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菅総理による日本学術会議メンバーの任命拒否問題、その論点はどこか?切り分けて整理してみる

日々のこと

こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

菅首相の任命拒否に「違法性」?学術会議の推薦、過去答弁との矛盾。解釈変更はあったのか(BuzzFeed)
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/gakujutukaigi

菅総理・内閣が学術会議メンバーの任命を拒否した件が大きく注目を集めています。

菅内閣発足後、初の「失点」ということで、野党やいわゆる左派知識人たちも一斉に声を上げている状況です。

ここまでの政府の対応・説明を見ると、私としても残念ながら十分に納得のいくものとは思えません

ここからは大きく2つに論点を分けて議論が進んでいくことを期待し、政府の対応を臨むものです。

●菅総理・内閣による任命権限問題と情報公開

菅総理は過去に「権力の源泉とは人事権である」という内容を度々発言されているとのことで、今回の一件も

「法律で規定されており、予算を政府が出している以上、人事権というのは政府にあるのだ!」

ということを明確に示す(そして権力基盤を強固にする)ために行ったものと思われます。

しかしすでに冒頭の記事でも指摘されている通り、これは「任命権は形式的なものにすぎない、任命拒否は行わない」としていた過去(1983年)の国会答弁と明確に矛盾します。

法解釈を変更したというのであれば、その旨を丁寧に説明し、また解釈変更を意思決定した際の行政文書を公開するべきですが、政府からそういった対応は現時点で見られません。

足立議員が指摘するように、このまま臨時国会に突入すれば、経済政策や行政改革はそっちのけでこの人事の話に議論が集中するでしょう。

政権や政治家に持っている「政治力・改革エネルギー」は有限で、大きな行動を起こすたびに減少していきます(選挙をやると回復する)。

人事権を誇示して政権基盤を盤石にしようと意図したのかもしれませんが、その貴重な資源を学術会議の問題に突っ込んだのは、個人的には悪手のように思えます。

ただもう手を突っ込んでしまったのですから、これを気に学術会議の実態などについても切り込むべきです。というわけで次の論点。

●学術会議などのアカデミア機関の実態は。形骸化していないかどうか

そもそもほとんどの国民は、「日本学術会議」なる存在を知らなかったと思いますし、かつて政権内にいた細野議員ですら「その政策提言がどの程度反映されるのかわからない」と吐露しています。

橋下氏や上山氏が指摘する通り、改めて多額の税金が投入されているこのアカデミア機関が適切に機能し運営されているのかどうかを精査する必要があると思います。

私も今回、初めて調べて知りましたが、日本学術会議には年間約10億円、その兄弟組織である日本学士院には年間約6億円が支出されています。

ものすごくざっくり言うと学術会議は現役第一線の学者さんたちの組織、学士院は一線を退いた大御所たちの相互扶助組織といったイメージです。

予算の内訳を見ると、日本学士院は約6億円のうち、3分の2にあたる約4億円が会員の「終身年金」への支出と経費に充てられています。

いくら学術的に功績のあった人を優遇するとはいえ、この時代に終身年金…もっと若手研究者に投資をした方が良いのでは。。

一部の人々が指摘・懸念しているように、メンバーの推薦基準が外部から見ると不透明な学術会議が身内のサークル化しており、その学術会議メンバーが学士院に「天下り」をして終身年金をもらう仕組みになっているとすれば、税の使いみちとして問題があります。

このあたりの実態を踏まえた上で、菅総理が

「だからこそ人事権を発動し、現状を打破するのだ!」

と言うのであればそこには一理ありますし、はっきりとその旨を説明するべきでしょう。

しかしながら現状としては、上記の2つの論点(意思決定の情報公開、アカデミア機関の意義)が2つとも曖昧なまま「任命拒否」だけが独り歩きをしている状態です。

繰り返しになりますが、ここで政権発足時には十分に充電されている「改革エネルギー」をいたずらに浪費するべきではありません。

それなりの覚悟をもって「任命拒否」というカードを切ったのでしょうから(思いつきだったら本当にヤバい)、菅総理・内閣には適切な情報公開と今後の対応を望み、我々も提言をしていきます。

本件は動画でも解説し、下記に参照したデータもまとめておきます。

それでは、また明日。

【以下、調べた参考データまとめ】

■日本学術会議
・組織:内閣総理大臣の直轄(内閣府)
・根拠法:日本学術会議法
・URL: http://www.scj.go.jp/ja/scj/index.html
・予算:約10億円(令和2年度予算案)https://www.cao.go.jp/yosan/soshiki/r02/yosan_gai_r02.pdf
■日本学士院
・組織:文科省管轄
・根拠法:日本学士院法
・URL:https://www.japan-acad.go.jp/japanese/about/access.html
・予算:6.1億円(令和2年度) https://www.mext.go.jp/content/20200203-mxt_kaikesou01-000004369_1.pdf

■日本学士院の年金について
・根拠法:日本学士院法 第九条 (年金)「会員には、予算の範囲内で、文部科学大臣の定めるところにより、年金を支給することができる。」
・予算:4.3億円(令和2年度)← 上記6.1億円のうち4.3億円が年金
・URL:https://www.mext.go.jp/content/20200814-mxt_kaikesou02-000006053_0211.xlsx
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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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