こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
先週、大きな話題となった小泉進次郎氏の「育休」について、ブイログ(YouTube)でも触れてアップしたところ、ご指摘・ご批判を含めてまた多くの意見が寄せられました。
改めてブログでも、雑駁にはなりますが言い足りないことを述べておきたいと思います。
念の為申し上げますが、これは私個人の考えであり、党・所属組織を代表するものではありません。
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何よりも本件について私は、「どんな立場・環境の男性であっても、育児にはコミットするものだ」という強いメッセージを出すことに至上の価値を置くべきだと思っています。
なので大前提として、税金で禄を食む国会議員であっても「育休」を取得することは賛成です。
一方で、小泉進次郎氏がトライしようとしている「育休」の定義は定まっておりません。
企業勤め・被用者にとっての「育休」は一定期間出社をしないことを意味しますが、おそらく小泉進次郎氏も国会業務のすべてを休もうと考えているわけではないと思います。
代理の効かない採決などの国会業務は出席し、他の政治活動・党務をセーブするというのは裁量の範囲内で可能です。
「政治家たるもの、24時間365日働くべきで、仕事をセーブするとは何事だ!!」
というご意見はあると思いますし、その価値観を否定することはできませんが、これを突き詰めれば女性議員が任期中に出産をすることすら困難になります。
「育休」によって地域周りなどの活動量は明確に減ることになりますし、裁量の範囲内による「育休」取得の是非は次の選挙で審判されることになるでしょう。
男性育休に対して厳しい目線が注がれる現状では、逆風になることは確実です。
だからこそ小泉進次郎氏のような「選挙最強」で影響力のある政治家に突破していただいて、男性議員も当たり前に育児にコミットする空気・風潮を作り出してもらいたいと思います。
なお、国会業務も含めて完全な休暇を取るということになれば、その間の歳費(議員報酬)は減額するべきという意見が出てくるでしょうし、私も減額をすることには大いに賛成です。
女性議員の出産期間も含めて、国会でぜひ積極的に議論していくべきテーマだと思います。
いずれにせよこうした議論も、「当事者」が出てこなければ前に進まないのが現実で、「歳費減額の仕組みが整ってから育休を言い出そう」というのは難しいものです。
もし小泉氏が国会業務欠席を含む「育休」取得まで考えているとすれば、それはそれで大いに意味があることで、ぜひその国会改革は後押ししていくべきだと考えます。
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「政治家たるもの、国民が利用できる制度を作るのが仕事であって、自分が先にサービスを取得するのは間違っている」
というご意見も多数いただきました。
れいわ新選組の介護サービス先行受給の時にも出てきた論点であり、ご主張する内容・理論はもっともです。
しかしながら育休に関しては、大企業の正社員を中心に「制度面」はかなり整ってきています。
にもかかわらず、男性育休の取得率はいまだに5.14%に留まり、「育休を取りたいのに取得できなかった」という人の割合は3割以上のぼっています(厚労省「平成29年雇用均等基本調査」による)。
制度があるのに使えない「空気」「慣習」が日本社会には確実に存在するのであって、こと育休については「制度面」だけが政治課題ではないことは明らかです。
「休みながら身分が保障されて、給料も満額もらえるのはおかしい」
と国会議員が批判される様は、
「休んだのに同じ役職で戻ってこれて、給料の一部ももらえるなんておかしい」
と批判される男性社員の姿と、私にはダブって見えて仕方ないのです。
取れるなら取ればいいと思います。
うちの会社は、取れる仕組みはありますが
取ったらどうなるか、分かっているので
取りません。異論、反論があるなら、
うちの会社に社員としてきてください。— Ryo123 (@Ryoichi23da) September 5, 2019
まさにこうしたコメントに現れているように、実際に育休を取った後に閑職に回されたという事例は多く仄聞しますし、それを恐れて多くの男性社員たちは育休を取りません。
この状況の根底にはやはり、「男性育休=なんだか楽をしている、サボっている」「育児は主に女性がやるものだ」という誤った価値観が根強くあるのではないでしょうか。
