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ジェンダーバイアスを助長する広告・表現は規制すべきか?「表現の自由」とも関連する難題について

日々のこと

こんばんは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

朝から熊野神社例大祭の御神輿、防災訓練などに参加した後、午後はNPO法人ジェンダーイコールとRainbow Tokyo 北区さんが主催するこちらのイベントに登壇してきました。

横並びゲストは社会起業家の勝部元気さん。ネットやメディアではよくお見かけしましたが、お会いするのは初めて。実はまったく同じ年で、同時期に早稲田大学のキャンパスに通っていたという…!(最近、なぜかこのつながりが多い)

こちらの方が非常に詳しいイベントレポートを書いて下さっているのですが、メインのテーマは「メディアが作り出すジェンダーバイアス」

2014年から2016年頃まで、企業が作るCMが「男女の性差を固定するものだ」「偏見だ」という理由でいわゆる『炎上』状態になった事例が見られました。

家事は女性がするのが当然という家族描写があったり、女性が過度に美的・性的なものに描かれていたり、オムツのCMにほとんど男性が出てこなかったり…。

こうした男女の性差に対する観念を固定化しかねない表現については、欧米ではかなり配慮が進んでおり、イギリスでは業界団体が明確に規制を掲げています。

具体的には、上記のような表現が「禁止」されているわけですね(本日のスライド資料より抜粋)。

参考:
英国は性差別的広告を禁止へ 性別によるステレオタイプな広告に対する反感が非常に強い社会的風潮が背景に

http://webronza.asahi.com/business/articles/2017072700003.html

以上を前提に、「日本でも政府や業界団体が差別・偏見の表現を規制すべきではないか?」を主なテーマとして、勝部さんと私のディスカッションが行われました。

で、このイベントの流れから言えば「ジェンダーバイアスを是正するために、政治も規制に乗り出すべきだ!」という展開になるかと思いきや、私がそこに冷水をかけに行くという(苦笑)。

まあその役割を期待されていったんですけど、ここではやはり「表現の自由」という観点を考えなければなりません。

(※念のために書いておきますと、私はジェンダーバイアスを助長する表現が望ましいとはまったく思いませんし、メディアには是正してい欲しいと考えている立場です)

私は民間からの自発的な規制はまだしも、政府・権力者による表現規制には極めて慎重であるべきだと考えます。

これは何も「表現の自由」が理念的に重要だからということだけに限りません。政府に強権を期待する時、わたしたちは常に「反転可能性」について考えなければいけないからです。

「ジェンダーバイアスをかける表現は良くないよね」という方向に政府が向かっているときは、制限をすることは良いことかもしれません。

しかし、政権が変わって、まったく逆の思考を持つ権力者が誕生したらどうなるか?わたしたちが望む表現が規制され、まったく逆の表現を強制される世の中が来るかも知れません。

極端に言えば、いずれ「必ず広告には愛国心を高揚させるものを入れなければならない」「男は仕事、女は家庭という日本古来の価値観を尊重する表現以外は禁止」という政権が出てきてしまうかもしれないわけです。

どういった表現が「良い」ことで、何が「悪い」のかを判断するのは時代の価値観や状況によっても左右される、極めて難しい問題です。

こうした「表現」に対する良し悪しの評価を時の権力者に委ねてしまうというのは、極めてリスクが高いことだ思います。

確かにジェンダー指数ランキングで111位に甘んじている我が国の状況を見れば、社会や価値観の変化が遅すぎて、トップによる強烈な推進・規制を期待してしまう気持ちはわからないではありません。

しかし推進することと異なり、「禁止・規制」にはこうしたリスクもあり、回りくどくても社会の価値観をボトムアップで変えていくアプローチが重要になります。そもそも、民主主義というのはそういう「面倒くさい」システムでもありますから…。

企業CMに関して言えば、「炎上」が続いてジェンダーバイアスCMは効果的ではない・売上に逆効果であると企業が気づけば、そういった表現はマーケットによって淘汰されていきます。

ただし、これらはあくまで原則であって、「程度問題」であることも否定できません。

特定人種に対する「ヘイトスピーチ」レベルまでいけば、もはや権力が介入して規制することはやむを得ないと私自身も感じるわけで、そこをどこでどう線引するかというのは、政治に常に問われ続ける難しい問題です。

実際、東京都が秋に上程する予定のLGBT条例についても、「理解推進」に留まらず「差別禁止」にまで踏み込むかどうかが議論になっています。

私自身も、大枠の概念として「差別禁止」を盛り込むことには賛成したい反面、具体的に罰則を設けて「表現の良し悪し」まで政治・行政が判断できるのかについてはかなり懐疑的な面もあります。

といったことを、私も改めて見つめ直す良いきっかけとなるイベントでした。

ご一緒した勝部元気さん、参加者の皆さま、そして主催の2団体の方々、ありがとうございました!

NPO法人ジェンダーイコール関連では、夫婦の家事負担を可視化する「ハッピーシェアボード」の記事も公開されておりますので、こちらもぜひご一読いただければ幸いです^^

おときた駿さん・三次ゆりかさんがハッピーシェアボード体験!前編
http://gender-equal.com/posts/happyshareboard/otokita_mitsugi1/
後編
http://gender-equal.com/posts/happyshareboard/otokita_mitsugi2/

それでは、また明日。

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音喜多駿

おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)

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