次の世代に希望をつくる

訪日客の「医療費未払い」—現役世代の不公平感を抑えるために、保険加入の義務化を含む実務的な対策を

日々のこと

都立病院で令和6年度(2024年度)に外国人患者の未収金が1.7億円に達した、というニュースが報じられました。前年も1.5億円超。民間病院にも公金で一部補填が入っているとの指摘もあります。これは現役世代が社会保険料の上昇に直面する中で、負担感・不公平感を一段と強める事態です。放置すれば社会の分断や制度不信を招きます。facebook.com+1

私は、訪日外国人に対する「民間の旅行医療保険加入の事実上の義務化」を含め、以下の三層の対策を検討すべきだと考えます。ポイントは、①救急は守る、②未収は減らす、③公平を担保する、の3点です。

1. 入国・査証段階での加入要件化(国際標準の取り込み)

多くの国・地域では、観光客や短期滞在者に医療保険を求める制度がすでに一般化しています。例えば:

  • シェンゲン査証は医療費3万ユーロ以上の補償を満たす旅行保険が必須(滞在全期間・全域カバー)。ambtokyo.esteri.it+1
  • UAEは観光ビザ申請要件に医療保険を明記。u.ae+1
  • サウジアラビアは観光eVISAに医療保険を付帯。最近は就労系の一部査証でも保険の事前付保を強化。GOV.UK+1
  • カタールは2023年に訪問者保険の必須化を発表(標準商品あり)。qa.usembassy.gov+1

日本はビザ免除国が多く、入国時に保険証明を求めていません。「ビザ要否に関わらず、一定の医療補償を満たす保険契約を求める」という国際標準を、観光立国の現実に合わせて導入すべきです。チェックは航空会社の搭乗時・入国審査での書類確認とし、オンライン事前登録(ワクチン接種証明で用いた仕組みの横展開)を検討すれば、現場の負担も最小化できます。

※なお、政府は2025年6月に「医療費を踏み倒した訪日客の再入国拒否」等の方針を示していますが、**未然防止(加入義務化)**とのセットで初めて実効性が高まります。The Japan Times

2. 受療段階での回収強化(英国型の「原則前払い」等を参考)

入国スクリーニングと併せて、院内の回収実務も強化すべきです。参考になるのは英国の仕組みです。

  • イングランドでは、NHSが**「在留実態のない海外来訪者」へ法令に基づく**料金徴収を行い、非緊急は原則前払い、救急や公衆衛生上の必要サービスは例外とする運用指針を整備。**海外患者向けの価格表(Upfront Tariff)**まで公表し、病院事務の判断を標準化しています。GOV.UK+2england.nhs.uk+2

日本でも、(1)救急・分娩などは無条件で受け入れる一方、(2)計画的・非緊急の診療は前受金やデポジットを基本にする、(3)多言語請求・即時カード決済・国際回収の手順をガイドラインで標準化する、(4)保険未加入者への院内販売型の簡易保険を整備—といった現実的なメニューが考えられます。

3. 費用負担の見える化と公平の担保(公金補填は「最後の手段」へ)

現状、公的病院・民間病院ともに未収金が発生し、結果として公金補填に頼る場面が出ています。これは日本の患者・保険料負担者からみれば二重の負担感をもたらします。だからこそ、

  • 未収の統計を定期公開(自治体・所管省庁で月次・四半期単位に簡易速報、病院類型別に可視化)。
  • 補填は「加入義務化+回収強化」を尽くした上での最終手段に限定。
  • 観光産業とのコスト分担(旅行商品にデフォルトで保険組み込み/旅行業法上の説明義務)を検討。
    こうした**透明化と「まず未然防止」**の順番が、納得感のある制度設計に直結します。facebook.com

私の基本的な立場

社会保険料は事実上の給与税であり、現役世代の可処分所得を圧迫し続けています。だからこそ、制度の外側で生じる未収・不払のしわ寄せを見過ごすべきではありません。救急医療へのアクセス確保は大前提として守りながら、訪日客の保険加入義務化受療段階の回収標準化を早急に進めるべきです。

それは観光客にとっても「万が一」に備える安心を高め、受入れ側の医療機関にも明確な運用ルールを提供します。結果として、日本の医療と観光の持続可能性、そして現役世代の公平感を守ることにつながるはずです。


参考:諸外国の実務と示唆

  • シェンゲン査証:保険は3万ユーロ以上・全期間・全域が条件。日本の短期滞在にも転用可能な実務モデル。ambtokyo.esteri.it+1
  • UAE:観光ビザ申請に医療保険必須と明記。オンライン手続きとセットで運用。u.ae+1
  • サウジ観光eVISAに保険付帯。査証と保険をワンストップにする設計は日本でも参考になります。GOV.UK
  • カタール訪問者保険の必須化を公表。標準商品を用意し、旅客にとっての手続き負担を低減。qa.usembassy.gov
  • 英国NHS海外来訪者への法定徴収・前払い運用・価格表提示で院内実務を平準化。救急は例外という線引きが明確。GOV.UK+1

最後に。現役世代が納める社会保険料は青天井ではありません。「必要な負担は支える、制度の外側の穴は塞ぐ」。当たり前の改善を積み上げ、安心と公平の両立を図っていきます。今回の議論を、来年度の制度・運用見直しにつなげてまいります。

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音喜多駿

おときた駿
前参議院議員(東京都選挙区) 42歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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