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新宿区の“赤旗購入問題”が示す、行政と議会のあるべき距離

日々のこと

― 慣習的購読は見直し、必要な情報は必要な部署だけで十分だ

新宿区が、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」の区としての購読を取りやめる方針を表明しました。

背景には、区議から職員に対して政党機関紙の購読を勧誘する行為が長年行われていたこと、さらには管理職の約85%が勧誘経験を持ち、その6割以上が「心理的圧力を感じた」と回答している現状があります。

これは共産党に限った話ではなく、政党・議会と行政組織の健全な関係という観点から、改めて考え直すべき問題です。


■ 行政職員による「なし崩し的購読」は明確に問題

まず、行政組織としての購読です。

新宿区では秘書課が「赤旗」「赤旗日曜版」をそれぞれ3部ずつ購入していたとの説明。しかし、行政の“情報収集”として機関紙の購読は否定されるものではないにせよ、幹部職員がこぞって購読する必要は全くありません。

情報収集が目的であれば、

  • 必要な部署が
  • 必要な媒体を
  • 必要な部数だけ

購入すれば十分。これは行政運営の基本です。

ところが今回のアンケートが明らかにしたのは、情報収集というよりもむしろ「議員からの勧誘に応じた結果として、管理職が購読する構造が長年続いていた」という実態でした。

情報収集の必要性ではなく、政治的関係性や圧力が、行政職員の購読行動を歪めていた。

ここが問題の本質です。


■ 議員が勤務時間中に職員を訪問、庁内で集金 ― 明らかに“距離が近すぎる”

吉住区長は議会答弁の中で、

  • 議員が庁舎内で職員を訪問
  • 勤務時間中に購読料を集金していた

と説明しました。これは「違法ではないからOK」という問題ではありません。

行政組織に対して議員が物理的・心理的影響力を行使しうる立場にある以上、業務時間中の庁舎内での勧誘・集金行為は、公務の中立性や職員の自由意思を損なうリスクが極めて高い。

議会と行政は、適度な距離を保って健全な関係を維持すべきです。この距離が曖昧になるほど、行政職員は「議員に逆らえない」という空気に飲まれ、なし崩し的な慣習が固定化します。


■ 行政は「必要な媒体だけを適切に買う」形に整理するべき

私は今回の決定は、行政の情報収集体制をより健全な形へと整備する好機だと考えます。

政治的中立性を求められる行政組織にとって、「職員が心理的圧力を感じつつ、特定政党の機関紙を購読し続ける」という状況は望ましくありません。

情報収集という目的から考えても、

  • 幹部職員全員が購読する必要はない
  • 必要部署が一部ずつ読めば問題ない
  • 行政として一律に「政党機関紙」を買う必然性は低い

と整理できます。

行政の購読ルールを透明化し、「必要性」ベースで媒体購入を決める仕組みへと見直していくことが求められます。


■ 職員が“断りづらい”状況の改善も不可欠

区は今後、職員が心理的圧力から解約しづらい場合のケアやルール整備も検討するとのこと。これは大切です。

行政組織で最も優先すべきは、「職員が政治的影響を受けずに公務ができる環境」です。

これは自治体でも国でも、行政組織が公正であるための最低条件と言えます。


■ 慣習に甘えず、制度で公正さを守るべき

今回の問題は、長年の慣習がもたらした“グレーゾーン”を正面から見直す、良いきっかけです。

赤旗に限らず、政党機関紙の購読が行政職員の「暗黙の義務」になっていた地域は他にも存在するとされます。

どこの政党であれ、行政に対して不必要な圧力がかかる構造は放置すべきではありません。


行政は行政として、必要な情報は適切な方法で取得する。

議会は議会として、行政への不当な影響を排する。

この当たり前の関係を保つためにも、新宿区の取り組みが自治体全体の健全化につながることを期待しています。

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音喜多駿

おときた駿
前参議院議員(東京都選挙区) 42歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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