昨年から取り組んでいる児童養護・里親委託推進の政策について、
本日は東京都担当職員の方々との意見交換会を主催させていただきました。
(このため、消防庁の出初式には行けず…申し訳ありません。。)
弁護士でもあるヒューマン・ライツ・ウォッチの土井さまに加えて、
里親、児童養護施設職員、児童養護施設出身者、ジャーナリストなど、
あらゆる立場の人々が一堂に会し、2時間に及ぶ活発なディスカッションが交わされました。
これまでの児童養護・里親制度に関する記事はコチラから↓
http://otokitashun.com/tag/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E9%A4%8A%E8%AD%B7/
前回の記事でもお伝えした通り、我が国の社会的養護においては、
実親の親権が強すぎるあまり、子どもの人権が無視される傾向にあります。
…あ、こちらの拙い資料は私の自作です。
一部を引用しながらご紹介。
国際的には児童の権利条約に基づき、家庭的養護が基準とされているのに、
日本では真逆で「まずは施設」という対応があまりにも普遍的です。
以前の記事の繰り返しになりますが、「実親の不同意」を理由に施設措置を行うことは、
明らかに行政サイドの怠慢であり「子どものため」という視点が欠落した行為です。
「社会的養護」への同意は必要であっても、
「里親措置」への同意を必要とする法的な根拠はどこにもありません。
それどころか、実親が社会的養護に同意をしないケースですら、
著しく児童の権利を侵害する場合には児童福祉法28条によって家裁に申立を行い、
児童にとって必要な措置を行うことができます。
しかしながら、こうした対応を行わないのを
「行政・児童相談所の怠慢だ!」
と責め立てるだけでは何も変わりません。
彼らの意識変革も大切ですが、やりたくてもできない事情もまた存在するのです。
里親委託には、施設措置に比べて3倍以上の行政コストがかかると言われています。
施設なら40人、50人をまとめて管理することが可能であり、
例えば実親との面会なども、施設内に来てもらって一律で対応することが可能です。
ところが50人の児童がそれぞれの里親の元にいれば、
実親との面会対応は担当職員がそのすべての場所に駆けずり回らねばなりません。
また、「断固子どものため!」と実親や里親とトラブルによって裁判係争になれば、
貴重な職員の手が最低でも一名はそれにかかりきりになります。
高齢者福祉に比べて圧倒的に財源が少ない児童養護は最小限の人員で運営されており、
どこの児童相談所も職員が一人で数十件の児童・案件を抱えている状態です。
そんなところに、より負荷のかかる
「里親委託を推進せよっ!」
と政治がどれほど旗を振ったところで、
現場から見れば実現不可能な要請に過ぎないというわけです。
というわけで、現状我が国や東京都では、
施設措置を前提とした職員の対応が施設依存を産み、
施設に頼らざる得ない貧弱な環境がそれを助長するという負のスパイラルに陥っているのですね。
■
意識と環境、どちらも並行して改善が必要ですが、
政治的にまず取るべきは環境の改善=財源の確保であると言えそうです。
以前から何度も繰り返していることですが、いかに不要・過剰な社会保障を削って、
しかるべき分野に選択と集中をするかが問われることになります。
児童相談所の人員強化・里親支援の充実などの政策提言は勿論行っていきます。
一方で、財源や予算がなくてもできることはあります。
例えば、施設措置実態の数値化です。
里親委託が優先となっているにも関わらず、
施設措置となってしまう理由の多くは
「実親の不同意」
「児童に障害がある場合」
だそうですが、その正確な件数や割合を児童相談所も東京都も把握していません。
しかしながら、ヒアリングする限りでその件数を足しあげていっても、
実際に施設措置になってしまっている児童の件数に達しません。
つまり、「実親の不同意」「児童の障害」など明白な理由がないにも関わらず、
「なんとなく」「まずは施設」という理由で施設措置になっている児童が存在するということです。
まずはこの、「積極的な施設措置をしている件数」を正確に把握し、
そうしたいわば「問題少ない」児童から100%里親委託ができるような運営を目指していくことは、
行政や児童相談所の意識改革にもつながるはずです。
これは、東京都が11か所の児童相談所に指示をすればすぐにでもできることです。
多少の手間はかかりますが、現実的な線でしょう。
民間企業でも営業実績・日報を提出させなければ、
営業マンはさぼりがちになり、日々のPDCAサイクルを回すことはできません。
東京都も児童相談所も、まずは自分たちの運営実績を可視化するべきではないでしょうか。
■
他にも様々な角度から山ほど提言は出たのですが、
長くなってきたのでまとめます。
私は何も「養護施設のすべてが悪で、里親が絶対善!」というつもりはありません。
それぞれに一長一短がありますし、里親委託が進んでいる先進国でも
児童養護施設が皆無ということはほぼありません。
ただ、これは自分のすべての政治信条に通ずることですが、
何より大切なのは
「オプション(選択肢)が多いこと」
なのです。
施設か里親か、その子どもにとって最善の選択肢が常に選べること。
子どもが選べる年齢なら子ども自身が、子どもが幼いならば社会福祉司が。
現在のように
「人手が足りないから」
「まずは施設と方針が決まっているから」
「実親の同意がないから」
という理由で、事実上多くのケースで「里親」という選択肢が
最初から除外されている我が国や東京都の状態は、なんとしてでも改善しなければなりません。
それが、私のこの問題に取り組むモチベーションです。
本件は引き続き政策提言を続け、折を見て皆さまにも共有していきます。
本日の長時間のディスカッションにお付き合いいただいた東京都職員の皆さま、
都庁までご足労いただいたヒューマンライツウォッチ及び有志の皆さま、ありがとうございました!
本件に関心のある方は、こちらの本をぜひ。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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