これを変えない限り、日本に男性育児参加が根付くことはありません。
楽だとかそういうことではなくて、男女で子どもを作った以上、男性も育児参加をすることは当然であり、もはや仕事の一つですらあるというところまで意識を変えていく必要があります。
制度を変えていくとともに、「社会の空気を変えていく」こともリーダー・政治家の一つの役割です。
だからこそ、まず政治家が率先して育休を取って欲しいと私は思います。
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「議員が被用者ではないというなら、比較するべきは個人事業主やフリーランスだ」
「個人事業主には育休なんてないし、取ればその瞬間に無収入になるのに…」
というご指摘もあります。確かに個人事業主の方は、いわゆる「育休」の取得はさらに困難です。
フリーランスという立場で得ているメリットもあり、個人事業主の方々の状況はそれぞれ異なりますから、一律に企業や組織における「育休」のような制度を整えることは非現実的であり、私もその必要性については懐疑的です。
だからといって、じゃあやっぱり議員も育休は取れない・取るべきではないで終了して良いのかと言えば、それも違うと思っています。
フリーランス・個人事業主の女性が出産・育児を行う場合、かなり計画的に準備を進めていく事例も聞きますし、「予期せぬ妊娠」の場合はなおさら、死にものぐるいで生活と育児を両立されています。
一方で男性の場合だったら、多くは「収入は減らせないから仕方ないよね」で止まってしまう。
それで良いのかどうか。女性に負担をお願いして、男性は同じスタイルを継続するだけでいいのか?を、もう一度考える機会があって良いと思うのです。
現行のままではフリーランスのカップルが子どもを設ける場合、女性側のキャリアが犠牲になることが比較的多い状況が続くと考えられます。
そしてそれは「制度面」で解消できるものでは(少なくとも当面の間)ありません。
繰り返しになりますが、打ち出すべきメッセージは「どんな立場・環境の男性であっても、育児にはコミットするものだ」というものです。
根本的には制度利用云々ではなく、男性が当たり前に育児参加するために社会全体が変わっていくべきタームに突入しており、男性育児に対する空気が変わってくればフリーランス・個人事業主自身の考え方も、取引先の意識も変化するはずです。
その議論に一石を投じるためにも、これまで育休取得が一般的ではなかった「男性議員」が育児参加に踏み込むことは、個人事業主やフリーランスにとっても中長期的にプラスになると私は信じます。
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つらつらと長くなってしまいましたが、同じく維新所属の足立康史代議士にお答えするとすれば、
僕は、日本の雇用社会が出産育児に優しくないのは問題だと思っていますが、議員や自営業の男女に係る出産・育児について、どういう課題があって、それが小泉さんの育休を通じて、どう克服されていくのか、そのイメージが出来ません。私の名前も出して否定したのですから、お考えを是非お教えください。
— 足立康史 (@adachiyasushi) September 5, 2019
現在の日本には、「制度は整っているのに育休取得が促進されない」「そもそも男性の育児参加についての意識や優先順位が低い」という課題があり、小泉進次郎氏の問題提起と「育休」取得によって、
・どんな立場の男性であっても、育児にはコミットするのだというメッセージが出されること
・議員については、国会を休む場合のルールが議論されていくこと
・国会以外の政治活動について、有権者の理解が醸成される可能性があること
・フリーランスの周辺環境についても、社会規範や空気が変わっていくこと
等が期待できると思います。
繰り返しになりますが以上は私個人の考えであり、政党や所属組織を代表するものではありません。
ご覧のように党内でも異なる意見がありますし、議員・政治家という範囲に広げれば本件に対する意見はまさに百花繚乱であると思います。
引き続き皆さまと議論を重ねながら、「男性育児参加が当たり前」の社会を作るためにプラスとなり、また国会議員という立場でも納得いただける方策を考えていきたいと思います。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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