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浪江町で生き抜く「被ばく牛」をご存じですか?【若干閲覧注意】
引き続き、福島の視察レポートです。
南相馬の桜井市長との意見交換会については
末席で文字起こしをしておりましたので、せっかくだからシェアしようと思います。
あまりこういうことをする議員はいない気がするので、実験的試みとして…。
とにかく仮設住宅にいる人たちが未だに苦しみ、
人口も加速度的に減少しているという南相馬市。
仕事はあっても働く人がおらず、牛丼チェーン店の「すき屋」は
時給が1400円まで高騰しても、なおアルバイトがいない状態だそうです。
余談ですが、昨日の視察であまりにも色々なものを見過ぎたせいか、
朝の街頭活動が終わった後、事務所の机で突っ伏して1時間ほど眠ってしまいました。
知らず知らずのうちに、疲れがたまっていたようです(放射線の影響ではないと思いますが)。
でもそれ以上のものが、南相馬市で暮らす人々の毎日なんですよね。
そう思うと、身体の疲れ以上に重たいものが心に残ります。
以下は長くなりますが、南相馬市長の心からの訴えを
ぜひ一読していただければと思います。
■
■桜井市長
昨日おとといの自民党エネルギー基本計画閣議決定したこと自体は
我々に対する冒涜になると思っている。原発が必要なことを明記した。
その目的というのが明確になっていないと感じる。
ベースロード電源という位置づけを書いたことについて、
みなさんはどう思うか?何のために閣議決定までしたのか?
意見徴収会が福島で行われたが、私は呼ばれなかった。
波江町の町長は参加したが、その翌日には決まっていた。
結局は出来レースで、やらなくてもいいことをやってさらに反感を買っている。
2万5千人の避難民を抱える中で、このような閣議決定が強引にされることの
理由を知りたい。そうでなければ住民の皆さんに説明ができない。
福島は終わったと思われている。
第一段階が完了したという野田総理の終息宣言があったが、
今もそのような道(過去にされる扱い)をたどっていると思う。
私は民主党は支持していたが、野田さんのような
判断をする総理大臣ならいらないと、正直に思った。
私は当時南相馬の仮説住宅にいたが、
その時に野田さんからの発表があった。
昨年の9月7日はどんな日だったか覚えてますか?
オリンピックが決まって万歳していた日だ。
その日は鹿島区で敬老会をやっていたが、
そこのおばあちゃんに
「福島って危ないと思われているんだね」
と言われた。80歳のおばあちゃんにです。
アンダーコントロールといってみたり、250キロ離れているから
安全だと言ってみたり、福島からみたらどう思うかという話だ。
南相馬は原発立地体ではない。でも、一番被害を受けている。
避難指示が国から来ないまま、我々の独断で避難を行った。
いまでも2万5千人が避難している。
そういう状況のままで、なんで、原発を再稼働するのか。
それを言うなら、福島にきて言うべきだ。
政治家の言葉はそのためにある。
どうして基本計画の中で原発が必要だと明示したのか、
話は戻るが、その理由が知りたいのだ。
たまたま昨日と一昨日、東京に行く間に
「原発0で日本経済は再生する」
という本を読んだ。
政治家というのは、決断することが必要。
本当に原発がないと、日本はダメになるのか?
そこに結論を出さずに、経済界などに押し切られて
言われるがままに原発を使い続けるのか、それとも対峙するのか。
閣議決定した閣僚の中には、福島の出身者もいる。
福島選出の議員は、原発を廃炉にするといって当選しているのに、
いまはまったく逆のことをやっている。説明責任を果たすべきだろう。
本当の目的はなんのだろうか?
原発を売ることなんですか?
