ついに政治の世界にも、人工知能(AI)が表舞台に立つ時代が訪れました。新党「再生の道」が代表にAIを就任させたというニュースが話題となっています。
かつてAIは政策立案やデータ分析の裏方として注目されてきました。しかし、政党の「顔」であり意思決定の最終責任者である代表に就任するというのは、民主主義の歴史においても極めて異例です。
本日はその「懸念」と「期待」を整理してみたいと思います。
懸念点:民主主義と責任の所在
第一に懸念されるのは、民主主義の根幹である「責任の所在」が曖昧になることです。
政治家は選挙で選ばれ、失敗すれば落選という「責任」を負います。しかしAIには選挙権も被選挙権もなく、結果責任を取ることはできません。政策判断が誤りだった場合、誰が責任を負うのでしょうか。
さらに忘れてはならないのは、民主主義とは「みんなが少しずつでも意思決定に参加することで責任を分かち合う仕組み」だということです。
「再生の道」自身が掲げてきた理念も、まさに市民一人ひとりの政治参加を促すことにあったはずです。ところが代表にAIを据えることは、むしろその特性を毀損しかねないのではないでしょうか。
また、AIは現時点で自ら主体的に意思決定を行う知性を持っているわけではありません。AIのアウトプットは、入力されるプロンプト=指示に強く依存します。
つまり、それをコントロールする人が恣意的に操作すれば、AI代表の意思決定は容易に誘導されてしまうリスクがあります。表向き「AIが判断した」とされても、実際には背後の人間が操っているだけになりかねません。
加えて、政治は数値で割り切れない「価値判断」や「倫理的選択」を伴う場面が多々あります。命の優先順位をどう決めるか、未来世代と現役世代の負担をどう分かち合うか。
こうした問いに対して、所属議員たちの考えを学習するとはいえ、AIが本当に自律的に答えを導けるのかは大きな疑問です。
期待:しがらみを超えた合理性と迅速さ
一方で、AI代表には確かに大きな可能性もあります。
第一に、既得権益やしがらみに左右されない意思決定です。政治家は支持団体や業界団体、献金元の意向を無視することは難しい。しかしAIは「票」も「献金」も必要としません。純粋にデータと合理性に基づいた政策判断を下せる可能性があります。
第二に、膨大な情報を瞬時に処理する力です。医療・年金・環境といった複雑な分野でも、AIは最新の統計や国際比較を踏まえ、迅速に選択肢を提示できます。これにより、政策議論がより根拠に基づいたものになるかもしれません。
第三に、国民との新しい対話の形です。もしAI代表が24時間SNSや対話アプリを通じて国民の声を拾い、即座にフィードバックする仕組みを持つならば、従来の政治家よりも「開かれた政治」が実現するかもしれません。
政治の未来をどう形づくるか
AI代表の誕生は、民主主義にとって試金石です。
私は「人間がAIを使いこなす」形こそが本筋であり、AIが責任を持たないまま政治のトップに立つことには強い懸念を抱きます。
しかし同時に、AIの合理性と透明性をいかに政治に活かすかは避けて通れない課題です。日本の社会保障や財政再建といった難題に挑む上で、AIが果たす役割は確実に大きくなるでしょう。
大切なのは「AIに政治を奪われる」ことではなく、「AIを民主主義に適切に組み込む」ことです。責任の所在を明確にしつつ、AIの強みを国民のために活かす制度設計こそが、これからの政治家に求められているのではないでしょうか。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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