次の世代に希望をつくる

「大きな政府」の幻想はついに剥がれつつある…のか?

日々のこと

読売新聞が9〜10月にかけて行った郵送世論調査で、極めて象徴的な結果が出ました。

「社会保障などの行政サービスが多少手薄になっても、国民の税負担は小さい方が良い」
賛成 54% 反対 44%

この数字を見て、私は思わず目を見開きました。

というのも、この手のトレードオフ型の質問で「サービス低下を許容しても負担減」を選ぶ層が多数派になることは、これまでほとんど見られなかったからです。

日本の政治・行政論の世界では、長らくこうした前提が支配していました。

・社会保障は手厚くあるべき
・税や保険料は増えても仕方ない
・国民は給付を削るより、負担を受け入れる

しかし今回の調査は、それが当たり前ではなくなっている可能性を突きつけています。

調査研究や世論分析の世界では、日本は長年“より大きな政府”志向であるとされてきました。

たとえば過去の世論調査をたどると、

・社会保障の維持・拡充には賛成
・ただ増税は嫌(結果として財政赤字を受け入れる)

という「サービスは厚く、負担は薄く」という希望的な態度が支配的でした。

ところが今回は、設問が明確に “社会保障の手薄化 vs 税負担の軽さ” を突きつけたうえで、過半数が負担軽減を優先している。

この姿勢は、従来の常識からすれば極めて異例です。

今回の結果を、私は単なる節約志向以上の意味として、ある種では前向きに捉えています。

それは、

-「大きな政府」は一見優しく頼れそうな概念だが、その裏には確実に負担増がある-

という事実が、ようやく国民意識として共有され始めたのではないかとも思えるからです。

これまでの政治や世論は、どこかでこうしたトレードオフを直視してきませんでした。

・社会保障を守れ!
・子ども予算を増やせ!
・医療はもっと手厚く!
・ただし歳出削減や負担増の話はしたくない

という空気。。

しかし財政も制度も限界が見えた今、国民はようやく 「夢だけの大きな政府は存在しない」ことを受け止め始めたのかもしれません。

これは政治にとっては、非常に大きな変化です。

これまで政治家や行政は「大きな政府」を掲げ、負担の話をぼかし続けてきた。

「痛みをまったく伴わない改革」が、あたかも実現可能かのように語られてきた日本政治。

しかし、もし「社会保障が多少手薄でも負担を軽くしたい」という国民が過半数になったのであれば──

・どの給付を削るか
・どのサービスを縮小するか
・どんな形なら生活の質を損なわずにできるか

という、これまで避けてきた本格的な改革議論に踏み込める準備が整ったことになります。

政治家の仕事は国民の声にただ迎合することではなく、変化の兆しを読み、方向性を示すことです。

今回の調査は、国民にこう問いかけました。

あなたはそれでも大きな政府を望むのか、それとも身の丈に合った「小さな政府」をいよいよ考えるのか?

そして国民は、「もう無邪気に膨らませる時代ではない」と答え始めている。

この結果に、次は政治の側が応えなければなりません。

・真の社会保障改革を進めるか
・行政効率化に踏み込むか
・不要な公費支出にメスを入れるか
・あるいはそのすべてか

まさに今こそ、現実を直視する政治が必要です。

【追記】

一方で新田さんが指摘するように、財政赤字を拡大してでも財政出動を望む声も過半数なので、国民の意見や価値観はまだ五分五分で揺れ動いている。だからこそ政治側の姿勢や発信も重要です。

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音喜多駿

おときた駿
前参議院議員(東京都選挙区) 42歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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