斎藤たかおというジャーナリストと話した際に
そういうビジネスの側面もあるのだなと感じた。
海外に原発を売り込む営業をしていて、
国内で再稼働していないとイメージが悪くて売り込めないから、
安全をアピールするために国内で再稼働を進めていくのではないか。
それが目的だとすれば、福島を見捨てた再稼働は「あり」だと思う。
それならそれで、正直に言うべきだ。説明をするべきだ。
私もいち地方の議員として、原発ゼロの街づくりを進めると言って当選した。
ここでは自民党とはいえ、原発を進めるとは言えないはずだ。ボコボコにされる。
地方も国も曖昧なままで物事を進めようとしているのではないか。
TPPなどもそうだけれど。
今日はせっかく来てくださるので、皆さんの意見を聞いてみたい。
■山内衆議院議員
原発再稼働については、大きくわけて2つ理由があると思う。
原発輸出のため、トルコだけで2兆円。この営業活動のため。
もう一つは、電力会社の経営。
廃炉を決めれば全国の電力会社がすべてダメになる。
負債になってバランスシートが崩壊してしまう。
そこに世話になっている国会議員は、その決断ができない。
例えば九州では九州電力におんぶにだっこで選挙をやっている。
自民や民主に、電力利権にさからえる議員がいない。
その圧力に抵抗できないのだと思います。
■桜井市長
原発事故以来、電力調達の方法は多様化されている。
いまは原発5つ以上の電気を各企業が調達している。
■山内衆議院議員
自然エネルギーや自家発電で対応がどんどん進んでいる。
ドイツでは火力よりも安い風力が誕生している。
きちんとそちらにお金が回るようにすれば、
わが党としては原発ゼロでも十分に可能だと思っている。
市長の考えとは近いものがあると感じる。
私自身も閣議決定には強い怒りを覚える。
台湾へも輸出しようとしているが、台湾の議員も反対している。
今回のそうしたエネルギー基本計画は、原発輸出を後押しするため。
安倍政権にとってはそれが非常に重要なのだろう。
■桜井市長
使えば利益になる、使わなければ負債になる。
それが(大阪の)橋下市長ですら電力会社になびいた理由だろう。
素直にその理由を言えばいいだろう。
そこから、ではどうしようという議論をすればいいではないか。
それをやらない理由は、そっち側の人たちには
抵抗しない方が得だと政治家たちが思っているのではないか。
この地球一つとっても、すごい量のエネルギーを発生している。
こんなすごいものが、自然災害を起こさないことはありえない。
それでも原発をやるしかないのでは、日本は完全に
エコノミックアニマルであると思われても仕方がない。
原発事故が起きて、賠償がよこせ、もっと欲しいという
お金の損得に走る人がかなり出てきた。お金目当てで
原発が必要と言いだす人がいる。
しかし、おカネ目当てで幸福が変えるのか。
原発事故で家族も地域もバラバラになった。
個人の幸せだけを求めて別の土地で生活して幸せになったとしても、
それが全体の幸せなのだろうか?
消防団の式に出てきたが、原発事故以降に2名増員したが、
退団者の方が多い。こういった状態でどうやって治安や防犯で
地域を再生しろというのか。人がいなければ絵にかいた餅だ。
東電の社長がきたときも、おカネよりも人を返せと伝えた。
お金を数億、数十億もらったって人が町に戻ってこなければ、
セキュリティは担保されない。
現実を見てほしい。
ここはいずれ復興するかもしれないので…といいつつ、
新たな営業をするために原発の安全をアピールするのは
利口なことではないし、幸せを買えるはずもない。
お金で幸せが変えるのか?という問いについては
大人は答えを出すべきだ。政治家だって、おカネがなければ
本当に政治ができないのかを考えるべきだ。
私は自分のおカネは1円も使わなかったが、選挙に勝つことができた。
たしかに地方と都会は違うが、おカネがかかることばかり考えているから、
結局お金がかかる選挙になる。
国会議員には一人当たり4000万円のおカネがついてまわる。
そこにくっついていく人や、しがらみが生まれてしまう。
日本は政治的にまったく成熟していない。
■久坂県議会議員
原発がテーマの選挙でも、東京はまったく別の結果がでる。
また九州の人にとっては、もはや東日本大震災は認識されていない。
人間は結局目先のことしか見ておらず、それもひっくるめて選挙の結果が出てしまっている。
■桜井市長
私も細川さんの応援に行ったんです。
三上市長も村上村長もいる中で、ガツンとやらなきゃダメだと思った。
有楽町に行ったときには、聴衆が少なくてがっかりした。
