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ファクトとエビデンスに基づく社会保障制度改革が進まない情報学的要因の研究
–福島県甲状腺検査継続問題を端緒に制度改革の障壁をあばく-
1. 研究テーマ
震災後の福島県で実施されている小児甲状腺がん検診(県民健康調査)は、科学的根拠に乏しく国際機関も検査継続を非推奨としているにもかかわらず現在も継続されている 。本研究のテーマは、このようにデータ上「正しい」と考えられる政策判断が現場で実行されず、政策改革が進まない要因を解明することである。福島の甲状腺検診継続問題をケーススタディとし、我が国における最大の課題である社会保障制度の改革(社会保険料の負担軽減や持続可能性の向上)がデータ上必要とされながら進展しない背景を明らかにする。本研究では政策と情報、制度と意識の相互作用に着目し、「社会保障情報学」という分野の確立まで到達したい。
2. 研究内容
本研究では、エビデンスに基づく政策決定が停滞するメカニズムについて以下の問いを中心に検討する:
- なぜ科学的データが示す有効な政策が実行に移されないのか(社会保障制度が限界と指摘されても改革が進まないのはなぜか)。
- 人々はなぜデータで示された将来の危機に対して危機感を抱かないのか(データだけでは危機感を共有できないのか)。
- 政治家・政策決定者はなぜ必要な改革に積極的に取り組まないのか。
福島県での甲状腺検査継続は、本来は過剰診断の弊害が大きく中止が望ましいにもかかわらず、住民の不安や巨大な制度の惰性によってなし崩し的に続けられてきた事例である 。このケースを出発点として、社会保障制度改革の停滞というより大きな問題に踏み込み、データと政策実践のギャップを検証する。複合的な要因(リスク認知、政治的インセンティブ、制度上の慣行など)を総合的に分析し、上述の問いに答える。「社会保障情報学」確立の視点から、政策に関する情報がどのように流通し、理解され、意思決定に影響を与えるかを分析する点に重点を置く。
3. 理論仮説・作業仮説
理論仮説: エビデンスに基づく政策が進まない背景には、社会心理的要因と政治的要因が複合的に作用していると考えられる。データによる将来リスクの指摘は人々に必ずしも深刻に受け止められず、目先の安心感や現状維持を優先する心理がある。また、高齢有権者の影響力が強い日本の政治状況では、年金給付削減や医療費の負担増加を伴う改革は政治的に回避されやすい傾向がある。その結果、たとえ政策の妥当性がデータで示されても、選挙上の不利益を恐れる政治家は大胆な改革に踏み出しにくいという仮説を立てる。
作業仮説: 上記の理論仮説を検証するため、本研究では以下の3段階の作業仮説に基づいて実証作業を行う。
(1) 福島県における甲状腺検査継続の背景には、住民のリスク認知ギャップと医療・行政側の制度惰性が存在しており、意思決定構造において科学的根拠よりも「不安の政治」が優位に働いている。→ 医療関係者・行政担当者・住民へのインタビューを通じて、政策決定過程の実態を明らかにする。
(2) 社会保障制度改革においても同様に、制度破綻のリスクを客観データで示しても国民の危機感や支持は高まりにくく、特に現役世代ほど将来リスクを深刻に受け止めていない可能性がある。→ 世論調査や既存パネルデータを分析し、政策リスクの認識と改革支持の関係を可視化する。
(3) 政治家は選挙戦略上、制度改革の必要性を認識していても「痛みを伴う改革」を選好しづらく、政策選好が投票行動にどう影響するかを考慮して行動している。→ 国会議員・元官僚・政策関係者へのインタビュー調査を実施し、制度改革に対する行動と判断の要因を把握する。
これらの作業仮説に基づいて、質的調査(インタビュー)と量的分析(統計・アンケート)を並行して行い、仮説の検証を通じて政策実行の阻害要因を総合的に浮かび上がらせる。
4. 研究対象
本研究の対象は、日本社会における政策決定プロセスの担い手である一般国民と政策決定者(政治家・官僚)である。福島県のケースでは、福島県民や医療関係者、行政担当者の意識と行動を対象とし、社会保障改革のケースでは、日本の有権者全体の意識調査と国政レベルの政策担当者(厚生労働行政の官僚・国会議員等)の意思決定要因を対象とする。研究代表者(音喜多駿)の政治分野での人的ネットワークを活用し、著名な政治家や専門官僚への直接インタビューを実現できる点は本研究の強みである。
5. 研究方法
本研究は質的調査と量的データ分析を組み合わせたアプローチをとる。
- 文献調査: 国内外の先行研究や政府資料・統計データを収集し、社会保障制度の現状や福島甲状腺検査問題の経緯に関する基礎情報を整理する。
- インタビュー調査: 政策決定者(政治家・官僚)や専門家、福島の医療従事者・住民等に半構造化インタビューを行い、政策判断の背景にある認識や意図を聞き取る。
- アンケート・統計分析: 全国規模の世論調査データや必要に応じて実施する独自アンケートにより、国民の危機意識や改革受容度を定量分析する 。また、公的統計(社会保障財政、人口動態など)から客観的な危機の水準を算出し、人々の認識とのギャップを検証する。
