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ベネズエラ社会主義はなぜ失敗したのか ―― 原油ではない、「制度としての社会主義」の致命的欠陥

日々のこと

今回のアメリカの介入劇は、ベネズエラ経済の崩壊がその背景にあります。

小さな政府・自由主義者である私の視点から、今日はベネズエラの社会主義政策について筆を取りたいと思います。

ベネズエラの苦境は「原油価格の下落が原因」という説明も時になされますが、それは本質を外しています。

問題の核心は、ウーゴ・チャベス政権から本格導入された社会主義経済政策そのものが、経済と社会の健全な循環を破壊したことにあります。

以下、その失敗を象徴する4つのポイントを整理します。

① 価格統制が「市場」を破壊し、闇市を生んだ

チャベス政権は「国民の生活を守る」という名目で、食料・日用品・医薬品などに厳格な価格統制を導入しました。しかし、これは経済学的に見て最悪の選択でした。

・企業: 採算が取れず、生産を縮小・停止
・輸入業者: 逆ざや(仕入れ値より販売価格が安い)を嫌い撤退
・店頭: 商品が消え、数時間に及ぶ行列が常態化

結果として起きたのは、「不足」と「闇市」です。

正規価格では商品が手に入らず、闇市では数十倍の価格で取引される。

「貧困層を守るための価格統制」が、結果として「最も貧しい人々から商品を奪う制度」へと変質しました。

これこそ、計画経済が繰り返してきた歴史的失敗そのものです。

② 解雇規制と雇用統制が、働く意欲を奪った

チャベス政権下では、労働者保護を掲げた極端な解雇規制(不当解雇の禁止だけでなく、実質的に解雇が不可能なレベルの規制)が導入されました。

一見すると「弱者に優しい政策」に見えますが、現実には逆効果でした。

・企業は一度雇うと人員調整ができないため、新規雇用を極端に避ける
・生産性の低い労働力を抱え続け、企業全体の競争力が低下
・「働かなくても解雇されない」という空気が広がり、労働意欲が減退

結果として、生産性は下がり、経済は停滞。若者は未来を描けなくなりました。

これは「保護」ではなく、人間の自立と企業の活力を奪う政策だったと言わざるを得ません。

③ 国有化が経営効率を壊し、生産性を破壊した

チャベス政権の象徴的政策が、石油・電力・通信・農業・製鉄など多岐にわたる大規模な国有化です。

「国家が支配すれば公平になる」――それは幻想でした。

・専門性の欠如: 経営者が政治任用になり、専門性より「政権への忠誠心」が重視された
・投資の停滞: 利益は社会保障費(バラマキ)に回され、設備投資が放置された

象徴的なのが、かつて世界屈指の効率を誇った国営石油会社「PDVSA」です。
政治介入によって熟練のエンジニアが追放され、生産設備は老朽化。原油価格が上がる以前から、生産量は激減していました。

国有化は富を生まなかった。富を「食い潰す装置」になったのです。

④ 権力集中が汚職を常態化させた

社会主義経済は、「国家が配分を決める」仕組みです。

つまり、権力を握る者が、あらゆる資源配分を支配することになります。この構造が、前例のないレベルの汚職を生みました。

・国営企業を通じた不正蓄財
・複雑な「二重為替制度」を悪用した外貨の横流し
・政権幹部と軍の癒着

結果、国家は「再分配装置」ではなく、特権階級の「収奪装置」へと変貌しました。

最終的に国民が見たのは、「平等な社会」ではなく、困窮する国民と、肥え太る腐敗した支配層という「究極の二極化」であり、貧富の差は解決されませんでした。

■ 失敗の原因は、社会主義そのもの

ベネズエラの悲劇は、原油価格が下がったからでも、強欲な資本主義やアメリカによる圧力が原因でもありません。

✅ 価格を決め、雇用を縛り、企業を国有化し、権力を集中させた。

この「社会主義的プロセス」そのものが、人間の意欲と市場の機能を破壊した結果です。

チャベス時代の短い栄光は、原油価格の上昇がその失敗を一時的に隠していた(延命させていた)だけに過ぎません。

■ 日本への教訓

日本でも、価格統制的な発想や、過剰な規制万能論、あるいは「国家が主導すればうまくいく」という幻想が語られることがあります。

しかしベネズエラの歴史は教えてくれます。 善意であっても、制度設計を誤れば、社会は静かに壊れていく。

経済は、「守る」だけでは回りません。動機づけ(インセンティブ)・競争・透明性があってこそ、持続可能な社会は成り立つ。

そして、権力はあっという間に腐敗する。

それを忘れたとき、私たちもまた、同じ道を歩みかねないのです。

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音喜多駿

おときた駿
前参議院議員(東京都選挙区) 42歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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