ネットで拡散してくれたので、多くの人に伝わったとは思うが、
今の現実をみたら、東京がどう変わればいいか一目瞭然のはずだ。
私だけをみたら元気に見えるかもしれないが、
仮設で老人しかいないところにいけばまったく違う。
そこで未来を語ることができるのか。彼らはすべての「普通のこと」を奪われた。
家族がいなくなり、うちにも帰れない老人たちが
いかに日常の希望を失わせているのか。
選挙で仮設をまわると、「市長、助けてくれ」という声がたくさん出てくる。
その現実を見れば、彼らを助けたいと思うはずだ。
誰もがそう思うはずだ。
でも今できないから、国と闘わなければならない。
東京で国会議員に、闘ってもらわなければならない。
消費地の東京が、六本木や赤坂のようにギンギラギンになっていて、
こちらは夜になれば真っ暗。これはおかしいでしょう。
希望を与えると言っておいて、まっくらで
ネズミの糞だらけの仮設に押し込めている。
原発はこうした現実を引き起こすことを認識して、
被害者に普通の生活を取り戻してから原発の話しをするべきだ。
慰安婦もそうですよ。
私は当時の虐殺も慰安婦問題もあったのだと思う。
それを見てきた人間は、それはおかしいと感じるはずだ。
だから中国共産党に寝返る日本兵がいたわけだ。
現実を見ないで理屈だけ遠そうとしても、通らない。
将来にとって日本のためにならない。
被災者の方に希望を与えなければならない。
お金さえもうければ、という状況に人々が抵抗できなくなっている。
原発事故が起きて、マスコミが東北からいなくなった。
身の安全を守りたい臆病さと、電事連から600億をもらってたからでしょう。
40年間にわたってそれだけもらっていたら、文句を言えないでしょう。
あの現場の状況は報道できないのだろうと。
マスコミはこの現実を九州や東京や関西にまで、
伝えようとする気がないのだろう。その一方で海外のマスコミは
YouTubeをみて来て、いまだにしつこく追っているメディアがある。
そのギャップがありすぎで、どうしてこうなるんだと思っている。
それもやっぱりお金なのか、経団連の言う通り動くのか。
■和田参議院議員
私もNHKのアナウンサーだったが、当時は組織人なので
内部の取り決めで取材にいくことはできなかった。
しかし現状はそうではないのだから、
どんどん入っていくべきだろう。ジャーナリストのセンスが落ちている。
ここが課題だと思っても、優先順位がうまくつけられていない。
電力会社のおカネがスポンサーで入ってる。
3月にテレビタックルに出て、仮設の人々が心労でパチンコに行ってしまうことを
述べたら、スポンサーにパチンコがついているのでその発言はカットされてしまった。
声をあげられる人間にもっと見てもらうこと、
動ける人間がもっと見ることが大事だと思う。
被災地にまったく議員が来ないと思って、私自身も議員になろうと思った。
浪江の避難者を個人的にも支援しているが、いけば仲間で身内だ。
彼らが戻れないのに、原発再稼働だ・輸出だということを
本当に言えるのかと思う。
メディアだけでなく、政治家も批判されるべきだ。
他党の仲間も被災地に連れてきたいし、現実を直視することが大事だ。
■桜井市長
政治家になることはリスクがある。
任期付きの職員だから、次があるかもわからない。
だからこそ、潔さが必要。切られてもかまわない、それでも
俺はこういうことをやる、筋を通すことができなければならない。
自分がどう生きるのかを伝えるべきだし、
有権者に「どうせ俺なんか」と諦めさせないことが大事だ。
田舎は顔が見える選挙だ。
顔をしっかり浮かべて自分たちが行動・判断することが必要だ。
消防団も9人殉職し、636人なくなって111の死体があがっていない。
さらに422名が関連死しているが、現実を見つめるべきだ。
どんどん過去になって風化してしまったら、
自分の安寧だけを求めてしまう。赤ちゃんから高齢者までなくなって、
普通に暮らせない人々がいる現実がこのままでいいのか。
国や霞が関にも知らしめて、判断してもらいたい。
ここに来て挨拶だけきても、我々には響かない。
■山本市議会議員
市長は電源交付金を拒否したが、それは覚悟の表れなのか。
■桜井市長
原発誘致ありきでお金をもらったままでは、発言権がありえないと思った。
そんなものはいらないから、俺たちの生活を戻してくれと言ってやりたかった。
■山本市議会議員
5千万もの交付金を断って予算が減った現実の中で、
理解を得られたか。実際に困ることはなかったか。
■桜井市長
大したお金じゃない。東北電力のためにはなったのかもしれないが。
