こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
本日は主催しているオンラインサロン「宇佐美典也とおときた駿のあえて政治の話をしよう」の勉強会でした。ゲストはメディアですっかりお馴染みの、築地仲卸三代目の生田よしかつさん。
会の後半ではいつものように(?!)豊洲市場移転問題や小池都政の是非について激論が交わされたのですが、実は生田よしかつさん、漁業の資源管理について著作も出している「水産資源管理のプロ」でもあります。
一般社団法人シーフードスマートの代表理事も務めておられ、そこで前半部分では、多くの方にはあまり馴染みのない水産資源管理についての講演をしていただきました。
なんとなく危機感が伝わってくる農業と異なり、「漁業」に対して常日頃から危機感や関心を持っている方は少ないのではないでしょうか?
そんな中で、
「マグロが食べられなくなる!」
などのセンセーショナルな話題だけがメディアでひとり歩きをしたりするのですが、わが国の漁業・水産資源管理は危機的とも言える状況です。
※引用する資料の著作権はすべて生田よしかつさん、シーフードスマートに帰属します
日本の漁業の生産高は昭和59年をピークに下がり続け、500万トンを切るところまで行っています。世界一豊かな漁業を排他的経済水域(EEZ)内に持つ漁業大国にわが国に、一体なにが起こっているのでしょうか?
その最たる要因の一つが、乱獲による魚の減少です。
例えば、獲る時期によって体重が何十倍も異なるマグロが、ほとんど成熟していない0歳魚のうちに漁獲されてしまっています。体重の少ない若い魚は単価も低く、漁獲しても利益にはなかなかつながりません。
その単価の低さをカバーしようと思えば、「量」で勝負するしかなくなります。その結果、大量のマグロが漁獲されることで、その数は激減していく悪循環をたどるわけですね。
逆に若いうちに焦って獲るのではなく、数年間寝かせた後に漁獲すれば、文字通りケタ違いの漁獲金額を獲得することができます。
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ではなぜ、このような焦り・乱獲が起きてしまうのでしょうか?これは決して日本の漁業組合や漁師だけが悪いわけではなく、ここに資源管理の不作為があります。
資源管理の第一歩として、専門家たちがその生物の生産力を評価して、持続的な漁獲量の上限を設定します。これくらいまでの漁獲であれば、翌年には自然繁殖で個体数が回復しますよ、という値を決めるわけです。この上限のことをABC(Acceptable Biological Catch)と言います。
で、生物の持続性を守るためには、このABC以下の漁獲量に目標値を定め、枠をはめなければいけません。この漁獲枠はTAC(Total Allowable Catch)と称されています。
専門家たちが算出したABCを元に、政府・行政(日本では水産庁)がTACを定めて行くわけで、常識で考えれば
ABC>>TAC
となることは明らかです。ところがわが国では、どうしたことがTACの方がABCより高く設定されている魚種が数多く存在します。水産庁が乱獲にお墨付きを与えているわけです。
10年前と少し古いデータですが、生田さんと同じく資源管理に警鐘を鳴らしている勝川俊雄さんのサイトに掲載されているグラフがこちら。
青がABC、赤がTACで、マトモな数値設定をされているのはサンマくらい。生田さんの話によると、最新の状況も劇的には変わっていないようです。
そもそもの枠組み設定が間違っている上に、ここに漁業管理制度の稚拙さが追い打ちをかけます。
漁業先進国では前述のTACがしっかりと導入されているのはもちろんのこと、その上限値を管理するためにIQ、あるいはIQTという仕組みがあります。
IQというのはいわゆる「割当方式」で、漁師や組合単位でTACから算出された年間漁獲高が事前に割り振られており、各者はその範囲内で年間を通じてバランスを取りながら漁業をしていくことになります。
そしてIQTというのは、CO2の排出権取引のように、この「割当」を当事者同士で売り買いできる仕組みが導入されたものです。
一方でわが国は「オリンピック方式(ダービー方式ともいう)」という、シーズンがスタートして各者が漁獲を始め、全体量がそのTAC値に到達すると制限がかかるという勇ましい仕組みを採用しています。
簡単に言うと「早い者勝ち」で、のんびりしていたらその年はもうマグロが取れなくなる!なんて可能性がある。
すると、どうなるでしょうか。
日本の漁師さんたちは、シーズンが始まると全力で漁を取りに行きます。魚齢なんかにかかわらず、フルパワーです。「魚が大きくなるのを待って…」なんて言っていたら、完全に損をするわけですからね。
このために、まだまだ身が小さな幼魚も乱獲することになり、全体量が減っていくという負のスパイラルを生み出すわけです。
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解決策は非常にシンプルで、国際社会並にすべてのTACをABCの8割程度に抑え、早い者勝ち方式を改めることです。
しかしながらこの実現には、非常に高いハードルがあるといいます。はい、現場の漁師さんたちの反対です。「そんな制限をされたら、俺たちは飯が食えなくなる!」「もっと取らせてくれるならともかく、これ以上減らせとは何事だ!」と。
中長期的には明らかに水産資源を豊かにし、漁業をドル箱産業に成長させる政策であっても(実際に、ノルウェーなどの漁師は非常にお金持ち!)、短期的には漁業ができない期間も発生しかねないために、現場からの懸念の声はかなり根強いものになります。
農業と同様、わが国では一次産業の「現場の声」は非常に政治力が強いため、政治家がこうした改革に二の足を踏みまくるわけですね。
農業については最近、小泉進次郎などが切り込みさらなる注目を集めつつありますが、最終的に政治を動かすのは世論です。
「日本の水産資源管理がヤバイ」
「もっとマトモな制度に整えなければ!」
という意識が、現場の漁師さんのみならず社会全体に広がっていくことが、当たり前の改革を行うために不可欠なプロセスと言えるでしょう。
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築地や豊洲市場にも関心が集まっていますから、ぜひともこうした機会に根本である「漁業」の方にも目を向けていただき、水産マーケットそのものの将来から結論を考えてみてはいかがでしょうか?
本日の講師を努めていただいた生田さん、ありがとうございました!
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それでは、また明日。
おときた駿
参議院議員(東京都選挙区) 41歳
1983年東京都北区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ社員を経て、2013年東京都議会議員に(二期)。19年日本維新の会から公認を受けた参院選東京都選挙区で初当選。21年衆院選マニフェストづくりで中心的役割を担う。
三ツ星議員・特別表彰受賞(第201~203国会)
ネットを中心とした積極的な情報発信を行い、ブログを365日更新する通称「ブロガー議員」。ステップファミリーで三児の父。
著書に「ギャル男でもわかる政治の話(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」、「東京都の闇を暴く(新潮社)」
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