- ケース分析: 福島県甲状腺検査の政策決定過程とその社会的影響を詳細に分析し、その知見を社会保障制度改革の遅滞という文脈で比較・考察する。
- 政策研究:国政政党や政治家が社会保障制度の実態や危機と連動してどのように選挙における公約や、国会における政策提言活動を変化させてきたのかを分析する。
6. 先行研究および関連資料
- 福島における過剰診断問題: 福島県では2011年以降、小児甲状腺がんが200例以上発見されたが、その多くは進行しない「若年型甲状腺がん」の過剰診断と考えられている。大規模な超音波スクリーニングが原因であり、検査事業は様々な理由で見直されないまま継続している。その背景には国際的にも検査継続は非推奨とされているにもかかわらず、住民に過剰診断リスクが十分伝わらず学校検診として受診率90%以上に及ぶ状況がある。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sraj/28/2/28_67/_pdf#:~:text=Toru%20TAKANO%20Abstract,of%20residents%20in%20Fukushima%20still
- 社会保障財政の危機: 急速な高齢化と経済停滞により、社会保障給付は現役世代の負担を大きく上回るペースで増大している。その差額は毎年の赤字国債によって賄われてきたが、このような持続不可能な状況は中長期的に制度維持を困難にすると指摘されている。
- シルバー民主主義による停滞: 高齢者が大きな影響力を持つ下では、既得権に切り込む年金給付削減などの改革が極めて困難である。現行制度が将来世代に不公平かつ不安定であっても、高齢有権者の利益を優先する政治構造が改革の障壁となっている。
https://www.nira.or.jp/paper/research-report/2013/1302.html
- 国民意識とデータ伝達: 松本朋子・岸下大樹(2024)の実験研究によれば、将来の医療保険給付額について正確な情報を提示しても、現役世代の保険料負担増への支持は高まらなかった。多くの人々が「現行制度は自分の老後まで持たない」と考えており、データだけで危機感を喚起するには限界があることを示唆している。
https://www.tus.ac.jp/today/archive/20240828_7721.html
以上の知見から、医療から社会保障までエビデンスと政策の乖離が存在し、その背景にはリスク認知や情報伝達、政治的利害といった要因が絡み合っていることが示される。本研究はこれら先行研究を踏まえ、新たな実証調査によって未解明の部分にアプローチするものである。
7. 研究用機材・研究費用
本研究に特別な実験機器は必要なく、主にPC、録音機器、統計解析ソフト等の基本的な機材を用いる。研究費用はインタビューの旅費・謝礼、アンケート実施費用、資料収集費などが中心となる
8. 研究日程
- 1年目: 文献レビューによる現状把握と仮説の精緻化、調査計画の策定(質問票・インタビュー項目の作成等)を行う。フィールド調査を実施し、政策決定者や専門家へのインタビュー、一般対象のアンケート調査などによるデータ収集を完了する。
- 2年目: 収集データの統合分析を行い、研究成果を取りまとめる。学会発表等でフィードバックを得つつ論文を執筆し、最終的な研究報告書(論文)を提出する。
9. 本研究の意義
本研究は「社会保障情報学」確立という目的及び見地から、ファクト・エビデンスと政策決定のミスマッチを解明することで、政策学・行政学・社会保障研究にまたがる学際的な知的貢献をめざす。福島の事例と社会保障改革という異なる領域を横断的に分析する点に独創性があり、リスク認知や政治行動に関する理論を日本の文脈で検証し深化させる意義がある。また、得られた知見は実践面でも価値が高い。科学的根拠に基づく危機コミュニケーションの在り方や、長期的視野に立った制度設計の必要性について具体的提言を導くことが期待できる。研究代表者が政治の現場に関与している強みを活かし、研究成果を政策提言として国政にフィードバックすることで、社会保障制度改革やその他の政策改善に資する可能性もある。
10. 本研究の限界
本研究では、調査期間中の社会・政治情勢の変化によって結果が左右されるリスクがある。また、インタビューやアンケートには回答者の主観や認知バイアスが反映されるため、得られたデータの解釈には注意が必要である。さらに、日本固有の状況を分析するため、本研究の知見を他国へ一般化する際には限界がある点も認識しておくべきである。これらの限界に対しては、多角的な手法を組み合わせデータの裏付けをとることで信頼性を高めるよう努める。最後に、判明した課題や不足点は今後の研究や政策立案へのフィードバックとして提示する。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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