める東京都も、
財政危機時代に多額の都債を発行しており、その累積債務は6兆円以上にのぼります。
(今もなぜか都債を発行し続けてるんですが、その理由は長くなるので割愛)
借金がこんなにある状態を放置しておくと、東京都は悲惨な状況に直面します。
その最大の理由は、将来の人口動態です。
実はまだまだ引力の強い東京都の人口は向こう数十年は急激に減ることはないのですが、
確実に激減する層があります。それが、生産年齢人口層です。
なんと2015年から2035年にかけて、
880万人から800万人へと1割以上の生産年齢人口が減っていくのです。
その税収をほとんど法人税に頼っている東京都ですから、税収も激減することは間違いありません。
私たちは今回、ここに着目しました。
つまり、人口が減らないからといって、このまま借金を放置しておいたらヤバイよ、
というロジックを組んだわけです。
よって、私たちも復活予算要望はするけれど、
それはあくまで将来世代や弱者に対する投資という限られた分野に留めるべき、と。
具体的には社会的養護や子育て支援、または障害者支援などですね。
一方で、素人が「中小起業支援」の名目で融資をバラ撒いてゾンビ企業を続出させ、
あげく90億円も焦げ付きを発生させたような政策のお金は削って(マイナスの予算要望!)、
これにて差引きゼロ円。予定されていた200億円は、借金の返済に使いましょう!
…という斬新な提案をしてみたわけです。
受け取った副知事は、
「…はあ。要望額は、0円ですか。。」
と、ものすごく微妙な表情をしておりましたが。苦笑
■
私たちは単に、パフォーマンスがしたいわけではありません。
しかしながら、丁寧に200億円積み上げて復活予算要望をしても、
野党の申し入れはほとんど通らないことも事実です(与党に相乗りしている項目は通るけど)。
こうした問題提起をすることで、
東京都でも国に引き続き慣習を見直す機運が高まり、
政治家のバラまきよりも未来への投資へと予算編成方針が切り替わることを期待したいと思います。
新党立ち上げも大変ですが、きちんと自分の第一の職務もこなして参ります。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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Tags: 復活予算要望