そのためか東北電力はあのとき、最後までとどまってくれたが。
生産年齢の人々が14,300人もいなくなってしまった。
その結果、労働力不足に反映されてしまい、有効求人倍率が3倍。
これを手当してくれない限り、地域の再興はない。
特に建設現場だが、サービス業のすべてもそう。
すき屋の夕方の時給が1,400円になり、日本一の水準になっているが、
それでもバイトが集まらないという現状だ。
役所を残して避難したか、役所ごと避難してしまったかで、
その後の求心力に大きな違いを生んでいる。
役所がなくなったら戻るところがない。
私たちは無我夢中だったが、残ることを決断した。
その結果として、多くの人たちが戻ってきた。
他の町はもっと原発から遠くても、役所がないせいで
さらに多くの人が減ってしまったところもある
避難させることがベストなのか、避難させないのがベストなのか。
その両方の計画を立てておかなければならない。
避難弱者が、バタバタ亡くなったりするのはダメだ。
この狭い日本で一斉に避難することは不可能だという説もある。
南相馬市の避難民たちですら、全国津々浦々に散らばっている。
避難といっても、簡単なことではない。
こうしたことも政治家の人々に知ってもらい、
起きてる現実を熟知して議論をするべきではないだろうか。
せっかくの機会だから、皆さんの想いも聞いてみたい。
(末席でPCにて書き起こしをするおときた。よって質問はできず…)
■和田参議院議員
実際に我々は視察の内容を議会に反映している。
現実を直視すること、自然エネルギーに転換することを
目指していかなければいけないと思っている。
ただそこで、各種の業界団体の圧力があるので、
それを排除してかなければ、現実の苦しみは取れない。
我々は動き始めている、動きます。
■桜井市長
提案していくことが大事だし、他がダメなら俺がやるという
気概が必要になるのだろう。誰のために働いているのかを
周りにわかるようにしなければならない。
■久坂県議会議員
デンマークにいってきたが、地方が都市を食わせてやっているという感覚。
都市は電気がなければ何もできないが、地方は電気がなくてもやっていける。
こうした(地方こそが大事という)価値観が重要。
デンマークは電力消費地と生産地の関係がクリアになっている。
地方に優秀な人材が行くようになっている。そんな関係を目指すべきだ。
■桜井市長
デンマークはたしかに風車の群れだった。
農家が出資して、両立できるようになっている。
日本の農業は補助金漬けで、それでもやっていけないが、
新しい電気のような産業に参入していけるようにすればいいのではないか。
■山本市議会議員
立地自治体ではない消費地こそが、どうやって原発が不要でも
大丈夫なことをアピールできるか、その仕組みを考案したい。
■桜井市長
政治的な決断をできる人たちが、自分たちの地域の永続性を考えて
一つの目的を持って取り組むことが大事ではないだろうか。
国会議員だけに任せていてはダメだ。
函館市長も訴訟をやりたいと言っていた。
玄海原発もまったく避難計画ができていないのだそうだ。
我々の現実を当事者が少しでも理解し、自分たちで
地域を守るという意識を育てることが大事だ。
私は色々な首長と交流して伝えていきたいし、
それを子供たちや住民たちにも与えていきたいと思っている。
■山内衆議院議員
政治が変わると電力政策も変わる。
ドイツでは実例がある。
既得権と闘うには別の既得権が必要。
自然エネルギーがもうかるグループをつくって、そこが
プレッシャーをかけるようにオーガナイズすることが大事ではないでしょうか。
■桜井市長
農地の利活用もどんどん進めるべきだし、
農家が自然エネルギーをやりたいという提案をしていて、
やりたい人がたくさんいる。それを潰してはいけない。
多様性とその可能性を彼らに信じさせたい。
実際にお金が回るようになれば、大手電力会社に頼らなくなる。
それがいずれは、自立する市民になれる。
当たり前のことを目指して地域がやっていく、国がやっていく。
脱原発を目指せば経済は発展するのではないか。イノベーションだ。
改善の連続が大事なのではないだろうか。
■
録音をしなかったので漏れもあるかと思いますが、以上です。
希望の牧場のお話しも書き起こしたかったんですけど、
野外なので無理でした…残念。
文字ばかりの記事で恐縮でしたが、それではまた明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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