こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
今週末は社会学者の上野千鶴子先生の「平等に貧しくなろう」なるインタビューコラムが物議を醸し出しておりまして、私も現役世代の政治家としてこれに対しては一言述べておきたいと思います。
上野千鶴子「日本人は多文化共生に耐えられないから移民を入れるのは無理。平等に貧しくなろう」
https://togetter.com/li/1080097
上野千鶴子先生と言えば、「家父長制と資本主義」は社会に一石を投じた名著で何度も読み直しましたし、社会学者として一時代を築いた方だと思います。
しかしながら、多くの方がすでに指摘している通り、この発言にはまったく首肯できません。内容を三行でざっくり言うと、
・これから人口を増やすことは不可能
・移民を受け入れることも不可能だし、やるべきではない
・日本は人口減少と衰退を受け入れ、平和に衰退していくモデルになろう
ということになりますが、移民についてはとりあえず置いておきます(これも大問題だと思うけど)。
上野千鶴子女史の件だけど「高度成長もバブルも満喫した世代が自己満足で『平等に貧しくなろう』とか言ってんじゃねーよ。こちらの世代は生まれてこのかたずっと貧しくなってんじゃい。寝言は寝て言え。」としか言いようがない。
— 宇佐美典也 (@usaminoriya) 2017年2月12日
感情的に言えばまさにこの通りで、「自分たちは散々美味しい思いをしてきて満足したので、若い人たちはみんな我慢して苦労して生きてくださいね」ということを言っているわけで、到底看過できるものではないでしょう。
そして客観的・論理的にこの発言の問題点を指摘すると、まず平等に貧しくなることはできません。
こうした場合、船は必ず下から沈む=貧しい人から切り捨てられるので、真っ先に困るのは貧困層です。それはこうした言説を振りかざしている上野千鶴子氏自身が、貧しさに直面することなくケア付き住宅で、さしたる不自由なく「お一人様の老後」を過ごせることからも明らかでしょう。
加えて、貧しくなるのを受け入れるということは、すでに経済成長率を上回って伸びている社会保障費をガンガン削っていくことを意味しますが、そんな弱者切り捨てを許容することは現実的に極めて困難です。
言うまでもないことですが、「再分配」だけで貧困や社会問題を解決することはできず、その原資となる経済成長という果実があって初めて、再分配が意味を持ちます。貧困を解決できるのは、根本的には経済成長だけです。
そして後段で、日本にはこのような主張をする社会民主政党がないと述べていますが、これは半分正しく半分間違っています。
世界に存在する社会民主政党の多くは、いずれもイノベーティブであり経済成長をきちんと求めます。なんでも反対、経済成長反対、現状追認のみで対案のない日本のリベラル政党は、その意味では存在しないに等しいと言えるのかもしれません。
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いずれにせよこうした言説を目にしてネットなどで若い世代が猛反発し、そして私自身もやや危機感を覚えるのは、こうした言説が上野千鶴子氏の世代を中心に受け入れられる素地があることを感じているからでしょう。
人間は、希望があるからこそ、いま仮に貧しくても前を向いて努力ができるのです。貧しくなるだけの世の中では、誰も努力をしなくなり、社会不安が増大し、やがては暴動などで社会秩序が乱れることになります。
「平和な衰退」という幻想を抱くのは個人の自由ですが、こうした恐ろしい思想が政治や政策に反映されることは防がなければなりません。
世代間対立に陥るのではなく、老若男女が力を合わせて豊かな社会を築いていけるよう、微力ながら政策提言を続けていきたいと思います。
それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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